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68 ダチョウステーキ・ダチョウソーセージ添え

さて、と……そろそろダチョウのステーキを焼くか。


どうせ来るだろうからアンカーの分も用意するとして……


「おい貴様、夕飯だが私とマントルの分も頼む」


ああ、領主も食うのか……って確かに罪人を引き渡すとか言ってたけど、幾らなんでも来るのが早過ぎねぇか?


捕まえたのはついさっきだぞ?どうやって連絡したんだ?


まあ事前に解っただけでも有難い。


「そういやお前には聞きたい事があるんだが?」


「トングとヘラなら本人達の希望で肉を食える様になるまで解体場で働く事になった、それが終わり次第グリルの補佐をして貰うつもりだ」


いや、確かにあの2人の処遇が聞きたかったんだが……まあいい。


しかし血の臭いで吐いちまう2人が解体場って、荒療治にも程がないか?


下手したら余計に肉が食えなくなっちまうぞ。


「……だが随分と優しいんだな、内通者の末路は斬首か追放かと思っていたんだが」


「奴等自身が何かをした訳ではないし、ヴィガンの連中に騙されていた被害者なのも事実、何より私が認めるぐらいには優秀だからな……ただし今回の襲撃で負傷した者達の治療費は奴等の賃金から引かせて貰う」


そうか、まあ生きてりゃその内いい事もあるだろ。


野菜狂信者を除いた怪我人は全員タープが無償で治していた様な気もするが……これは言うまい。


「……あいつ等が肉を食える様になったらケンタンに居る俺を訪ねる様に言っとけ、その時は美味い肉を焼いてやる」


「フッ、本当に変わった奴だな貴様は」


褒め言葉として受け取っておく。





思わぬ来客に手が止まってしまったが早く焼かねば夕飯に間に合わん。


っと、先に全員に言っておかないとならない事があった。


「あー、夕飯のダチョウもといスプリンステーキだが全員焼き加減はレアだぞ」


「え、他に選択肢はないんか?」


「ない」


これにはちゃんと理由がある。


ダチョウ肉は脂肪が殆どなくて筋も多い、煮込みならまだしもステーキだと固いんだ。


肉質はいつかのコンテストで焼いたグラスフェッドが割と近いが、それよりもたちが悪い。


グラスフェッドはミディアムレアまでなら柔らかく食えるがダチョウ肉だとミディアムレアの時点でフォークが刺せなくなる可能性もある。


勇一から貰った重曹を使えば多少は柔らかくなるが独特の臭みが肉に染みてしまう……これもダチョウ肉の欠点だな。


パイナップルがあれば美味さと柔らかさを両立できるんだが……あちこち探したけどなかったぜ。


タマネギでも柔らかくなるが、ダチョウの持ち味を損なう。


よってステーキで食うならレアしかない。


「何でそんな面倒な肉をステーキにしたがっとったんや?」


「確かに欠点が多く扱い辛い肉だが、ちゃんとそれに見合った味がある……ついでに言うと不味い肉という誤解を解くのもピットマスターの役目だからな」


何より可愛い妹は脂肪のないダチョウ肉が大好きなんだ。





よし、今度こそ始めるぞ。


今回は焼く時に溢れる肉汁も利用するからフライパンで焼く。


「マレスと苺心はサイドを頼むぞ、流石に今回ばかりはそこまで手が回らん」


「はーい、作る物はお任せでいいよね」


「解りました!」


ダチョウ肉をステーキ用にカット、仕上げにソースを掛けるから塩コショウは薄く最小限に、脂は使わず一気に両面を焼きあげる。


下手な油や脂じゃやはりダチョウの味が台無しになるからな……


両面に焼き目を付けたら火から離してゆっくりと内部を暖めて、アルミホイルで包んで休ませる。


こうすると肉汁が再び内部に吸収されてジューシーなステーキになる。


全員分のステーキを焼いたら次はソースだ。


肉汁の溜まったフライパンにラズベリーワインと生のラズベリーを入れて、弱火でラズベリーを潰しながら煮立てる。


ワインのアルコールが飛んだら可愛い妹が作ったラズベリーのジャムを加えてよく混ぜれば出来上がりだ。


後からアルミホイルに溜まった肉汁も加えて混ぜるけどな、勿体ないから。


「はい、サイドのインゲンマメ入りフルーツサラダは出来たよ」


お、インゲンマメとモンキーバナナにリンゴとラズベリーで作ったサラダか。


サラダらしくレタスは入っているがほぼフルーツ……キャリが好きそうなサラダだ。


「こっちも出来ました!」


マレスはチーズの匂いがするスープ……具はベーコンとキャベツだけらしいが中々美味そうだ。


本当に2人共腕を上げたなぁ。





「何やこの肉……噛んでも噛んでも汁がジュワッと溢れて来よるで!」


「鳥のお肉な筈なのに、ウシ肉の様な力強さがある……スプリンがこんなに美味しいなんて!」


「久しぶりのラズベリーソース、やっぱり美味しい!」


「サラダとスープも美味しい!」


ふぅ、疲れたがやはりダチョウ肉は美味い。


流石にこの街の住民全員に振る舞う気はないが、一部でも誤解が溶けたなら焼いた甲斐があったという物だ。


「成程、スプリンは卵だけでなく肉も美味かったのだな……今まで損をしていたな」


「損はこれから取り戻していけばいい、無論私も協力する」


「マントル……」


おいコラ、イチャイチャするなとは言わんが先に肉を食え。


冷めたら味が半減しちまうだろ。


「ウメオっち、この肉のおかわりお願いするっす!」


「ンナー!」


お前達はもう少しぐらい味わえや!





翌朝……罪人のル何たらの投獄は部下に任せて、領主はもう一泊するらしい。


そりゃお互いにようやく巡り会えたパートナーみたいだし、なるべく長くイチャコラしたいだろうけどな。


だが何で領主とアンカーの夕飯まで俺が作らねばならんのだ?


食いたいと言うなら拒みはせんが。


「……よし、マリネはいい感じに漬かったしネックも理想的な柔らかさだ」


残った部位は昨日の内に挽肉にしてソーセージにしたし、夕飯のメニューはこれでいい。


だがソーセージはいつかの巨大マルメターノにしようと思いきや可愛い妹の手によって10cm程度の長さで捻られてしまっていた……


まあ、今夜はトゥール様も来ると言ってたし流石にマレスやキャリにそんな目で見てしまいかねない物を食わせる訳にもいかんからな。


何よりアンカーにバレたら領主に殺されかねん。


グリル?あいつはロリババア同様に対象外だ。


「驚いたな……あれだけ頭の悪かったグリルが見事な字を書くとは、しかも計算は全問正解か」


「ヒドイっすよ街長!」


「私達に出来るのはここまで、流石に政治や運営に関しては口出しが出来ない」


「ああ、助かった……この分なら1週間もあれば引き継ぎは終わるだろう」


あのアンカーが匙を投げたというアホの子をそこまで教育するとは……タープは意外とやり手だったのか?


でも俺だってそのタープから字を教わっているんだが……


まさか俺はグリル以上のアホって事か?


「ウメオの頭は料理に全降りしとるさかい、しゃあないんちゃうか?」


タープ……慰めたいのか貶したいのかハッキリしてくれ。


悪意がないのだけは解るけど。





よし、夕飯の時間だな。


ソーセージは直火で炙りつつ、ネックをじっくりコトコト煮込み、むね肉を焼く。


時々コンロに蓋をしながらゆっくりと火を通し仕上がりを均一に、待ってる間は酒を飲む、この時間が堪らなく楽しいんだ。


「パパ、まだ焼けないの?」


「ああ、もう少しだけ待っててくれよ」


「はーい!」


まあ、可愛い娘がお腹を空かせてしまうのが唯一の悩み所だな。


「お兄ちゃん、タマネギのみじん切りは水にさらすの?」


「いや、今回は空気に触れさせておけばいい」


「師匠、パンを沢山買って来ました!」


「よし、それはホットドッグにするから中心を開いておいてくれ」


さて、そろそろ焼けるな。





焼いたソーセージは開いたコッペパンに挟んで、タマネギを添えつつ粒マスタードとケチャップを掛けて食う。


基本的にブタ肉のみのソーセージか、ウシとブタの合挽き肉のソーセージで作る物だがダチョウソーセージでもかなりの美味さがある。


ネック肉のワイン煮込みは皿に盛ったら乾燥パセリを振りかけ、ソテーはこのまま齧るのが一番だ。


「おお!このやけに酸っぱくて辛いお肉が柔らかくて美味しいっす!」


「パンで挟んだお肉が美味しい!」


「はぁぁ……トロットロのネック肉、美味しぃ」


ダチョウ肉を料理するのはほぼ4年振りだったが、本当に作って良かったぜ。


次はまた来年だろうが……まあ焼く事になるだろうな。


だって美味いんだから。


「流石は兄ちゃんやなぁ、ダニエルのマリネソテーと殆ど同じ味やんか!」


「……いや、本当にビックリするから唐突に現れるのは止めて下さいよトゥール様」


しかもトゥール様が食ってるのは俺の分なんですがそれは……


って領主にアンカー、グリルまで跪かなくても構わんぞ?


トゥール様は美味い物さえあれば何でも許すから。


「流石に許すんも限度はあるで?」


「え、限度あったんですか?」


「イグにしろ兄ちゃんにしろ、ウチの扱いがぞんざい過ぎへん?……まあええわ」





ふぅ、終わったか。


明日はまた買い物をして、それから帰ろう。


特にラズベリーワインは限界まで買い込むぞ。


「ああせやった、兄ちゃん……例の物々交換の日取りが決まったで」


「お、ようやくですか」


「この世界の時間で2週間後にトゥグアの世界でやって貰うわ……期間は一泊二日、定員は6人までやで」


俺と可愛い妹は確定として嫁達と娘にマレスで丁度6人だな。


確かシェラフの居る街なら今でも漁をしている筈だからアンチョビを作りに行って、オヤッサンからカボチャを貰いつつロリババアの所に行ってサツマイモを買わないと。


いや、サツマイモは帰りに寄って買えばいいか。


「トゥール様、ベーコンはお留守番しなきゃダメ?」


「安心しぃや、キャリが行くならベーコンもちゃんと一緒に行けるで」


「そっか!よかったね、ベーコン!」


「ンナー!」


猫は人数にカウントされないのか……ってそりゃそうか。


そういや野菜狂信者がベーコンを幻獣がどうたら言ってたが……トゥール様なら何か知ってるだろうか?


「兄ちゃんのその疑問、ウチじゃ説明は無理や……せやから物々交換の時に詳しい奴、ハイドラの眷族から聞いたってや」


「……解りました」

通販で買ったダチョウソーセージが美味すぎる……

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