93 熱々の甘酒・久しぶりのお酒添え
明けましておめでとうございます
夕飯は無事に終わった、特にカボチャシチューとタルトタタンが好評だったぞ。
そして子供達は仲良く遊んでいるし、後は酒を飲もう。
最近はマリアも甘酒のお陰か多少の飲酒は許してくれているからな。
ってキャリが何か黒い物を持って来た?
「パパ、この子も飼っていい?」
「……この黒くてぷよぷよした、何処かで見た事がある様な物体は生き物なのか?」
「ああスマン、説明が遅れたけど前回の物々交換の後でウチのスパウンが分裂してな……そいつはその分裂した一体だ」
そうか、スライムは繁殖をせずに分裂して増えるのか。
って事はさっきキャリと話していたのはそいつの事らしい。
だがこいつがあのスライムと同じならば、ウチの生ゴミ事情が一気に解決する……反対する理由はない所か歓迎せねばなるまい。
「名前はどうする?」
「えっとね、この子はトーフ!」
スライムの名前は豆腐か……まあぷるぷるしてるって共通点はあるからいいか。
「お兄ちゃん、ウチのペットの名前が見事に食べ物しかないんだけど?」
「本当に食いしん坊ばかりだからなぁ……まあ覚えやすくていいじゃないか」
「という訳で我はスライムのトーフである……主の父上と叔母殿よ、宜しく頼む」
おいトーフ、いきなり殺人現場に向かう度に麻酔針を撃たれて眠らされてしまう探偵みたいなイケボで喋るんじゃねぇ。
それと事実ではあるが、まだ10代の可愛い妹を叔母と呼ぶのは止めてやれ。
「トーフちゃん、次に私を叔母さんって呼んだら塩漬けにするよ?」
「わ、解った……だから塩漬けは許して下さいお願いします!」
こいつはどんだけ塩漬けが嫌なんだ?
いや、あれはされるのが好きな奴なんて居ないとは思うけど。
「スライムは塩を与えると水分と魔力を排出して縮みますので、定期的にやらないとあっという間にそこの車みたいな大きさになってしまいますよ」
それは困るな……かといって塩漬けは可哀想だし塩を効かせた何かを食わせて調節しよう。
「因みに排出した液体は製薬師が買ってくれたりするけど……近くに居ないなら海に流した方がいい」
まあその液体とやらは塩まみれだろうからなぁ。
埋めたら植物に悪影響が出るだろうし、川に流す訳にもいかないか。
だがベーコン以外の資金源になる可能性があるなら製薬師を探してみるのもアリかもしれん。
「あ、それと我は味覚がないので食事は無機物でさえなければ何でも構わんぞ」
スライムって味覚ないのか……それであのスライムもワニの皮やら内臓、脂肪の臭いを気にせずに取り込めたんだな。
だが俺は味覚の有無で差別はせんぞ。
生ゴミの処理はして貰うけどな。
「ンナッ!」
「ヒャッ!」
「ウム、宜しく頼む」
挨拶も済んだ様だし、まあ仲良くやってくれ。
喧嘩したらマスタードの刑、トーフは塩漬けにするけどな。
「アマザケ美味しい!」
「熱いけど甘くて美味しい!」
酒を飲み始めると同時に子供達の方も甘酒を飲んで喜んでいる……
煮込むのに時間が掛かる上に元々マリアの為の甘酒だったんだが、まあ好評だしいいか。
「甘酒か……確かにこのコメ酒って日本酒みたいだし、それなら酒粕だってあるよな」
「米麹とお粥でも作れた筈ですが、酒粕から作った方が美味しいですからね」
米麹とお粥でも作れるとは知らなかったな……
確か可愛い妹が麹菌を手に入れてたから今度試しに作って貰おう。
多分だが甘酒は可愛い妹が作った方が美味いだろうし。
「しかしこうなると酒粕も欲しくなりますね」
「確かに、酒粕に漬けた鮭で味噌汁を作ると美味いからな」
なら次の物々交換には酒粕も必須だな……
これも大量に仕入れないとすぐになくなりそうだ。
ってか酒粕の味噌汁は粕汁って名前じゃなかったか?
「ねぇお兄ちゃん、回数を重ねる度に欲しい物が増えるけど……私とモモちゃんでスマホみたいな連絡手段を用意できないかな?」
「それはあたしも思いましたね」
まあ確かにあれば便利そうだし、俺と勇一の方は伝言して貰えば済むな……
俺は社畜時代を思い出してクソ上司をぶん殴りたくなりそうだから遠慮したいが。
「流石にそれはアカンわ」
夕飯にも来なかったから忙しいのかと思ったけど、結局来たんだなトゥール様。
「……やはり無理ですか」
「キュアちゃんやデストには覚えがあるやろ、そういう世界の逸脱は危険やねんで……まあそれ以上のメリットがあるんなら一考するんやけどな」
現状だと俺達の食生活に変化を出すぐらいしかないからな……
トゥール様はその変化をしょっちゅう味わっている気がするけど、まあ触れないでおこう。
というかお前と桃花は覚えがあるって、どんな危険な目に合ったんだ?
「メリットってどれぐらいの利益があるならいいんだ?」
「せやね……兄ちゃんとキュアちゃんが、日本の物資に頼らずにカレー屋を始められるぐらいの変化が見込めるんなら考えたるわ」
いや無理だろ、そもそも俺達は全員カレー粉を作れんぞ。
しかも真っ先に日本での買い出しを否定してるし。
「イチゴお姉ちゃーん、アマザケおかわり!」
「あ、ちょっと待っててね」
ここで可愛い妹が離脱か……子供達じゃコンロに乗せた鍋から甘酒を汲めないから仕方ないな。
それとトゥール様、その酒は俺のコップです。
「あーせやった、苺心ちゃんには後からお願いするけどな……ちょいとツァトゥに力を貸したって欲しいねん」
「あの残念様に力をですか……」
可愛い妹と桃花に何をさせるつもりなのかは気になるが、俺には止める手段がない……
「時にその残念様って何者なんだ?」
「ツァトゥ様な、俺を転生させてくれた恩神にあたるお方だよ」
そうか、つまり俺がこいつと再会できたのもその女神様のお陰って事だな。
なら会えた時には全力のステーキをおみまいしてやる。
「何でも最近、あの道場に通っとった子に目ぇ付けたらしゅうてなぁ……その子はヨグソ様の予言によると早ければ来年にはツァトゥの管理する世界に転移する運命らしいねん」
ヨグソ様……ああ、最高神の爺さんか。
あの食欲に圧倒されてたせいか名前が出て来なかった……言わないけど。
「因みにその……転移する門下生とは」
「キュアちゃんと苺心ちゃんが仲良ぉしとったやろ、あの子や」
例のカレーが好きな腐った女子とかいう、あの焼きリンゴばかり食ってた2人目の友達か。
来年の物々交換で再会するならカレーは無理だが焼きリンゴぐらいは作ってやろう。
一応シナモンパウダーを追加で頼んでおくか。
「……っちゅー訳で詳しい話は明日の朝にでも来るツァトゥに聞いたってな」
「解りました、そういう理由なら苺心ちゃんも嫌とは言わないでしょう」
むしろ嬉々として協力するだろう。
何をするかは解らんがその間は可愛い妹の好物を作ってやらねばなるまい。
「所でウメオ、ツマミが切れたぞ」
「……ベーコン焼いてやるからちょっと待ってろ」
何で夕飯をあれだけ食って酒もがぶ飲みしておきながら毎回ツマミが切れるんだ……
次は更に倍を仕込まねばならんか。
スライムのトーフが家族になりました




