真相
お待たせしました。
ゲームを6つも掛け持ちしてて遅くなりました。
N○E楽しい。
───『ネットで騒がれている件について』
打ち合わせと収録を終えて家に帰ったあと。
すぐにそうタイトルを付けた枠を立てる。
サムネは俺のVモデルであるノヴァが、困惑と怒り。その両方を感じ取れて、目元まで影ができてる表情に設定した。
「ネットの方はどうなってるかな?」
トゥイッターを開いて、軽くエゴサをしてみた。
『ノヴァが一体どんな謝罪配信するのか見物だなw』
『謝るべきなのは虐めてた相手にだけどな?』
『女の子虐めてたクズが、有名VTuber事務所に所属してんの反吐が出るね。私だったら絶対許せない』
『トゥイッター民バカしかいなくて草。絶対ノヴァちゃんエアプばっかだろうこれ?むしろ虐められてたのノヴァちゃんのはずだけど?イル任でそんな風なこと言ってたぞ』
『本人がでっち上げた嘘かもよ?』
『被害者ぶった方が正義みたいなとこあるしなぁ』
『ジュイロも被害者だよな?こんなクソ野郎を雇用しちゃったばかりに、事務所まで叩かれてるんだから』
「おっほwなんともまぁ何も知らねぇ奴らが好き勝手言ってくれんじゃんw」
ここまでボロクソ言われると笑いが込み上げて来るわ。
言葉は刃物という名言を知らない奴が多そうだねぇ…。
「まぁ精々騒いでいればいいさ」
黙らせれば良いんだ。人がどんな人生送って来たかも知らずに騒いでいる有象無象をな。
真実を知ったら、“それでもさすがに……”って思う奴はいるかもしれないけど、好き勝手に悪口を言われることは減るだろう。
俺はメンタル強いけど、それでもこんなに悪口を言われると嫌な気持ちにはなるんだ。
「やれやれ。有名人ってのも大変だな」
世の中の芸能人や配信者はこんな嫌な思いをしながらも、負けずに頑張ってるんだもんなぁ。
本当に尊敬するわ。
「さて、と。それじゃあ始めますかね」
今回の配信はしっかり黒田さんと相談して、やると決めた枠だ。
彼女は事務所に任せても良いと言ってくれたが、俺のことだし、しっかり対応はさせてもらうことにした。
配信の画面を切り替えて、BGMなどは付けずに配信を開始した。
「はい。どうも~。女子も羨むくらい超新星爆発級に可愛い男の娘、スハ・ノヴァで~す。いぇ~い、見ってるぅ?俺のことを晒し上げてくれたアンチどもw」
『は?』
『おいおいマジかよコイツ』
『反省の色なしw』
『この感じは事実無根ぽいか?』
『始めっから喧嘩腰は笑うw』
『うわぁー。ないわ~…。さすが女子の顔を平気で殴る男』
まぁ予想はしてたけど、俺を悪者と決め付けてる奴らのコメントが一番多いな。
たぶん俺の配信なんてほとんど見たことない奴ばっかだろう。
「えー。今日はですね、なんか昨日の夜辺りから騒がれてるらしい件をお話するって感じなんですけども…。その炎上する原因になった投稿を見たところ、どうやら学生時代に俺は女子より可愛いから調子に乗ってたとか、女子を殴ったとかいう内容でしてね。まぁ!これが万バズしてて燃えてる燃えてる。たぶん投稿したのは俺の知り合いっぽい感じではありますね。誰かまではわかりませんけど、まぁ学生時代の~……高校の同級生辺りかな?」
内容からして、恐らく高校時代の同級生だと思われる。
小学生の頃もプツンと来て女子を壁に叩き付けたことがあったが、声と言動が一緒ってなるとな…。言動はともかく、声はさすがにいくらか変わってるはずだから一緒ってことはないはず。
だから投稿者は高校時代の同級生だと思った。
「まず女子より可愛いから調子に乗ってたっていうのは真っ赤な嘘ですね。俺が可愛い系の男だって気付いたのは、ジュイロに入ってからだし。プロデューサーと活動方針とかの打ち合わせする時に、美少女顔って言われてさ。そこで知ったんだよね。自分が可愛いってこと」
『そういやそんなことどっかで言ってたような…?』
『いやいや鏡を見たことないんかwいくらでも気付けるだろそんなもんw嘘乙www』
『もっと上手い言い訳用意しろよ』
『太ってる人がそのことを自覚してないみたいな感じ?』
この話では嘘だと思う奴もいるか…。
まぁこの感じだと、ただ叩いて愉悦に浸りたい可哀想な奴の可能性高いけど。
「信じる信じないは好きにしてくれて構わないけどさ。なんかあの~……自分可哀想ですよアピールみたいで俺も嫌なんだけどさ。女子連中の方がよく俺の陰口言ってたり、物を隠したり、これ見よがしに画ビョウを椅子に置いてたりしててよ。まぁー陰湿だったよ?虐められてたのは正しく俺の方よ」
思い出すだけでもイラッとしてくる。
俺は何もしていないのに、なぜか女子どもが俺を標的にちょっかい出して来てたからな。
ただアイツらより可愛いからっていう理由で虐めにまで発展するのか、未だに疑問だ…。
『はいはい可哀想www』
『嘘もここまで来ると清々しいなw』
『火のない所に煙は立たないって言葉知ってるか?』
『それだけの虐め受けてたら、女子が怖くなって寧々とかの女性ライバーとコラボ出来なさそうだけどな?』
『これが事実だったら我慢の限界が来て女の子相手でも殴りそうだけどね。俺だったらそうする』
ここまでの説明を聞いても、俺を小馬鹿にするようなコメントが目立つ。
この短い人生でつくづく思っているのだが、世の中ってマジで理不尽の連続なんだな…。
どっちが被害者でどっちが加害者なのかなんて、ほぼ言ったもん勝ちみたいになってんな。
まぁここまでは想定内。黒田さんからもこんな風に配信が荒れるということは言われていた。
問題はこれから言うこと……女子を殴ったという件だ。これがどういう風に受け止められるのか気になるところ。
女子を殴ったのは本当だからな。これからなぜ殴ったのかという理由を事細かに説明するつもりだ。
まともな感性を持った人間なら、俺の行動に賛同するか、しなくても「それは流石にやりすぎじゃ…」で終わる。
それでもなおアンチしてくる奴らは無視だ。虐めを遊びの延長と勘違いしている頭のおかしい奴として扱う。
深呼吸を一つして、心を落ち着かせる。
俺がとうとう我慢の限界を迎えて女子を……それも4人も殴った経緯は、物を隠されたり、画ビョウを仕掛けられたことよりも、凄まじい怒りを覚えたのだ。
思い出すだけでもう一度ぶん殴りたくなってくるほどだ。
「それで、さ。最後に俺が女子を殴ったって話なんだけど。結論から言うわ───やった。しかも4人。思い切りぶん殴ったし、てかなんなら蹴り入れたり、腹を踏んづけもしたな。それくらい腹立ったから」
俺がそこまで言うと、コメント欄が一気に荒れ始めた。
『ついに認めたぞコイツw』
『切り抜いて拡散だなこりゃ。女の子にそれはないわ』
『正真正銘のクズ男爆誕www』
『虐められてたからって、殴るのはまだしも蹴ったり踏んづけたりするのはやりすぎだろ
…。踏まれた場所によっては子ども産めなくなるんじゃね?』
『悲報。ジュイロの期待の新人は実はクソ野郎だったwww』
……なんか。ここまで来ると一周回って面白いな。アンチコメって。
純粋な批判コメもあるんだろうが、それでも虐めてた側を擁護しようとするのは虐めを舐めすぎだと思う。
───そんな視聴者彼らないし、彼女らに。俺は4人の女子に殴る蹴るをした経緯を話し出す。
「このスハ・ノヴァによる『女子暴行事件』なんだけど。それが起こした日が、俺の誕生日だったのよね。んで、その日は俺にとってマジですげぇ特別な日だったんだよね」
『誕生日は誰にとっても特別だろ』
『そんな特別な日にちょっかい出されたからって殴るのもな~』
「んで。ちょっと話が逸れるんだけど……実はうちって母子家庭でさ。“父親は妹二人が産まれる前に交通事故で星になってんだよね”」
『え』
『は?』
『マ?』
『おっと……』
『流れ変わったか?』
俺の家が母子家庭で父親がいないことを話すと、コメント欄が少し大人しくなった。
「色々詳細は省くんだけど、そうなると当然おかん一人で俺ら兄妹を養わなきゃじゃん?妹たちが産まれてからしばらくするまで、おかんと父の両方の祖父母から色々支援とかしてもらってはいたんだけど、結構ギリギリの生活だったね。まぁギリギリだっただけで、人並みの生活は送れてたと思うけど。でも基本はおかんが仕事行って稼いだり飯作ったりしてるからさ。おかんの負担がヤバかったのよ」
おかんが家事育児と仕事による、疲労とストレスでどんどんやつれていく姿を思い出す。
「お母さん大丈夫?」と聞いても、無理して笑顔で大丈夫としか言わない母親の姿を見て安心出来る子どもが果たしているだろうか?
「そんなおかんの負担を減らそうと、当時5歳だった俺なりに家事と妹たちの世話をし始めたんだよ。仕事行ってるおかんに代わって、俺らの面倒を見に来てくれてた祖父母に教えてもらいながらさ」
特に北海道からわざわざ面倒を見に来てくれた母方の祖父母には感謝しかない。
「それで俺が小5くらいになった辺りからは、俺が妹二人の世話と家事全般を担当するようになって。妹たちが洗濯と掃除を手伝うようになったりもしてと、だんだんおかんの負担が仕事だけになってったんだよね」
『なんというか、マジで大変な人生だな…』
『どういう反応すれば良いんだこれ』
『↑一旦黙って聞いてれば良いと思うよ』
身内の話をし始めてから、アンチコメが目立たなくなってきたな。というかROMり始めてね?
コメントの流れが遅くなってる。
「そんで話は戻るんだけど。俺と妹二人はいつも誕生日にケーキとかゲームを買ってもらうくらいで、テーマパークとかに連れて行ってもらうとか、そういう特別なことは一切無かったんだよね。お金に余裕もなかったし。それで俺が17の誕生日を迎える前日におかんが聞いてきたんだよ。『何か欲しい物はないの?』って。これは毎年聞かれてることだから変わらないんだけど、当時の俺は特に欲しい物もなかったからさ。一つ我儘を言ってみたのよ」
───おかんの作った飯が食いたいって。
「本当にね。俺が料理出来るようになってからはおかんが作ることが無くなったからさ。久々におかんの飯食いたいな~って。5歳か6歳くらいから食ってなかったしさ」
仕事で疲れてるであろうおかんにする、誕生日だけの特別な我儘。
おかんは「そんな物で良いの?変な子ねぇw」と笑っていたがな。
ちなみに藍と舞の二人はその日が初めて食べる母の味だった。
「約束通り俺の誕生日におかんは朝早く起きて朝飯と、俺の弁当を作ってくれたの。それでおかんから『弁当の中身は朝ごはんとメニューが違うから、楽しみにしてな♪』って言われてさ。高校生の身なれど、めっちゃ楽しみだったね。だって朝飯に食ったおかんの料理さ。マジで旨かったんだよねw久し振りに食うおかんの飯うめぇ~って。そういえば味噌汁こんな味だったわ~って。だから昼飯もめっちゃ楽しみだったんだけどさ…」
そしてついに本題の話へと移る。
俺が女子4人に暴力を振るった理由。そのクソったれな話をする。
「昼休みになって、弁当を広げる前にトイレに行ったんだ。飯食ってる最中に行きたくないから、いつもやってることなんだけど。んでトイレから戻ってくるじゃない?『さぁおかんが作ってくれた弁当の時間だ~♪』ってウッキウキで弁当を手に取ろうとしたら……“無かったんだよ。机の横に吊るしてた弁当が入った保冷バッグが”…」
『あ』
『流れ完全に変わったな…』
『もうなんか想像付いちゃった…』
『頼むからそうであって欲しくない』
「どこ行ったと思って探してたらさ、ふと目に入った“俺をよく虐めてた女子4人”が俺を見てなんか笑ってたの。まさかと思ったよね?でも頼むから間違いであってくれって。そうでなくてもいつもみたいに隠すだけであってくれって、身体に気持ち悪い汗が流れるのを感じながら願ったよ。だけどさ……あの~、そこで。近くにいたあんま話したことのない男子が、すっっっごい申し訳なさそうな顔で教えてくれたの」
───君のお弁当……あの子たちが、ゴミ箱にって…。
『は?』
『うわ…』
『マジかよ…』
「それでゴミ箱の中を見たらさ───あったよ。俺の弁当。しかも中身ごとぶちまけられてた。ハンバーグとか、唐揚げとか、たぶん俺の好きな甘い卵焼きとか、ブロッコリーとか、マカロニサラダとか……俺の大好物がいっぱいあった。さすがに納豆は無かったけどね。いや~wうちのおかんって凄いよね?俺の好きな物を全部憶えてたんだぜ!10年……以上か?ギリ。それくらい飯作ってなかったのに、憶えてたの!俺がよく作ってたならわかるよ?でも俺マジで色々な料理憶えて、マジで色々出してたからさ。まさか憶えてるとは思わなかったよ。母親の偉大さってこういうところにも現れるんだねぇwww───それをよ」
ここまで努めて冷静に説明していた俺だが、当時のことを思い出してだんだん怒りが湧いて来て声が低くなる。
もう終わったことだけど、俺にとってこの件は一生許すことの出来ないことだ。抑えるのは正直無理だった。
「俺を虐めてた女子の4人は、全部台無しにしたんだよ。そんなの許せって方が無理じゃん?暇なのかコイツらって流すなんて出来る訳ないじゃん?……だからさ。問答無用で全力で殴ったし、蹴ったし、とにかく後悔させてやるつもりでやった」
さすがに鼻の骨をぐしゃったとか、腹を踏んづけて腹の中の物を吐かせたとかいうグロい話はしないでおく。
「そっからはまぁ、俺と向こうの親が学校に呼ばれて話し合いとかにはなったんだけど、結果的に俺は謹慎3週間くらったね。向こうは病院送りになった奴が二人もいたからさ。でも向こうの親がまともだったおかげで3週間で済んだとも言えるね。───この通り女子に暴力を振ったのは本当。でもそこには相応の理由があったことは理解して欲しい。てか……しろ。何も知らずに俺の悪口をネットで書き込みまくったなら。……それでさ。ここまでの話を聞いた皆に聞きたい。俺だけが悪いんですか?俺の物は隠すし、画ビョウとか危ない物は仕掛けるし、俺を気持ち悪い男だのとよく罵って来たし。挙げ句の果てには、普段から仕事で忙しいおかんに、誕生日だからと飯を作ってもらった弁当をゴミ箱に投げ捨てた。俺悪いか?なぁ?答えてくれよお前ら」
『ノヴァくんガチでキレてる。怖い…』
『病院送りはやりすぎだけど、先に仕掛けた虐めっ子の方が悪いとは思う』
『俺これでノヴァくんを悪いなんて言えねぇよ』
『調子に乗ってラインを越え続けた結果やね。ずっと流してあげてたノヴァくんの優しさを無碍にした女たちが悪い』
『さすがにアンチどもも、配信内じゃアンチコメしづらいだろうな…』
『病院送りって相当だぞ。小さくても力は相応の男だってことか…』
『病院送りは妥当じゃね?』
『そこまでの暴力はやりすぎだけど、ノヴァちゃんは悪くないと思うよ』
コメント欄は徐々に、俺を擁護する物が増えてくる。
暴力はやりすぎだったという、俺から見たら舐めたコメントはあるが、所詮は赤の他人。それくらいことは言わせておくさ。
「はい。それじゃあ今日の配信はここまでにしようかな。炎上してる件について話したかっただけだし。というわけで、さようなら~」
いつもより覇気のない別れの挨拶をして、配信を閉じた。
その後。俺へのアンチコメは徐々に減っていき、やがて別の炎上事件に目が向けられた。
結局。炎上というのは、ただ何も知らない外野が無駄に騒ぎ立ててるだけなんだなって。
「たく。バカどもがよ…」
※昔のことを思い出したせいで、めちゃくちゃ口が悪くなってる。
さて。次はRに1と8が付く方を執筆しないと…。
掛け持ちって大変ですね。楽しいですけど。




