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67 ラズベリーワイン・激辛ベラバーガー添え

さて、ダチョウ肉の血抜きは終わったな。


まずはトゥール様にも食わせるマリネソテーの仕込みから始めよう。


ダチョウのむね肉は横半分にカットしてから布を被せてフライパンの底で叩き、フォークで乱雑に刺す。


終わったらタマネギの薄切りを敷き詰めたパットに並べて……調味料を合わせて漬ける。


使うのは醤油にレモン果汁を加えて作ったポン酢、トゥール様に貰ったソース、特別に許可を貰ったチリソース、コメ酒……そして可愛い妹の作ったショウガを漬けた後の甘酢。


ここに風味付けの為に唐辛子の輪切りとニンニクの薄切りを少量浮かべておいてラップをして……冷蔵庫はないからクーラーボックスに氷を詰めて入れておこう。


漬け時間は24から30時間、早くても明日にならなきゃ食えん。


こいつは本来ならガチョウのむね肉で作る料理だが、ダチョウのむね肉で作っても美味いと書いてある。


ならガチョウを見つけ次第また作ってもいいな。




よし、次は可愛い妹が楽しみにしているネック肉だ。


皮を剥いだ状態のネック肉は骨付きのまま筒切りにして軽く炙ってやる。


その間に寸胴鍋でタマネギを炒めて、イチゴとレモンのワインを注いでアルコールを飛ばしておこう。


焼き目が付いたら鍋に突っ込んでタマネギとワインを追加しつつ、塩コショウ、ガーリックパウダーで味付けしながらじっくりコトコト煮込んで、と。


このまま半日もすればトロリとした食感になって美味いが、あえて途中で火から下ろし翌朝から再び煮込む。


こうすると肉はホロホロ、ゼラチンがプルプルという魅惑的な口当たりになる。


更に肉の隅々にまで味が染みる。





明日の下拵えはこれで良し、と。


昼はマレスと可愛い妹に任せて……たまには昼から酒でも飲むか。


「ほい、ここ読んでみ」


「えっと、アカサタナハマヤワラ……」


「惜しいなぁ、ワとラが逆や」


お、タープがキャリとグリルに字を教えてるのか。


本当にウナギが絡まってる様にしか見えんが……違いが解らん。


ふぅ、ここでしか買えないというラズベリーワインとやらを試してみたが中々美味いな。


夕飯のダチョウステーキにはイチゴのワインを使おうと思っていたが、このラズベリーワインの方が良さそうだ。


そうと決まれば追加を買わねば。


「ウメオ、買い物なら私も行く」


「ンナー」


「よし、行こう」


ってベーコンまで来るつもり……まあ可愛い妹が近くに居るから大丈夫か。


それにグリルも中々やるらしいし、何とかなるだろ。





「……よし、ラズベリーワインと明日のサイド用の豆は買えたな」


「バナの実も沢山買えた、これはイチゴに料理して貰う」


またあのシカゴピザパイを作らせると申したか?


……前もって解ったのは有難い、明日の昼からコーヒーを煮出しておかねば。


「ンナー?」


「ああ、ベーコンは苺心のスイーツを見た事がないのか」


「ベーコンなら普通に食べられる筈、問題ない」


何なら俺の取り分から分けてもいい。


本当に可愛い妹のスイーツは味はいいのに量がえげつないからなぁ。


「ンナッ!ンナー!」


ん?


俺の頭に乗ってペシペシするのはいいが爪を立てるな、痛いから。


「ウメオ、あれ」


あれ……あそこに居るのはトングとヘラか?


あの方向にあるのはダチョウを捕まえに行った場所……まさか俺の想像が当たっちまったパターンか?


「……マリアは今すぐ苺心とアンカーを呼んで来てくれ、あいつ等が向かうだろう詳しい場所はマレスが解る筈だ」


「解った」


「ベーコンは……とりあえず静かに着いてこい」


「ンナッ!」


俺は全く戦えないからな……


こいつはキャリの言う事なら無条件に従うのに俺だと聞いたり聞かなかったりの落差が激しいが、まあ風の魔法が使えるというこいつが居た方が安心だ。






「………!」


「……、…………!」


やはりここだったか、誰かと話というより怒鳴り合っているが詳しい内容までは解らん。


相手は金髪青眼……野菜狂信者だな。


もう少し近くに移動しておくか。


「……、誰だ!?」


ヤバッ、近づき過ぎたか!


「ンナー!」


「……何だ猫か」


ナイスだベーコン、夕飯はちょっと豪勢に肉は大きめにしてやるから楽しみにしていろ。


何ならベーコンを山盛りにしてやってもいい。


「と、とにかく私達は言われた役目を果たしました!」


「早くハイエルフに戻る方法を教えて下さい!」


あいつ等は何を言ってるんだ?


いくら魔法のある世界だからってハイエルフがダークエルフに、またはその逆になるなんて事がある訳ないだろうに。


それこそトゥール様ならあるいは……ぐらいか?


「ああ、お前達は呪いでハイエルフからダークエルフにさせられたと、そう教えていたな……あれは嘘だ」


「「……え?」」


だろうな。


少し考えれば解るだろう事を信じるとは……憐れだとは思うが同情は出来ん。


「お前達は生まれて間もない頃、我等に売られたのだよ……たったの100バランでな」


やっすいな!


別に買う気はないしその予定もないが……胸糞悪い話だ。


「まあ、何故か代金を受け取らずに行方不明になってしまった様だがそれはどうでもいい……お前達はよく働いた、その褒美に本当の両親の元へ送ってやろう」


つまりあいつ等の本当の両親はもうこの世に居ないって事か。


はぁ、見殺しにするのも後味が悪いし仕方ない。


「ベーコン、やれ!」


「ンナー!」


おお、ちょっと砂ぼこりを巻き上げるぐらいを期待していたら風で作ったボールっぽい何かをぶち当てやがった。


よし、今の内に2人を……


「逃がさん!」


ゲッ、もう1人居やがった……またお前かよ!


激辛バッファローウィングを食ったせいでタラコ唇になりながら、しつこいぞ!


「ンナァ……」


ベーコンはもう限界か……まあ子猫だから仕方ない。


魔法を使うには魔力が必要だが子供じゃ容量もたかが知れてるだろうからなぁ。


ましてや猫だし。


「アメーラ、貴様の個人的な恨みもあるだろうがその猫だけは生かしておけ、そいつは幻獣である可能性が高い」


こいつ、あの魔法をモロに喰らったのにもうピンピンしてやがる!


「安心しろルビンズ、私が恨んでいるのはその男だけだ」


幻獣……何の事だ?


こいつは我が家の癒し系ペットにして可愛い娘の友達でマスコットだ、渡す訳がない。


というか……


「お前、アメーバって名前だったのか?」


「アメーラだ!確かに今まで名乗りはしなかったが間違えるな!」


「で、俺達をどうするつもりなんだダメンズさんよ……」


「ルビンズだ!貴様わざと間違えてるんじゃなかろうな!」


そんなの、わざと間違えてるに決まってんだろうが。


俺はお前達と仲良くするつもりは一切ないからな。





さて、時間稼ぎもそろそろ限界だが……アンカー達はまだか?


ん?あそこに見えるのは……


「積年の恨み、今こそ晴らさせて貰うぞ!」


ダメ元だが、やるしかない!


「スゥ、(ピィーッ)」


「な、何だこの音は……グハァッ!」


「こ、こいつ等はなぜ急に集まってグハァッ!」


ハハハ、時速70キロで走れるダチョウの助走を付けたキックはさぞ効くだろう。


牧場長が散り散りになったダチョウを集めるのに使っていた口笛……こっそりと練習していた甲斐があったぜ。


ただ飼育しているならまだしも、この世界の野生のダチョウに通じるかどうかは賭けだったが上手く行って良かった。


「お前等、スプリンに蹴られたくなけりゃそこで伏せてろ!」


「「は、はい!」」


騙されていたとはいえ、やった事を許すかどうかは現街長のアンカーが決める事だからな。


俺だと拳骨一発でなぁなぁにしかねん。





暴れられるだけ暴れたダチョウ共が散ればボロボロになった野菜狂信者の2人しか残らなかった。


ダチョウの蹴りをモロに受けてたし、下手したら骨にヒビが入ってる可能性はあるが自業自得という奴だろう。


まあいつも通りに肉は食わせるが、カインズとかいう奴だけはダークエルフ殺しの罪に問われるだろうとアンカーが言っていた。


今は幽閉して領主が到着次第、引き渡す手筈だ。


いつもの奴は食わせたその場で解放するけどな、閉じ込めても無駄だと解ってるし。


「それで、この2人には何を食べさせるの?」


「夕飯の時間が迫っているから短時間で作れるベラバーガーだ、という訳で作り置きしておいたバンズを頼む」


「うわぁ……流石に可哀想だとは思うけど、やった事を考えれば自業自得だね」


「なぁイチゴ、ベラバーガーって何なん?」


「イチゴの反応を見る限り、美味しそうには聞こえなくて逆に気になる」


失礼な、こいつの味自体は悪くないぞ。


それに非常に簡単に、タープでも怪我をする事なく作れる物だ。


脂身を徹底的に取り除いたウシの赤身を挽肉にして、1つまみの塩とみじん切りにした大量の唐辛子を合わせて軽く捏ねて……


ミカン大にちぎったら1掴みの粒のままのコショウを混ぜてから丸めて平らにして、上にたっぷりとコショウを惹いて、バンズで挟めば出来上がりだ。


「これがベラバーガーだ」


「えっ……それ、肉が生やんか」


「生でもタルタルステーキやローストビーフみたいに、美味しいかもしれない……でも、口にするのは勇気が要る」


まあ、簡単に説明するならタルタルステーキを挟んだハンバーガーという認識で間違ってはいない。


微妙に違う所はあるが細かい部分は気にするな。


因みに味付けが激辛になっているのは個人的にこの2人がムカついたからだ。


「お、おい貴様!それにはまた大量のハラペを入れてるじゃないか!」


当たり前だろ、何度も何度も現れては俺の楽しみであるバーベキューを邪魔しやがって。


今後は現れる度に辛味を増やしてやるし、今回も追加で丸の唐辛子(ハラペ)を2本ぐらい入れて食わせてやろう。


そして翌朝に地獄を味わえ。


「という訳でアンカー、また食わせるのを手伝ってくれ」


「いいだろう」


「フガッ!フガーッ!」





悪は滅びた。


ゲインズは簀巻きにして閉じ込めたし、いつもの奴は解放したからこれで一段落だな。


まあバインズはダチョウの蹴りで足の骨がいかれたらしいから逃げられんだろうけど。


さて、余ったベラバーガーを食いながら夕飯の準備を……


「ふぉーっ、このベラバーガーってのピリッと辛くて美味しいっすね!丸ごとコショウのカリッとした歯触りもいい感じっす!」


「ふむ、この辛味がウシ肉の美味さを際立たせているな」


おいグリルとアンカー、それは野菜狂信者用に作った激辛なんだが……何で平気で食えるんだ?


確かにマリアはカーニズには辛い物が多いと言ってたけど、まさか俺より辛味に強いのか?


いや、美味しく食えるんならそれでいいけど。


「何でやろ、なくなった途端にどんな味なんか気になってもうた」


「解る、ウメオの料理はどれも美味しいから、今更食べたくなった」


仕方ない、オヤツ代わりに辛味を控え目にして作ってやるか。

市販の挽肉でベラバーガー作ると脂身が口に残るから注意

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