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09 鮭のちゃんちゃん焼き・日本酒(?)添え

朝になって例の肉バーガーを改良しようと思っていたが……


「ソース味ならマヨネーズ付ければいいんじゃない?お好み焼きみたいに」という、可愛い妹の一言を実践してみたらこれ以上手を入れる余地がない味に仕上がった。


マリアも絶賛していたし、タープなんて昇天しかけたくらいだ。


そういえば尊敬するピットマスターもあのサンドイッチは外側の肉にマヨネーズを塗っていたっけ……まさに盲点だったよ。


問題は肝心のマヨネーズが残り少ないって事なんだが……コンテストまで持つのか?


「というか可愛い妹よ……あれだけ太るのを気にしていた癖に自らカロリーを増やすのか?」


「だってそれ、私が食べる訳じゃないし」


それはそれで酷いが、事実ではあるな……


個人的には食って欲しい所だが、カロリー爆弾であるのは否定出来んので無理強いはすまい。





あれだけ数をこなしたお陰かベーコン作りもスムーズに進んだ。


マリアから頼まれた分に俺が使う分も含めて夕方になる前には全て終わらせられたよ。


まあ今回マリアが頼んだのは20頭分だけだったからその分早かったのもあるな。


何にせよこれで当分はベーコンに困らないだろう……タープがつまみ食いしなければ。


という訳で今回は俺がマリアの屋台まで運んでやった。


「ほれ、今回のベーコン」


「ありがとう」


マリアは明日には店を畳んでしまうらしいからな……作るのはこれが最後だろう。


畳んだ後は俺達に同行するみたいだが。


「それとこれ、渡すのを忘れていた報酬……この街でのベーコンの売上金の半分、8500バラン」


忘れてたのかよ……てっきりあの頬へのキスが報酬かと思ってたわ。


それはそれで充分に見合う報酬だったと思うが、思い返してみればあの時は前払いとか言ってたな。


確かベーコンは昨日までの合計で80頭分は作って、500バランで売ってたらしいから……既に34ブロックも売れたのか。


何にせよ今日の宿代は確保出来たな。


「ベーコンはケンタン族には売れないと思うから、次はコンテストの後でカーニズ族に売るつもり」


そこはコンテストの前じゃないんだな……


ケンタン族は領土が燃やされたから買い物所じゃないし、ヴィガン族は野菜狂信者らしいから……まあ買われないだろう。


あ、野菜狂信者に食わせる肉も考えないとな……


魚も色々とあったが日持ちする物はなかったし、鰹節は手に入れたがやはり肉で勝負するべきか。


その方がピットマスターである俺らしいし。


「……ウメオ、何か悩んでる?」


「ん?ああ……ちょっとした厄介事があってな、頭が痛い」


実際マジで頭が痛くなるぞ……知恵熱が出たっておかしくないレベルの難題だ。


「ウメオが頭を抱える厄介事……気になる、教えて」


「いや、これはごく個人的な事だから……」


ってマリアさん?


人前で唐突に抱き付くのは止めて頂けませんかね?


薄いのに柔らかい胸部の感触がダイレクトに腕に伝わってドキドキしてあああーっ!?


「教えてくれないならこのまま、離れない」


止めて、俺の心臓が破裂しちゃうから、マジで止めて!


後、周囲の野郎共の視線が俺を刺し殺す勢いで降り注いでて恐い!


「教えて」


「…………はい」


うん、仮にマリアと結婚……まで行けるとは思えんが、万一で付き合えたとしても絶対勝てないわ。


別に勝つ気はないが。






人に聞かれて困る内容ではない物の嫉妬の視線が痛かったからマリアのテントに移動した。


移動中もずっとくっ付いてて、ジロジロ見られて歩き辛かったが……何故か幸せな気分だった。


「……とまあ、そんな事があった訳だ」


「把握した……このベーコンを見て、別世界の知識で作られたと聞けば納得せざるを得ない」


結局全部話してしまった……別に秘密にしてた訳でもないけど、ベーコンで納得するのはどうなんだ?


この世界じゃ迷い人は珍しくはあっても知られていない訳ではないらしいが、それにしてもなぁ。


「ヴィガン族に肉か魚を食べさせる、それも1人や2人じゃなく大勢……確かに難題、ウメオが悩むのも当たり前」


解ってくれるか。


女神様も何で俺に振ったのやら……確かにこの世界にはない料理を作れるだろうが、俺はその道のプロって訳じゃないぞ。


「聞いた以上は協力する……肉の仕入れなら私に任せて」


「ありがとう……正直相場とか解らんから助かる」


商人のマリアならその辺は信用出来る。


タープは……信頼はしてるんだが何処か抜けてる所があるし、ベーコンが絡むとポンコツになるからな。


ってこれじゃ俺がタープをポンコツにした、って聞こえてしまうじゃないか……


タープは確実に俺に出会う前からポンコツだった……筈だ。


異論はあっても可能な限り聞きたくない。


「タープは言ってないと思うから教えるけど……この世界、一夫二妻か二夫一妻という制度で異種族婚も許されている、でも同性婚と近親婚は許されていない」


異世界物だとハーレムなんかも定番だった気がするんだが……この世界じゃ2人までなんだな。


まあ考えてみれば結婚したら養う必要があるし、嫁を増やせばその分出費も増える……余程の金持ちでもなきゃ破産しちまうか。


途端に現実を突き付けられた気分だが日本に比べりゃ優しい方ではある。


うん、ますます日本に帰る気持ちが失せて来た。


それと俺は男や可愛い妹と結婚したいとは思っていないからな?


「ウメオは元の世界、帰りたいの?」


「いや、全然、全く、これっぽっちも帰りたいとは思わん」


「……そこまで断言するとは思ってなかった」


「正直、故郷で大事なのは苺心だけだからな……その本人もこの世界に来ている以上未練はない」


心残りがあるとすれば俺をコキ使っていた元上司を殴り足りなかった事と、尊敬するピットマスター(故人)が出版したレシピ本を置いて来てしまった事ぐらいだ。


自由に行き来できるなら調味料や燻製用に茶葉を買いに行きたいとは思うが。


後はまあ、可愛い妹がどうしたいかだな。


「でも、良かった……私はウメオと長い付き合いを望んでいる」


ベーコンが売れるからだよな、解っているさ。


それでもマリアみたいな美人なら歓迎するしかないじゃないか。





さて、可愛い妹とタープが戻って来た所でそろそろ夕飯を作るか。


昨日が肉まみれだったから今回は魚にする。


料理するのはタダで貰えるイワシと市場で見付けた蛤、そして半身で5バランだったサーモンだ。


一応マリアに魚は平気か聞いてみたが、行商を始めて長いしトウモロコシ以外なら何でも食べられるそうだ。


「って、何でマリアまで食う事になってるんだかなぁ」


「ウメオの料理、美味しいのが悪い」


何で美味い物を作って責められなきゃならんのだ?


まあいい、とりあえず作るか。


イワシは3枚に下ろして小麦粉を纏わせたらカラッと揚げる、これは塩を振るだけでいい。


蛤はそのまま炭火で焼いて、貝殻がパカッと開いた所にバターと醤油を垂らす。


何なら醤油も掛けずにそのまま食ったって美味い。


そしてサーモン……半身を更に横半分にカットして頭側を使う。


尻尾側は切り身にしてから塩を降っておいて、朝飯の塩焼きにしよう。


鉄板にバターを落として、刻んだベーコンとありったけのキャベツを炒めて、しんなりした所で半身のままなサーモンを包んで、蓋をしてと。


その間に味噌と醤油、オレンジジュース、ガーリックパウダーをいい感じにブレンドして……サーモンに火が通ったらこれで味付けする。


後は調味料が沸騰して香りが出ればちゃんちゃん焼きの出来上がり……野菜がキャベツしかないのはこれしかなかったからだ、許せ。


こいつはちょいと行儀が悪いがサーモンの身と皮を毟り取りながら食うのが美味いんだ。


何より鮭の皮は食べない主義の可愛い妹が居ても残さず食べる為の措置でもある。


美味いんだけどな……鮭の皮。





失敗したな……蛤を食ってたらビールか日本酒が飲みたくなってきた。


だが今あるのはイチゴのワインだけ……これは蛤に合わん。


「このハマ、美味しい……コメ酒にとても合う」


「なぁイチゴ、そんな合うんか?ウチ、お酒を美味い思うた事ないんやけど」


「いや、私まだ未成年だから飲んだ事ないし……」


タープは明日ベーコン抜きにするからいいとしてコメ酒?


コメの酒……日本酒か?


解らん事は聞くに限るな。


「あーマリア、そのコメ酒って何だ?」


「昔、迷い人がカーニズ族にだけ作り方を教えたと言われているお酒……甘いコメから作っているのに、辛口でとても美味しい」


成程、間違いなく日本酒だわ。


カーニズ族の領土へ行く理由が増えたが……出来れば今すぐ欲しい。


具体的には蛤が無くなる前に飲みたい。


「そういやカーニズ族は肉の他はコメっちゅー野菜を好んで食っとったなぁ……コメは美味いんやけどコメ酒は好かんわ」


タープは下戸なのか子供舌なのか……間違いなく後者だな。


「ウメオも、飲んでみる?」


「是非!」


杯ではなくコップで飲むのか……まあ風情やら何やらはこの際どうでもいいや。


蛤を咀嚼して、酒をグイッと……飲み込んだら殻に溜まったツユを啜って再び酒、これが美味いんだ。


「ふぅ……こりゃ美味い酒だ!」


欠点があるとすれば無限に蛤が食えてしまう所だな。


もっと仕入れておけば良かった。


「やっぱり……ウメオは味が解る人」


「これならこっちのイワシにも合う筈だが……イケるな」


「サーモンにも合う……美味しい」


やはり日本酒……もとい、コメ酒は魚に良く合うな。


しかも美人のお酌付き、幾らでも飲める!


「酒ってそんな美味いんかなぁ?」


「さぁ……解んない」






翌朝……俺とマリアは仲良く二日酔いになった。


久しぶりの日本酒だったのもあって飲み過ぎたか?


「……飲み過ぎた、でも後悔はしていない」


「……人は何故、こうなると解っていながら酒を飲むんだろうな?」


「……それは哲学、永遠の謎、解き明かす事の叶わぬ難題」


なお、朝飯は苺心が作ってくれたシカゴピザみたいなアップルパイだった。


二日酔いの胃袋には非常に重たい一撃となり仲良く夕方まで寝込む羽目になったよ。


それはそうとマリアさんや……俺を抱き枕にするのは止めて頂けませんかね?


頭と胃袋が痛む中で心臓がバクバクして眠れないんですが……


いや、嬉しいし振り払う気は一切ないけど。

鮭じゃなくて羊肉で作っても美味しい

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