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最近Vにハマった俺。なんとなく大手VTuber事務所に応募したらなんか受かっちゃって、いつの間にか人生にイロが付いた。  作者: ユリ乙女
第一章 ノヴァと本当に愉快な仲間たち

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炎上

お待たせしました。

 ───テレッテーテ♪テレッテーテ♪テレテッテッテッテッテッテン♪


「うーん……もう朝か…」


 スマホから流れる某バレーアニメのオープニングを止める。

 昨日の自作鬼畜マイサバをクリアするのに、日付跨いじゃったもんで寝るのが遅くなってしまった。

 翌日に朝から事務所で打ち合わせと収録がある時にやるんじゃなかった…。


「まだ寝てたいけど、そろそろ準備しないとな…。ふぁ~…」


 元々朝は得意じゃない俺には、キツいなこれ…。


「でも頑張んないとな。いっぱい給料貰ってるんだから」


 それにブラック企業の何倍も環境が良いし。天国だぜこの会社は…。

 多少キツくても頑張れるってもんよ。


 朝飯にご飯と卵焼きと味噌汁。

 それと、しそ納豆を食べて事務所へ向かった。

 やっぱ納豆は最高だぜ!


──────────


 電車に乗って、事務所がある地区へ向かう。

 正直移動が面倒なので、事務所近くに引っ越そうか真剣に考えている。


(ほぼ毎日配信頑張ってるからか、黒田さんからとんでもないボーナスが振り込まれてるし、マジで引っ越そうかな?母さんにも仕送りは程々で良いって言われちゃったし)


 黒田さんは頭のネジがいくらか飛んでる人だが、ライバーの頑張りに精一杯応えてくれる。

 わかりやすいのがお金。彼女自身、ジュイロの社長を呼び捨てして呼んでいることから結構偉い立場なんだと思われるが……どこにそんなお金があるんだってくらい入金されるから、マジでびっくりする。


 それだけジュイロは稼いでるってことなのかね?


「おい見たかよ?トゥイッターのあれ」

「なんの話?」

「ほら、ノヴァちゃんの…」


「ん?」


 向かいの席の男性二人から、ノヴァの話が聞こえてくる。見たところ大学生くらいだな。


「ノヴァって、あの可愛い子ぶってる男のVTuber?」

「言い方よ…。実際めっちゃ可愛いぞ?脳が破壊されるくらい」

「いや別に興味ねぇし」

「んだよ。遅れてんな?今トップクラスに話題だろうが」

「俺は興味ない。そもそもVTuber自体興味ない」


 まぁ、ああいう人もいるわな。

 俺だって今の芸能人とかあんま興味ないしな。子どもの頃に観てたパンツ一丁の一発屋とか、無人島生活で活躍してたコンビとかは今でも好きだけど。

 俺にとってあの辺はヒーローに近い存在だったなぁ。もう歳が歳だから無理だろうけど、またウツボとの激闘を観たいと思ってしまうな。


『次は~○○。次は~○○。お降りの際は、足元にご注意───』


「あ。降りなきゃ」


 目的の駅に着き、いそいそと電車を降りて事務所へ向かった。


「でさ。そのノヴァちゃんがさ───“学生時代に女の子を虐めてた”って、今ネットでめっちゃ噂になってんだよ」

「嘘乙。“あんな良い子そう”なのにやるかよ、そんなこと」

「え?」

「あ…」

「……どうやら間抜けは見つかったようだな?」

「知るか黙れアホ…」


──────────


 事務所に到着して、打ち合わせの会議室へ向かう。

 すると途中で、ちょっと会うのが気まずい人と出会った。


「あ。ノヴァくん。やっほー」


「おはようございます、ロリィーさん。ロリィーさんも打ち合わせですか?」


 可愛らしいチワワの絵が描いてあるリュックを背負ったロリィーさんとバッタリ。

 手を上げて挨拶してくる彼女に、こちらも上げ返した。


 一緒にゲームをやるだけなら平気なんだが、こうやって直接会うのは……


「……うん。そうなの……このあと悪徳プロデューサーから、仕事が欲しければわかるな?的なことをされに行くの…」

「そんなことあったら色々な人が黙っちゃいないぞ。特に日本のヲタクは怖いんだからな?推しの為なら命捧げかねないんだから…」


「ノヴァくんは……汚れちゃった私でも、愛してくれる?」

「うーんやかましい。もうちょっと良いアプローチの仕方あるでしょう…」


 隣を歩くロリィーさんが俺の裾を摘まんできて、その手をペシっと優しく叩き落とす。


「ちぇー。また振られちゃった」

「それで口説いてるつもりないでしょう絶対…。俺に振り向かせるって言った時の方が何倍もときめきましたよ」


 以前ロリィーさんが財布を失くした時にしばらく泊めてあげた時。毎食お腹一杯にしてくれる優しさに惹かれたとかで、告白してきたことがあった。

 その時からちょくちょくディアコードでメールのやり取りや寝落ち通話とか掛けてきて、アピールらしきものを仕掛けて来ている。


「ノヴァくんは今日はなんの仕事で来たの?」


「同期の皆と打ち合わせおよび収録ですね。会うのはロリィーさんがうちに泊まってた時のコラボ以来だなぁ」


 皆元気にしてっかな~。

 ちょいちょい切り抜きがショートで流れてきて、各々の活動は断片的には知ってるけど。

 キャリバーさんの観てると腹抱えて笑ってしまうほどめっちゃ叫びまくってた罰ゲーム絶叫マシーン。

 アドライアさんのおしとやかな声から放たれた「このゾンビさんは余程私のトマホークで死にたいようですね~」と言った時の圧の恐ろしさ。

 エレーナさんの思わず聞き惚れてしまう素敵な歌配信やコンプラ研修が必要そうなゲーム実況。


 当たり前だけど、全員めっちゃ努力してんだよな~。


「あ。じゃあ俺ここの会議室なんで」


「うん。また今度一緒にゲームやろうね」


 会議室のドアを開き、ロリィーさんと別れようとした───その時。


「絶対ありえねぇ!?ノヴァくんがそんなことするはずねぇ!」


「ちょ、落ち着きなさいって!アンタがそんな騒いでどうすんのよ」


 ドアを開いた隙間から、キャリバーさんとエレーナさんが言い合ってる声が漏れてきた驚きで、ドアノブから手を離してしまう。


「な、なんだ?なんの騒ぎだ」


「今の声……キャリバーくんとエレーナちゃんだよね」


 喧嘩でもしているのだろうか。もう一度、今度はそっと扉を開けて中を覗き見てみる。

 ロリィーさんも気になったのか、俺の下に潜り込んで覗き始めた。


「まぁまぁ、落ち着きたまえ。こんなのアンチが拡散した根も葉もない噂だよ。もう法務部に頼んで、諸々の準備をしてもらってるところさ」


「わぁ~。さすがは黒田さん。行動力の鬼~…。まぁそれなら、すぐにこの騒動も収まるわよね?」


「どうでしょうか?一度燃え上がった火は、なかなか消えるものではありませんから…。ただの揉み消しだのなんだのと、言い掛かりをつけてくる可能性が高いです」


 黒田さんとアドライアさんもいる。一体なんの話をしてるんだ?


「とりあえず一旦ノヴァくんともこのことを話し合わないとね。事実無根とわかれば、開示請求も通りやすくなる。……しかし少し遅いね?そろそろ来ても良い頃なんがね」


「もしかしてノヴァくん。SNS見てメンタルやられちまったんじゃ…」


「いやあの変人がこの程度の炎上一つでへばるとは思えないんだけど…」


 炎上?もしかして俺、知らない内になんかやらかした?

 俺の話だよなこれ。


「ロリィーさん。なんか知ってます?」


「ううん。何も。でも昨日のお昼までは何もなかったはずだし、あるとしたら昨晩の配信だけど…」


「ハッ!?もしかしてマイサバでやった、時が止まる世界でサバイバルがあまりにも『ウリィー!』様路線だったから、その界隈の人が怒り散らして…」


「あの漫画の界隈は怒るどころかノリに乗りまくってくる人ばかりだよ。事実コメント欄もそんな感じだったよ?モブ全員があっち側なの凄いウケてたし」


 さらっとロリィーさんも俺のマイサバ配信観てて草。

 いやまぁ完全に常連なんだけどね?


「あのー?」


「「!?」」


 扉の隙間越しに話し掛けれて、二人してビクッ!と身体を強ばらせる。

 見るとアドライアさんがそこにいた。


「お二人とも、隠れ切れてませんよ。トナカイのお医者さんのマネですか?」


「いや。なんか俺のことで言い争ってそうな声が聞こえて、様子見してた」


「おー!?ノヴァくん!やっと来たか!ほら早く入ってくれ。例の炎上について、詳しく聞きてぇんだこっちは」


「あ~れ~。幼女誘拐よ~(棒)」


「おい声も容姿もマジで女の子過ぎて洒落にならねぇからやめろ!?てかとうとう自認幼女までし始めたんか…」


 キャリバーさんが扉を勢い良く開けて、慌てた様子で俺を中へ引き摺り込む。

 ついでに他で打ち合わせがあるはずのロリィーさんもそろりそろりと中に入ってくる。自分の仕事はいいの?


「やぁノヴァくん。おはよう。さっそく打ち合わせと行きたいところだが、残念ながらそれは後回しだ」


 黒田さんがいつになく真剣な表情で言う。

 やはりふざけてられない状況らしい。


「はぁ…。とりあえずおはようございます、皆様」


「君は、自分が今SNSでどんなことになってるか把握しているかい?」


「いいえ。なんか黒田さんたちが、俺が炎上してるだのなんだのと言ってるのは聞いてましたけど。なんのことです?やっぱり昨晩の配信が原因?」


「いや。それは全然大好評だったよ。君がコマンドまで出来る有能ライバーだってこともあってね。そんなんじゃなくてね……この投稿だよ」


 黒田さんに見せられたのは、トゥイッターのとあるアカウントの投稿だ。

 それにはこう書かれている。


『このスハ・ノヴァとかいうVTuberの中身、たぶんうちの知ってるやつだわ。声とか言動がもう完全一致。

女子より可愛いからって調子に乗ってて、女子のことよく見下してた最低な男だったよ。

うちの友達なんか、急に殴られたこともあるし。女子の顔にだよ!酷くない?』


 その投稿は万単位でいいねとリトゥイートがされていて、一目で炎上の源であることがわかった。


「……おいおい、マジかよ…」


「全く酷ぇよな!?ノヴァくんのことが気に食わねぇからって、こんな根も葉もない嘘を書くなんてよう!」


「キャリバーはちょっと落ち着きなさいよ…。気持ちはわかるけどさ。まぁノヴァの本名は出さない辺り、身バレのタブーまで起こさないくらいのネットリテラシーはある奴なのかしら?それとも単に知り合いを装ったアンチ?」


「後者の方が可能性が高そうですが…。こういったアンチコメントが火元になるのはあまり見掛けませんし、本当にノヴァさんのお知り合いかもしれませんね。この投稿のコメントへの返信も、妙にリアリティがありますし」


 俺が火元の投稿に驚いていると、同期の皆がそれぞれ怒りを露にしている。

 キャリバーさんはわかりやすく、女性陣二人は落ち着いた雰囲気があるが、やはり嫌悪感を隠し切れていない。明らかに怒っている。


「とにかく早く開示請求でもなんでもして、責任取らせましょうよ?コイツはまぁ、確かにムカつく部分もあるけど、だからって根拠のない噂をこうやってばら蒔くのは間違ってるわ」


 俺のことが気にくわないエレーナさんでもここまで怒ってくれるとは……意外と仲間想いらしい。ツンデレか?

 でも俺にムカついてるのは割と一方的な感情な気が……まぁいいか。それよりも……


「あの~……」


「そうだぜ!黒田さん。早くこのふざけた投稿した奴を割り出して、謝罪と訂正をさせるべきだ」


「ちょっと……」


「人の人生を無責任に台無しにしようとしているのですから、その報いは当然受けるべきですからね。ノヴァさん、大丈夫ですよ?すぐに解決すると思いますから」


「えっと……」


 何度も俺からこの投稿について話そうとするが、同期たちは割と興奮常態で間に入る隙がない。どうしよう…。


「皆。一旦落ち着こうか」


 小さく儚げな声が部屋に響く。

 先輩の言葉だからか、全員がその人。ロリィーさんを見る。


「皆の気持ちはわかるよ。けどまずは、ノヴァくん本人の話を聞こうか。さっきからずっと話したそうにしてるよ」


「あ…。そうか。ノヴァくんの気持ちもちゃんと聞かないで、俺たちだけで勝手に進めちまってたな…。すまねぇ!」


「いや。皆の気持ちは素直に嬉しいから、気にしないでよ。……ありがとう。俺の代わりにそんなに怒ってくれて」


 笑顔でそう答えると、キャリバーさんたちは照れたように顔を背けた。


「ちょ、やめろよ礼なんて。面と向かって言われると、背中痒くなっちまうよ…」


「……無駄に可愛いせいで不覚にもドキッとしたわ…」


「そ、それでノヴァさんは、何を話したかったのでしょう?」


 三人が照れてる様子に、黒田さんが隅っこで口と腹を抱えて笑いを堪えているのだが……気にせずこの炎上の“真相”を話すことにした。


「とりあえずこの投稿の内容ですけど……たぶん普通に学生時代の知り合いっぽいです。俺のことを虐めてた女子の誰かですね。と言っても数が多いんで、誰かはわかりませんが…」


「うわ出たー!絶対典型的な自分を正当化しまくってる痛い女じゃん…」


「エレーナちゃんもノヴァくんのこと敵視してるし、割と同類じゃ…」

「私のは嫉妬から来るライバル心!この投稿主はただの理不尽女!天と地ほどの差があるでしょうが!?」


「「「嫉妬してる自覚あったんだ(ですね)」」」

「アンタらぶっ飛ばされたいんか!?私のことは今は良いでしょ…。ほら、続き話しなさいよ」


 イライラしながらも俺の話の続きを促すエレーナさん。

 この人。言葉遣いが荒いだけで、結構良い人だよな?


「なんか“俺が女子より可愛いから調子乗ってる”とか書いてありますけど、これも完全に嘘ですね。俺が可愛い男の娘だなんて、ジュイロに入って黒田さんに指摘されるまで自覚してませんでしたもん」


「それでは決まりですね。これは立派な名誉毀損です。黒田さん、今すぐ開示請求をすべきかと」


「そうだね。それじゃあさっそく法務部の方へ……」

「あ。ちょっとそれ、待ってくれませんか…?」


 アドライアさんの言葉で、スマホを取り出した黒田さんが法務部へ連絡しようとするのを止める。


「その……この最後の“女子の顔を殴った”ってところなんですけど…」


「ああ。これか?どうせこれも真っ赤な嘘だろ?」


「ノヴァくんがそんなことをするのは一番有り得ないことは、しばらくお世話になってた私が証明できるよ?」


「いやまぁ、そう思ってくれるのは大変ありがたいんですけどね……」


 キャリバーさんとロリィーさんの言葉に居たたまれない気持ちになりつつ、俺は頭を掻きながら答えた。


「───俺が女子の顔面を殴ったのは、紛れもない事実です…。しかも、4人ほど…」


「「「……………」」」


 俺の言葉を聞いて、全員がフリーズした。そして……


「「「えええええええぇぇぇぇぇぇぇぇッ!?!?!?」」」


 しばらくして、そんな叫びが廊下の遠くまで響き渡った。

実は新しい小説を始めまして、そっちに集中していました。

ここにタイトルを書けないやつなんで、タイトル紹介は出来ないんですが…。


なんとか頑張って両立します。

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