凸撃!貴方に晩ご飯!?(打ち合わせ編)
長くなりそうなので、3話構成にします。
「いやー。それにしても皆、俺は本当にとんでもない人たちにコラボ頼んじゃったね?奇跡だろこんなん。“全く知らないライバーさんに飯テロさせてって頼んだら、その人たちがチャンネル登録者数200万人を優に越える大物だった”とか。漫画みてぇなこと起きてんだけど?……字面だけで見ると意味わからん文章だな…。ですが、やってしまったことは仕方ありません!それにお二人にご馳走するって言ってしまいましたしね。男ノヴァ、しっかりもてなしたいと思います!頑張るぞー!……よし。こんなもんでいいかな?」
苦笑を浮かべながらも、動画の前半部分になるところまで撮影を終わらせた。
知らずにジュイロの凄い先輩たちに声を掛けてしまったことで混乱した頭と心を落ち着けて、なんとかここまでやり通せた。
「とりあえず黒田さんに相談しよ…」
ミーチューブであれこれ二人の好みは調べたが、それとリクエストの件は別だ。
もし高い食材を使う料理を頼まれたら今の自分のお金では用意しきれない可能性があるので、ワンチャン俺の来月の給料から落としておいてもらえないか?ということで、黒田さんに相談だ。事前に相談しといた方が話は通りやすいだろう。
『やぁ。そろそろ電話が来る頃だと思ったわよ。本当に貴方はとんでもない子ね?まさかデビュー一週間でうちの2トップにいきなりコラボを申し込むなんて。もうネットじゃお祭り騒ぎよ。一体どんな肝の太さしてるの?』
「写真撮らなきゃわかんないですねー。病院行って来ましょうか?」
『いや実際に撮ってもわかんないわよwメンタルの話よ、メンタル』
開幕ボケで返答したら良いツッコミが返ってきた。
相変わらずのテンションだな。てかあの二人ジュイロの2トップだったのか…。トップクラスだろうなとは思ってたけど、マジのトップかよ。プレッシャー半端ないなそれ。
『それで。どんな相談で電話掛けて来たの?二人の食の好み?食材を経費で落とせるかどうか?スタジオの予約?』
「え。食材は実費じゃないんですか?」
大体のライバーさんは公式番組とかではない限り、全て実費で払ってると思ってたのだが。
『ライバーたちにその余裕があるならそうしてもらうけど、まだ新人の君にはそんな余裕ないでしょ?他社はどうなのか知らないけど、うちはライバーへの出資は惜しまない方針なの。だから安心して相談して来なさいな』
な、なんて心強い…。
俺のことをワンチャンまだ女の子とか言った時は辞めてやろうかと思ったが、完全に気が変わった。
一生着いて行きます姐さん!
「ありがとうございます…。では、食材を経費で落として頂きたいのと、キッチンスタジオの予約をお願いします。と言ってもまだ料理も日程も決まってないので、花刃蕾さんとテンペストさんとの打ち合わせが終わってから、また改めて連絡しますね」
『了解~。こっちも申請の手続きとか諸々、準備しとくわね。まぁキャビア100キロとか言わない限り、大体経費で落ちると思うから安心しなさいな』
「そんな頭の悪いこと頼みませんって…」
とりあえず高過ぎる物じゃなければ大体なんとかなるということだろう。公式番組でもないのにまさか経費で落としてくれるなんて……相当儲かってんだな。うちの事務所って…。
それから二週間ほどして、テンペストさんから連絡が来て、その日の夜の内に打ち合わせすることになった。
ちなみにこの二週間は雑談配信したり、イル任に投稿された例の新人ジュイロライバー紹介を観たり、納豆嫌いの視聴者に超新星爆発を送り届ける動画を作ってショートに投稿などをしていた。
約束の時間になり、二人に通話を繋ぐと……
『やっほ~♪ノヴァちゃん、元気してた~?うちはね~……うふふっ♪ちょー元気~!』
なんかやたらテンションが高い花刃蕾さんの声が聞こえてきた。
この間とはまるで別人なんだが、配信の時とプライベートで人格を使い分けてるタイプなのだろうか?
『寧々くん…。君、飲んでるね?』
次にテンペストさんから呆れたような声が聞こえてきた。
「飲んでるって……酒ですか?」
『ピンポーン!大正解~♪今日ちょっとヤなことあってさ~…。自棄酒ってやつ~?もう飲まなきゃやってらんなくてさ~…』
「嫌なこと?」
『どうせ競馬だろ?』
『そうだよ~♪もう大外れしちゃってさ~!』
「なんだ競馬か…」
彼女のプロフィールには競馬と酒好きなんて書かれてたが、まさか競馬を外して自棄酒するタイプだったとは…。
『そういえばこれ、なんの集まりだっけ~?忘れちゃった♪アハハハハ♪』
「……テンペストさん。これがジュイロトップって大丈夫なんですか?」
『あー…。ごめんね。こんなのがトップで…。若い人たちの欲に理解があって、下ネタに寛容。さらに競馬と酒好きっていうのが大バズりした勢いのまま爆伸びした子だからさ…。ついでに歌唱力もある。だからまぁ、彼女はこれで良いんだよ。打ち合わせの時くらいはシラフでいて欲しいけど…』
一応良いんだこれで…。
「えっと。とりあえず改めてご挨拶を…。スハ・ノヴァです。今回は急なコラボを受けてくださり、ありがとうございます」
『ご丁寧にどうも。テンペスト・シュナイダーだよ。初配信観たよ。とても面白かった』
「アレはちょっと恥ずかしいので忘れてください…」
初っぱなから事故配信になるなんて思ってなかった。あれからマジでマイクが入りっぱなしになってないかとかよく確認するようにしてる…。
『アハハハハ!アレはマジウケたね~。うちは切り抜きしか観てないけど、あの事故は良い事故り方だったと思うよ~。むしろ狙ってた?』
「狙ってないっす…」
『寧々。挨拶…』
『はいよ~。うちは花刃蕾寧々。お酒入ると気持ちよくなっちゃって、テンションがアガっちゃうんだ~♪ちなみにノヴァちゃんは競馬とか詳しい方?』
「3着の価値を引き上げた35歳まで生きた馬とか、馬の皮を被った悪魔とか、人の首を噛んで心をへし折るのが好きな馬とかですか?」
『すごい知ってるじゃん。今度一緒に競馬場行こうぜ?』
『はいはい。競馬の話は後でゆっくりしてね?先にノヴァくんの企画の話から進めよう』
『も~。真面目くんなんだからぁ、テンちゃんは~』
『テンちゃん言うな…』
テンペストさん。花刃蕾さんの相手する時、普段から苦労してそうな感じだな…。
『それで何の企画なんだっけ?』
「俺の作る料理を食べてもらうって企画です。親睦を深めるのと、飯テロでライバーさんたちの胃袋を掴んで好感度を上げるのが目的です」
『後半の説明いるかい?』
『アハハハハ♪いいじゃんそれ~。でもうちの胃袋掴んだって無駄だよ?うちはノンケだからね。同性は恋愛対象として見れないんだー』
「いや別に飯で落とそうとしてる訳じゃ……ん?同性?」
『やっぱりか…』
同性は恋愛対象として見れない?
え。もしかして花刃蕾さんって……
「花刃蕾さんって中身、男だったんですか!?」
『ぶほっwww』
『ほえっ???』
わ、わからなかった…。俺もユウタさんとショウタさん曰く、女の子と間違えられてしまうくらいの女声と女顔をしているらしいが、まさか花刃蕾さんが俺と同類だったなんて…。
下ネタに寛容で競馬と酒が好き……どちらかと言うと男よりの要素だもんなこれ…。
『あははははははwwwそっち路線で考えちゃうかーw』
『ちょっと!?なんでうちが男ってことになんのよ!うちは外も中身も立派なレディーなんですけど!?』
「え?でもさっき、同性は恋愛対象として見れないって。男だから同性は無理ってことなのかと…」
『はぁ?どういうこと?』
『ぷくく…。寧々。ノヴァくんは……彼は男だよw』
『……は?』
『しかも直に会ったユウタ先輩とショウタ先輩が女の子と間違えるくらい、可愛い容姿をしてるらしいよ。あー、可笑しいw』
『……………』
テンペストさんの説明を受けて、花刃蕾さんが沈黙してしまった。
……あ。もしかしてそういう?花刃蕾さん。ネットでたまたま流れてきた切り抜き以外だと、俺のこと全然知らなかったから、ずっと女の子だと思ってた…?
そういや配信中に電話掛けた時に女子会しようぜ~とか言ってきてたな。あれガチで勘違いしてたんだ…。
『……ごめん。ちょっと水飲んでくる…』
『いってらっしゃい』
「あちゃー。これもしかして脳を焼いたってやつですか?」
『うーんwどうだろうね?まぁ似たようなもんじゃないかな?』
「俺ショウタさんの脳も焼いたんですけど?」
『たぶん君の視聴者もほとんどが焼かれてると思うよw』
「マジかよ。俺ってばそんな罪な男の娘だったんですね」
『それもたぶん今さらだねw(本当に面白いなこの子wおかげで肩の力抜けたけど)』
それから5分ほどして、花刃蕾さんが帰って来た。
この間と同じダウナーなテンションで。
『ただいま~…。完全に酔いが覚めたわぁ…』
「お帰りなさいませ!お姉さま♪」
『いや誰だよwうちにお姉さまなんて言って慕ってくる子はいないっつーの。テンペスト、アンタだな?ノヴァくんにこんなことやらせたの。5分の間に何吹き込んでんのよ…』
『いやw面白そうだなってw』
『全く。アンタまで話から脱線しちゃって……人のこと言えなくなってんじゃん…。つかごめんねノヴァくん。切り抜きでしか知らなかったから、ずっと女の子なのかと思ってた…。こうして話してても、女の子の声にしか聞こえないし』
「いいえ。それは別に気にしなくて大丈夫ですよ。もう散々トゥイッターや配信のコメントで言われてるんで、なんかもう慣れました」
誤解も解けて、今度こそ気を取り直して企画の打ち合わせに入る。
「とりあえず、自分の方でお二人の好みは事前にリサーチさせていただきました。花刃蕾さんが辛い物と甘い物が好き。テンペストさんがしょっぱい物が好きということでしたね」
『おー。わざわざうちらの好みを調べてくれたんだ?確かにそうだねぇ。ただうちは辛い物に関しては、辛ければ辛いほどいいって感じかな~。甘い物は……さすがに甘過ぎる物はちょっとって感じ。まぁ好きと言っても、割と普通だねぇ。たまにめっちゃ食う時があるってだけで』
『私はしょっぱい物が好きと言うより、味が濃い物が好きという感じだね。味が濃ければなんでも旨いって言うタイプ。……さすがに限度はあるけどね?』
「なるほど。了解です」
メモ帳を取り出して、二人の好みを書いていく。
やはり辛い料理とデザートは決定だな。味が濃い料理は、テンペストさんのリクエストによってはそれで決まりになりそうだな。
「それではリクエストの料理なんですけど、何か決まりましたか?」
『私は久しく食べていない、カレーが食べたいなと思ったんだけど。寧々は?』
テンペストさんのリクエストはカレーか。やっぱり味が濃い物で来たか。となるとさっぱり系と合わせて……いや。人によってはそこにまた濃い目の物と一緒に食べたかったりするから、花刃蕾さんのリクエスト次第かな。
『うちはね~。ノヴァくんの切り抜きで見たアヒージョ?あれ食べてみたいなーって思ってたんだよね~。うんっと辛くして欲しい♪』
あー。初配信で紹介した料理のやつか。それを激辛にしろということね。テンペストさんの分は別で作ることになるな。
てかこっちも味が濃い物で来たな~…。
アヒージョはオリーブオイルとニンニクで、お好みの食材を煮込む料理だ。オリーブオイルをこれでもかとフライパンに注ぎ入れ、食材をオリーブオイルの風呂に浸からせるまぁまぁ身体に悪い料理なので食べ過ぎには注意。
いくら比較的健康に良い油と言えど、摂取量には気を付けるべし。
だがそれが良い!だからこそ良い!というのもまた事実なのが、アヒージョという罪な料理である。
「うーん。これだと何かさっぱりした物が欲しくなりますね。何か希望が無ければ、こちらで決めても良いですか?」
『いいよ~』
『私も問題ない。むしろ悪いね。そんなに作ってもらうなんて…』
「そういう企画ですから。気にしないでくださいよ。それじゃあ最後にデザートも作ろうと思ってるんですが、何かリクエストはありますか?」
『えっ。ノヴァくんデザートまで作ってくれんの?それもう完全にプロの料理人の域じゃね?』
『割と偏見じゃないかい?それ』
『うわぁ~。でもどうしよう?デザートのことまで考えてなかったわぁ…。うちチョコ系が好きなんだよねぇ。なんか作れる?』
「出来ますよ?妹たちに作ってやったりしてたんで」
『マジで!?じゃあそれで~!』
『なんでも出来るんだね。ノヴァくんは…』
「テンペストさんは?」
『私かい?……うーん。特にこれと言う物は無いから、寧々と同じで良いよ。ただ私は甘い物はあまり得意じゃないから、甘さ控え目にして欲しいかな?』
「了解です。花刃蕾さんは甘さのご希望は?」
『ないよ~。変に甘くし過ぎなければ』
「はい。ご注文承りましたー!」
ここまで話し合って、大体のメニューは決まったな。
花刃蕾さんのリクエスト。
・激辛アヒージョ
・チョコ系のデザート
テンペストさんのリクエスト。
・カレー
・甘さ控え目のチョコ系のデザート
そしてそこにさっぱり系のサラダのような物を……さすがに困ったらカプレーゼという訳にはいかないな。
あれもオリーブオイル使ってるから、アヒージョとの相性が悪い。オリーブオイル好きには全然良いんだけど。健康面を無視したら。
でも動画の企画でやる以上、例え二人がオリーブオイルに狂ってたとしてもオリーブオイル尽くしはさすがになぁ…。
オリーブオイルでいっぱい何か作るみたいな企画だったらいいだろうけど。
「カレーとアヒージョか~。この時点でもう、かなりカロリー爆弾なメニューですね?」
『アハハハハw確かにこれはヤッバwでも気にしないで~。うち栄養は全部、胸に行くし』
「反応しづらいなぁ…」
『無視でいいよ、無視で…』
『ひっどw』
リクエストされた料理は両方濃い目。
となるとカレーだけでも、ややまろやかにして且つテンペストさん好みの濃い目の味付けにして、口の中を飽きないようにさせるか。
そしてこの二つに合いそうな、さっぱり系の料理か…。
「とりあえずわかりました。では撮影本番までにご期待に添えられるように仕上げておきますので、どうぞ楽しみにしててください!」
『あいよ~。期待しとく♪』
『私たちが大先輩だからって、あんまり気負わないようにね?』
さて。ジュイロ2トップの二人に満足してもらえるように、頑張りますかっ!
……あ。ついでに試行錯誤してるところも撮るか。
「て。まずは材料を買って来ないと…。これはさすがに自腹だな」
誤字報告ありがとうございます。
威信表明ってなんなんでしょうね?




