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最近Vにハマった俺。なんとなく大手VTuber事務所に応募したらなんか受かっちゃって、いつの間にか人生にイロが付いた。  作者: ユリ乙女
序章 VTuberデビュー

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初配信。初っぱなから事故る。

こんなに長くなる予定はなかったんや…。

「改めて。合格おめでとうございます。これから一緒に頑張って行きましょうね!」


「は、はい。よろしくお願いいたします」


 どうも。VTuberにハマって、なんか勢いで大手VTuber事務所のジュイロに応募してみたら受かっちゃってデビューすることになった新人。

 櫻葉(さくらば)優(ゆう)です。


 ただいま俺は、ジュイロの事務所の一室にて面接官だった女性と挨拶している。

 名前は黒田(くろだ)真喜枝(まきえ)さん。ややパーマがかかった長髪で、とても美人で腕利きのプロデューサーらしい。

 あと素晴らしいメロンが二つぶら下がっている。本当に素晴らしい。チラ見しないようにするのが大変だ。


「さて。今日から櫻葉さんもジュイロライバーの一員となる訳ですが……何はともあれ、まずはキャラ作りからですね」


「キャラ作り……吸血鬼とかそういうのですよね?」


 VTuberの命その物と言っていい、俺がこれから動かすモデル作成とキャラ設定。

 まずは1からキャラクリエイトしなければ話にならない。


 しかもただキャラクターを描いてキャラ付けすれば良いという物でもないだろう。会社と演者側の方針や売り出し方に合ったキャラを考えなければならない。

 人によってはこの段階でガチ喧嘩並みの話し合いが始まったりもするらしい。


 ……俺は特にこだわりは無いから、そんな激しいことにはならんだろうけど。


「はい。最近ハマったばかりの櫻葉さんもご存知とは思いますが、VTuberというのはアニメ調のキャラクターを3D化して動かし、ゲーム実況や雑談配信。さらには歌やダンス、バラエティー番組のような動画で視聴者に楽しんでもらうコンテンツです。もちろん貴方にも自身の分身となるキャラクターが必要な訳ですが……何か要望などはありますか?」


「要望か…」


 何度も言うが、俺はハマった勢いそのまま。なんとなくで応募しただけだ。落ちること前提で面接を受けたら、奇跡的に受かったのだ。

 だからこれと言った要望が思い付かない。


「うーん。これっていう要望はないんですよね…。自分は至って普通の人間で、運動神経も人並み程度。強いて言うなら筋トレや料理が趣味くらいですし」


「ほお。筋トレですか…。失礼ですが、櫻葉さんはかなり華奢な身体付きをしてらっしゃいますが…」


 黒田さんの言う通り。俺の体格はお世辞にも良いとは言えない。家族曰く、服の上から見たら女の子なんじゃないかと思うくらい細く見えるそうだ。スポーツマンだったとは思えない。

 身長も150センチ程と、男にしてはかなり低いしな…。別に背が伸びにくい病気だった訳でもないし、親も平均以上の身長だったのに。

 もしかしたら、チビだったせいで同級生らに虐められてた部分もあるかもな。


「一応。これでも50キロのダンベルを両手に一つずつ持てます。そんなに多くは上げ下げ出来ませんけど」


「ええ!?50キロのダンベルを…?人は見掛けに寄らないとはこのことね…。……うん。わかりました。櫻葉さんの他の趣味は確か……」


「音楽を聴くことと、ゲームですね。好き嫌いが激しいですが、漫画やアニメなんかも観てます」


「はい。かしこまりました。となると……櫻葉さん自身、“美少年”。というよりかなり“美少女顔”なのでその辺の特徴も取り入れつつ……」


「え?」


 黒田さんが言ったことが気になり、思わず疑問の声が出た。


「どうかしました?」


「いえ。その……美少女顔って?」


「あ…。すみません。お顔はコンプレックスで……そういえば、櫻葉さんは学生時代に…」


 美少年?美少女顔?そんなこと初めて言われた…。今までずっと『キモい顔』とか、『男とは思えない顔』とか、『女の敵みたいな顔』とか言われて来たから。


「俺って他人から見たら、結構酷い顔付きをしてるのかと思ってました。端的に言うとブサイク。Vに応募したのは、リアルの顔関係なくやれそうだなっていう思いもありましたし、まさかこの顔を褒められるとは思ってませんでした」


 男としては美少女顔を褒め言葉として受け取っていいのか少し疑問だが。


「そう、でしたか…。嫌なことを思い出させてすみません…。ですが!心配しなくても大丈夫ですよ。うちのライバーには、貴方のお顔をバカにするような子はいませんし、羨ましいくらい可愛いですよ。もっと自分のお顔に自信を持ってください」


「美人の黒田さんが羨ましいと言っても説得力ないような…」


「あら。お上手ですね。ありがとうございます」


 自分がまさかの女顔。それも美少女よりと言われてもいまいちピンと来ないが、お世辞には聞こえないし、ここは素直に受け取っておこう。


「話を戻しまして。私としましては、櫻葉さんのその整った容姿を活かしたキャラを作りたいと思っております。櫻葉さんがお嫌であれば、もっと違うキャラクター。それこそガチガチのイケメンキャラに仕上げれますが……」


「あ。いえ…。自分が少なくともイケメン顔じゃないことは理解してたので、それは大丈夫です。ただ自分の顔をマジマジと見たことは全然なかっただけで、黒田さんがその方向でキャラを作りたいのであれば、全然構いません」


「わかりました……では!“男の娘系VTuber”というのはどうでしょう?もうこれでもかと美少女にして、『一物を確認するまでは女だ!』って言わしめるくらいの!しかもえっちな衣装を着た!」


「そんなデ○ンくんちゃんやアスト○フォみたいな…。てか急にテンションたっか」


 その後いきなり興奮し出した黒田さんの勢いに押されるがまま、俺の分身となるキャラクターの容姿や特徴。細かな設定などが決まっていく。

 名前は『やってやったぜ』みたいな謎の名前が入る変に長ったらしいものではなく、簡潔で短いものに。


 ジュイロのライバーには宇宙人要素のある者が少ないということで、宇宙人設定が追加されたり、産まれた理由や過程。年齢なども決めていく。

 誕生日は俺のままで行くことに。某青い猫型ロボットと同じ日なのが自慢って面接で言ったことが影響したか?


「うんうん。それじゃあ、これらの設定を絵師さんに提出しちゃうわね。うーん!これは売れそう!中身までガチの男の娘系VTuberはいないだろうし、本当に期待大だわ!」


 いつの間にか敬語ではなくなった黒田さんは、最後に「濡れる!」とか変態ちっくなことを言って急いで俺のママとなる絵師さんに連絡しだした。

 俺もジュイロに受かってから色々調べて知ったのだが、自分のVのキャラデザをしてくれる絵師さんのことを『ママ』と呼ぶらしい。

 ふーん。なんかえっちじゃんって思った。


「もしもしお疲れ様です!ジューにんトイロのプロデューサーの黒田です~。お世話になっております~。今お時間って……はい。ありがとうございます。はい!そうです、新しいVのキャラデザをですね。はい!実は男の娘系でして。演者となる本人もアニメから飛び出して来たんじゃないかってくらい、凄く美少女系の男の子みたいな容姿なんですっ!……いえ!一物は確認してないので、ワンチャンまだ女の子です!!!」


「どうしよう。デビューすらしてないのに早速卒業したくなってきた…」


 黒田さんが残念美人とわかったところで、今日はお開きとなった。

 彼女との付き合い方はよく考えた方がいいかもしれない。




 それからおよそ三週間ほどして、俺の分身となるキャラデザが届いた。

 ママになってくれた絵師さんの仕事の関係で、いつもよりかなり遅れたらしいが、その間にこっちはこっちで配信機材を揃えたり、キャラの名前や自己紹介の文言。プロフィール作成などをゆっくり決めることが出来たので逆にありがたかった。

 さて。俺の分身となるキャラクターだが……正直、ちょっとえっちだ。背の小さいちょっとえっちな男の娘系だ…。


 キャラの名前は『スハ・ノヴァ』。超新星爆発(スーパーノヴァ)によって産まれた生命体という設定だ。ちなみにスハの“ハ”は“わ”と読む。○○“は”○○した~みたいなやつの。

 見た目だけならマジで可愛い女の子だ。八重歯がチャームポイントの、美少女としか言いようのない顔立ち。髪は短髪で色は青……というより群青色と言った方が良いだろうか。どっちにしても宝石のようにとっても綺麗な髪色だ。

 あと天辺にアホ毛のような物が立っていて、前髪に馬の流星のような白いメッシュが入っている。

 目は右目が赤。左目は黄色のオッドアイだ。さらには、所謂“椎茸目”と呼ばれる自然と目が引かれる特徴的な目をしている。

 耳の形は普通の人間と同じ形だ。イヤリングを着けており、絵に描いた流れ星のような形をしている。

 首には青と紫を基調とした大きなヘッドホンが掛けられており、音楽やゲーム好きを主張してるように感じられた。


 続いて服装だが、これが割と際どい。ワンチャンこれからホットなんちゃらを歌わされそうだ。全然あんな穴だらけのセンシティブ衣装じゃないけど。

 透き通った丈の短い黒い半袖シャツには、宇宙を連想させるような銀河系のような柄と星のような物が散りばめられるように描かれており、右肩には白と紫の大きな羽のアクセサリーが着いている。お腹丸出しだ…。当然ヘソも出てる。あと細いし、透けてるシャツの下にフィットネスウェアみたいなのが見えてる。スポブラではないよな…?


 下はもう、限界まで脚を出しているデニムの超ミニ短パンだ。ダメージ系みたいなやつで、鼠径部が少々露になっている…。えっちだな。

 ベルトが着いていて、イヤリング同様流れ星のような装飾がある

 正式名称は知らんが、右足の太ももには俗にエッチベルトと呼ばれる謎ベルト付き。だからなのか、腰回りと太ももがちょっと太めに描かれてる気がする…。そのせいでなんかこう……えっちだ。

 靴下は履いておらず、素足で黒いサンダルを着用。こちらも星が散りばめられたデザインとなっている。

 ……あ。今気づいたけど、手と足の爪。黒いネイルになってら。こんな細かい部分までデザインされてるのね。


 ちなみに左手の甲を腰に当てたポーズを取っているのだが……何故か右手にダンベルを持っている。あと隣に添えるようにバケツが置かれてる。

 なんだこのアイテムたちは…?

 ……でもとりあえず不満はなかったのでOKを出した。なんか変態紳士が群がりそうだが、まぁVTuberなんてのはそんなもんだろう。




 これであとはジュイロの公式ホームページや公式トゥイッターなどでキャラデザとデビュー日を公開して、配信に備えるだけとなった。

 デビュー日は公開後の一週間後に行うことに。それで晴れて俺もVTuberの仲間入りという訳だ。


 公開後。気になってトゥイッターの反応を覗いてみた。


『え。待って。可愛いーーー!!!』

『ちょ、太ももえっちじゃん…。謎ベルトあんじゃん…』

『八重歯すこすこのすこ』

『この子、星の爆発によって産まれた宇宙人だってよ』

『え。てか男の娘…?』

『『『可愛い上に付いてるとかお得じゃん』』』


『○れたい』

『○れられたい』

『つかなんでダンベル持ってるの?』

『バケツも意味不じゃね?』

『ダンベルは筋トレが趣味っていうのと、バケツはお前ら変態を水ぶっかけて撃退する為じゃね?』

『そのお前らの中にはお前もいることを忘れるな?』


 ちょっと見たの後悔した(丸)

 しかしジュイロファンの人たちがかなり期待してくれていることはわかった。この期待を裏切ることだけはしてはいけない。


 しかし初配信でどうやって印象を残すべきだろうか…。VTuberに限らず、配信者というのは何かしら強い印象を残さないといけないイメージだ。

 黒田さんとは最低限必要なことについては色々相談したが、主な配信内容は俺が決めるように言われている。

 初配信は自己紹介と、ライバーの人柄を知るための雑談をすることが多いらしいけど…。


「胃カメラ……アレのせいで何か凄いインパクトのあることをしなきゃいけない風潮がV界隈にちょっとあるくないか?……いや。元々そういうものかもな…」


 うーん。これと言って得意なことは何もないしな~。趣味はゲームや漫画アニメ。筋トレに料理……あ。


「料理の画像を載せるとか?」


 別に料理系VTuberを目指す訳じゃないが、趣味は料理と聞いたら見てみたいと言う視聴者は一定数いるはずだ。

 ブラック企業に勤めてた間は凝った料理をしてこなかったが、今こそそれをやるべきだろう。


「久々に本棚の肥やしになってる料理本たちを取り出すか」


 本棚にはなんとなく買った小説や赤本などが混ざっているが、ほとんど漫画や料理本ばかりだ。あとは食材の豆知識が書かれた本とかがある。


「難しい料理は2品くらいにして、誰でも出来る物を5品くらい作るか。……映える撮り方も調べよ」




 それから一週間。あっという間に時が過ぎて、配信当日となった。

 配信開始時間は夜の8時。現在時刻は7時半である。

 既に黒田さん協力の元に作られた待機画面がミーチューブというネット動画アプリに配信されている。

 あとは30分経ったら待機画面から宇宙の絵に切り替えれば配信スタートとなる。


「えーっと…。準備は筒がなく終わったと思うが、何か準備し忘れてる物とかないだろうか?」


 そう呟いて周辺機器のチェックを行っていると、なんとマイクの線が抜けていることに気が付いた。

 危ない危ない。初っぱなから転けるところだった。


「さて。マイクの線も挿したし、これでチェックする所は全部チェックしたな。……配信まであと20分か。小腹空いてきたし、軽くなんか食うか」


───この時。優は重大なミスを犯していた。それは……


『ん?』

『ん?』

『ん?』

『今声入ってたよなw』


 マイクがオンになっていることに気付かなかったこと!


『ミュートにし忘れてらw』

『こーれ事故ですw事故確定ですw』

『気付いてくれノヴァくんw』

『このままでは放送事故や!下手したら初配信でクビ案件!?気付けーーー!!!』

『てか声可愛くなかったか?え。男なんだよな!?』


 しかし待機してる視聴者のコメント虚しく、それは冷蔵庫を漁る優には届かない。そしてそれはこれからもだ。

 なぜなら彼は今……パソコンの画面を消しているからだ!


 待機画面などの諸々の準備を終えたあと、電気代を少しでも抑えたいという貧乏性から消してしまったのだ。

 というよりそもそもパソコン前では食べないので画面が点いてたとしても気付きにくいだろう。


 スマホで待機画面を確認することもせず、優は大好物の納豆とレンチン米を取り出した。


「納豆♪納豆♪なっとっと~♪混ぜ混ぜすると、美味しい納豆~♪混~ぜた数だけ美味しい納豆~♪」


 レンチン米をレンジに突っ込んだ後、自作の納豆の歌を歌いながら納豆を混ぜ始めた。

 そのせいで……


『ぐはッ!?可愛いが、過ぎんだろ……ドサッ』

『なんだ……この美声は…ぐふッ!?』

『嫌だ!まだ尊死なんてしたくない!?まだ俺はノヴァくんちゃんと会えてな……ぐへぇ…』

『葬儀屋が大忙しだぜこりゃ…(とっくに尊死済み)』

『これが超新星爆発というやつか…。ぐほぉッ!!!』


 コメント欄は死屍累々である。

 櫻葉優。彼自身は全く気付いていなかったが、その美少女と見紛うほどの容姿と美声は、世の男子たちの脳を焼き、女子からは嫉妬の感情を向けられていた。


 小学校の頃は男子の好きな子にイタズラしたくなる衝動を駆らせ、女子からはガチ虐めを受けた。

 そのせいで自分は人に好かれるような容姿ではないのだと認識した。


 中学の女子の先輩から扱いが特に酷かったというのも、付き合ってた男子が優を女の子と勘違いして好きになったから振られたというもの。

 可愛がられた後輩たちも、優に脳を焼かれた子たちばかりだった。一部の後輩女子の間では、お姉様と密かに呼ばれていた。


 高校でも同様で、自分の好きな人が優を好きになったという件が大幅に増加した。

 おかげで優が在学中はカップルが極端に少なく、クリボッチ民までも大幅に増加した。

 優から見た生意気な後輩たちというのは、ただ単に優に脳を焼かれないよう気張ってただけである。

 なお裏では非公式ファンクラブが存在していた。


 優の強靭なメンタルと鈍感さが伴った結果。

 彼は自分の容姿と声に対する自己評価を誤っていたのである。


「納豆♪納豆♪なっとっと~♪納豆嫌いは粛清対象~♪」


『こっわw納豆嫌いなだけで?w』

『ひえっ!ワイの首が物理的に飛ぶ!?』

『逃げてー!納豆嫌いのライバーさんたち超逃げてー!!!』

『こりゃあ生粋の納豆ジャンキーですわ~…』

『てかもう俺ら尊死させられてるから、飛ぶ首ないんだよね』


「アツアツご飯に納豆かけて、いっただっきま~す♪」


『俺たちの命もいただかれてるがな。納豆ご飯の前に』

『あと15分もこんな可愛いオフショット音声を聞かされるの?新手の拷問か?????』

『息してる奴おりゅ?』

『息はあるが、川の向こうに去年亡くなった愛馬が首を縦に振ってこっちに来いって……』

『馬主いて草』


「う~ん!納豆うま~」


 それからも上機嫌な優の声によって被害者が続出。既にチャンネル登録者数は鰻上り状態である。

 と、その時。優のスマホが鳴り響く。


「ん?電話?」


『お!事務所からか?』

『さすがに連絡行ったかw』

『よかった。これで被害者は俺が最後で済む…』


 しかしそんな視聴者の期待とは裏腹に、電話を掛けてきた相手は別人であった。


「あれ。おかんやん。なんだろ?」


『『『おかんかい!!!』』』


「もしもし。おかん~?どしたん急に。話聞こか?」


『なんで悩み聞く姿勢なんだよ』

『どうせよくある生存確認の電話だろ』

『これノヴァくん本名バレしちゃうんじゃね?』


「おー。元気元気。飯?今食ってるところ。納豆ご飯。他?……あ~。実は最近、ちょっと仕事の関係でめっちゃお金使っちゃって…。給料日までたぶんほぼこれ一択だわ。いやいや、あのブラック企業はとっくに辞めたっつったろ?」


『可愛い声でちゃんと男の子な喋り方。地味にギャップ萌え』

『萌えるか???……まぁ萌えるか』

『ノヴァちゃん前の職場ブラックだったんだ…』


「いやまぁ。そりゃあクソ上司の為に実費で昼飯買いに行かされてたけど、別に食いっぱぐれてた訳じゃ……はい。安い肉すらまともに買えてませんでした…。いや大丈夫だって!?新しい職場はとても良い環境だしさ。毎日楽しいしっ!明日!給料日は明日だから!?仕送りせんでいいよ!?ただでさえうちは貧乏なんだから気にすんなって!アイツらの修学旅行代にでも当てろって!?今年だろ?」


『……おい俺はもう投げるぞ』

『投げるのか?今ここで!?』

『待機中に投げれんの?』

『ノヴァちゃんが設定してたら可能。でも初配信だし、設定してないんじゃないかな?』

『スパチャボタンないわ…(絶望)』


「はいよー。身体には気を付けるわ。んじゃ用事あるから切るぞ~。……ふぅ~…」


───突然のおかんからの電話で、俺の生活を聞いて仕送りすると言われて少々焦った。

 確かに今は配信機材の購入などで貯金もほとんど尽きてしまって、厳しい生活を強いられているが、あの大手VTuber事務所であるジュイロに入ったんだ。

 明日が給料日なのは嘘だが、本当の給料日にはあのブラック企業にいた頃よりもお金が貰えるはずだ。


 それに───


「妹たちの為に、大学に行けるくらいの稼ぎはしないとな…。兄貴として、先に産まれた人間の役目は果たさないと」


 天井を見上げながら、そんなことを呟く。

 俺の好きな漫画の主人公曰く、兄貴は後から産まれてくる妹や弟を守る為に先に産まれてくるらしい。


 俺はあのセリフが好きだ。

 面倒で、俺より背が大きくてウザったらしく思う時も多々あるが……数少ない俺の理解者で、味方だったんだからな。

 大切にしない理由なんてない。


「その為にも。初配信、転けずにしっかりやり通さなきゃな。……時間だな。さて、ごちそうさまでした!今日も納豆は最高だったぜ~♪」


 そうして意気揚々とパソコンの前に向かう。

 この日の為に買ったゲーミングチェア。これめっちゃ座り心地良いんだよな~。

 もうこのままパソコン前で飯食うかな?いや、それでキーボードに飯を溢すとかしたら嫌だな…。


「パソコンの画面を点けてと…。さて、画面を切り替え……うん?」


 点いた画面のコメント欄を見て、俺は首を傾げた。

 ライバーによって、待機画面でコメント欄を出したり出してなかったりするが、俺はとりあえず出していた。理由はない。いつも通りなんとなくだ。


 しかしそんなコメント欄が、なにやらざわついているのだ。

 『妹さんの為に頑張ってるんだね!』とか『今すぐ仕送りするからスパチャ機能を解放してくれー!』とか『ノヴァくんちゃんの納豆の歌で尊死し、お家事情で全身の水分が無くなった。推してやるから覚悟しろ』など。


 まるで今までの俺の独り言やおかんとのやり取りを聞いてたかのようなコメントに、戸惑いが隠せない。


「……………………ま、まさか……」


 そこで初めて気付いた。

 俺は。マイクをずっとオンにしたまま飯を食ったり、おかんと電話していたことを。


 ……やったわ…。


「初配信の初っぱなから超新星爆発(スーパーノヴァ)かましたーーー!?!?!?」


 それでもなんとか笑いに変えようと。配信事故のことを超新星爆発という比喩で表現した。


『事故を超新星爆発てwww』

『おもれぇなw』

『おもしれぇ男の娘!w』

『ノ俺笑』

『こーれジュイロ7年目にして、新人が箱内チャンネル登録者数トップ有り得るぞwww』

『拡散じゃーーー!!!』


 この日。

 『スハ・ノヴァ』『超新星爆発』『スーパーノヴァ』『ジュイロ期待の大型新人』『ブ○ーチ』がトゥイッターにトレンド入りした。

我ながら良いキャラデザな気がしてます。

リアルに似たようなキャラいたらごめんなさい…。

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