新しい街
人の馬と一緒に進んで、新しい街に到着しました。
聞いていた通り、元いた街よりちょっと寒いみたいです。
なんだか、ごすじんの顔色が曇っているような気がしますね。
シンブン屋の人はニコニコ顔になったのに、なぜかそれを心配しているみたいです。
「さて、賊避けの同行もここまでだね。面白い話も聞けたし、楽しかったよ」
「ああ、とても助かった。日数もかなり短縮できたし、心強かったよ」
「ふふ、私もハルーララ様に恥じぬよう精進せねばな」
「ハルーララ?だれ?」
「や、草原を吹く風の神だよ。私が見出した」
「Oh……」
ひとまずこの街の猟獣会へ向かいます。
やっぱりここでも塀の近くにありますね。
ごすじんと一緒に受付に行って木の札を出します。
「ルシェント猟獣会へようこそ、移動のお手続きですね?」
ここのお姉さんは頭の上の方に三角の耳が生えています。
尻尾も、ごんぶとでもっふりしたのが見えていますね。
「これは着いたら渡すように言われていた書状です」
「はい、確かにお預かりいたしました。これは……うーん、会長宛てですね。このまま上げておきますね」
「よろしくお願いします」
大事なお手紙には紐が付いているのだそうです。
ほどけない結び方で縛って、紐を切らないと読めないようにしているみたいですよ。
もし、紐が切れていたら誰かが読んだということになるのだとか。
「おうおう、お二人さん、ここでハンターやるのに俺に挨拶が無いのはどういうこった?」
髪のないツルツル頭の人が割り込んできました。
ここはコイツの縄張りなのでしょうか?
いえ、このツルツルが周りの人から畏怖や敬意を集めているようには見えません。
縄張りの長なら、それなりの威厳を持っているはずなのです。
つまり、群れの秩序を乱しかねない、ただの縄張りの恥という立ち位置ですね。
はぁ、こういうやつはどこにでもいるものみたいですよ。
「ぐるる」
「ちょっと、お二人はまだ手続き中ですよ」
「猟獣会ではハンター同士の揉め事は禁止されているのでは?」
「揉め事なんか起きねぇよ、お前らが俺に挨拶をする。それだけの話だろ?」
「そうですか……では、申し遅れましたが今後ともよろしくお願いいたします」
「お、おう?」
ごすじんがツルツルに挨拶をしています。これは丁寧なやつですね。
「初めての土地ですので、温かく見守っていただきたく存じます」
「え、いや……あのな」
「その他、至らぬこともあるかと思いますが、ご指導ご鞭撻をいただけましたら幸いです」
ごすじんのおじぎに合わせて、私もツルツルにおじぎをします。
「そうじゃねえよ、なんで流暢に挨拶してんだよ?」
「……えっ?」
「え、じゃねえ!」
「ごすじん。このツルツル、馬鹿?」
「これ、人の身体的特徴を悪く言ってはいけないよ」
くりくりお目目や、くるくる尻尾、ぷにぷに頬っぺは良いことで、ツルツル頭は違うのですか?
「なんで?ツルツルは、悪いこと?あと馬鹿は、体の特徴違う」
「おまっ……ブッ飛ばしゃあら――」
「移動手続きが完了していない今は、この人達は旅人相当です。ハンターが旅人を傷つけたらどうなるかお忘れですか?」
「いや、じゃあ早く手続き終わらせてくれよ。それから続きを――」
「手続きが完了したら、当会所属のハンターになります。ハンター同士で揉め事を起こしたらどうなるかお忘れですか?」
「じゃあ、どうすりゃいいんだよ?」
「挨拶されたんですから、挨拶を返すだけでは?」
「頭ツルツル悪いこと……なんで悪い頭、直す、しませんか?」
「ファーーー!」
もっふり尻尾のお姉さんが息を吸いながら?声を出しています。器用ですね。
「……お前……お前」
「いいかい?髪のことはとてもとても繊細なことなんだ。だから、声に出してはいけないよ」
「ぷっ……お、お待たせ――くヒッ、しまひた。お手続き――ブフッ、完了でふ」
「ああ、ありがとう……それと、申し訳ない」
「いえいえ、お気になさらず」
ツルツルはどこかへ行ってしまいました。
ごすじんも、お姉さんも、なんだか居心地が悪いみたいです。変ですね?




