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プロローグ

ああ、ごすじん。今日もまた寒いですね。

ええ、ええ、分かっています。知っているのですよ。

別に、近頃冷え込む日が続いているというわけではないのです。

何のせいなのかというと、ツヤのなくなったこの毛と、ごはんを元気のモトへと変えるのがヘタクソになったこの体のせいなのです。

ああ、もったいない。そのごはんは口に合わなかったわけではないのですよ。

なぜだか食べたものがずっとおなかに居座っているので入らなかったのです。

そのままにしておいてもらえたら、おなかに隙間が出来たときに食べるつもりだったのです。

だから、せっかく新しいごはんを入れてくれても、隙間がないうちは食べられないと思うのです。


鼻はもうずっと乾いていて嗅ぎ分けるのも前のようにはいきません。

目もなんだか濁っていてぼんやりとしか見えません。

でも、でも、ごすじんがごすじんで傍にいてくれるのは分かっていますよ。

このなでなでの感じは、ごすじんの手でなでなでされたときのものなのです。

ぽんぽんもしますか?ぷにぷにもしますか?こねこねもするのですね?

ああ、吸うのはやめておいたほうがいいですよ。

情けない話なのですが、最近は無意識のうちに漏れていることがあるので、きっと臭いが染みてしまっていますよ。


はあ、またおさんぽに行きたいですねえ。抱っこされてじゃなくて自分で歩くほうの、です。

最近、なんだか昔のことがたくさん浮かんでくるようになりました。おかしいですかね?


きゅうりでしたっけ、ごすじんが食べているのを見ていたら、食べてみるかと分けてくれたことがありました。

美味しかったのか不味かったのかは覚えていませんが、噛むとぽりぽりするのは面白かったですね。

なぜかその後に褒められました。


空がゴロゴロうなっている時は、怖がっていた私を抱っこして元気付けてくれました。

あんな恐ろしいことに遭っても平然としているごすじんを尊敬してしまいましたよ。

知っていましたか?あれは得体の知れない怪物の威嚇でもなんでもなく、雨や風の前触れみたいなモノだったのです。


そうそう、嫌がっていた私を無理矢理車に乗せて運動場とかいう場所に行ったこともありましたね。

広い場所で思いっきり円盤を追いかけるのは楽しみになりました。

お買い物にも車で行きましたね。

車は注射の合図だと思っていたのに、楽しいことの合図のときもあるのです。


ああ、泣かないでください。

ごすじんを虐める奴なんて居ないのです。ごすじんは怪我なんてしていないはずなのです。

私は今とても満ち足りた気分なのですよ。

ごすじんがこうして傍に居てくれて、ごすじんがこうして気遣ってくれて、こういうのを幸せっていうんですかね。

ちょっと体のほうは調子が出なくって、ちょっと苦しいのも確かなんですが、もう何もいらないくらいに満足なのです。

でも、少しだけ、ちょっとだけ贅沢を言うなら、気持ちを言葉に出来ないこの身が少し恨めしいですね。

私は今が一番充実しているとか、泣くような事は何もないだとか、言葉を話すことができればごすじんにも伝えることができると思うのです。


眠くなってきましたね。

少しだけ心配です。ごすじんはちょっとだらしないのです。

ごはんも運動も、私のために怠け心に蓋をして一緒にやっていたのです。

私のためということにして、サボれないように自分を追い込んでいたのです。

だから、私が寝ている間も、ごはんも運動もちゃんとやってくださいね。


あ、毛布ありがとうございます。

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