08 BBQ式肉バーガー・BBQ式スシ添え
マリアの頼みを引き受けた翌朝……頬の感触を思い出しては顔が熱くなって寝れなかった。
お陰で完全に徹夜してしまったが、まあ一晩ぐらいなら問題はない。
ブラック企業に勤めてた時は4日連続で徹夜も珍しくなかったからな……やはりあのクズ上司はもう500~600発ぐらい殴っておくべきだった。
って最早二度と会う事のない奴はどうでもいい、今日も元気にベーコン作りだ。
今回はマリアが追加で持ってきた塩漬け肉と、塩水に漬けていた牛バラ肉を燻製にする。
因みに先に渡したベーコンは早くも売れ始めているらしい……マジか?
「お兄ちゃん、そろそろ何か売らないとお金が尽きそうなんだけど……」
それこそマジか!?
まあ考えてみれば風呂の為にちょっとお高い宿に泊まっているからな。
因みにこの世界は混浴という文化はあるそうだがこの宿にそんなサービスがなかった。
いや、最初から期待はしてなかったけどな?
そもそもタープやマリアはまだしも、苺心は実の妹だから手は出さんぞ。
「あー、それならコンロを貸してやるから苺心のお菓子を売ってみるか?試しに作ってみた酵母も使っていいぞ」
因みに作った酵母とは水と小麦粉で出来る天然酵母という奴で、教会で見付けた小麦粉から作ってみた。
この酵母で作った生地はピザなんかに向いていて、チーズを見付けたら肉たっぷりのピザにしようと思っていたんだが仕方ない。
ピザは専用の釜かオーブンで焼いた方が美味いのは確かだが、バーベキューコンロで焼いても中々の物だ。
コンロなら焼き具合を確認しながらチーズの追加も出来るからな……マンガやアニメでもなきゃ見れない伸びるチーズだって再現できるぞ。
勿論、チーズを大量に使う必要があるけどな!
「えっと、お砂糖もなくなりそうだけどいいの?」
「……この世界の砂糖って幾らぐらいするんだ?」
「あー……砂糖は1キロで20バランやね」
日本円にしたらキロで二千円か……たっか!?
まあ仕方ない、可愛い妹がお菓子を作る為だ……
「ほれ100バラン、これで砂糖を追加してから始めろ」
「あ、うん……ありがと」
これで財布には50バラン、宿に二泊出来る金しか残ってない……少し酒を買い過ぎたな。
だが明日は塩漬けにした豚バラ肉をベーコンにしなきゃならんしマリアからの追加もあるだろうからな……商売は明後日からでないと出来ん。
「ウメオ、ウチには?」
「……ほれ、ベーコンの切れ端」
「よっしゃ!」
渡しておいて何だがそれでいいのかお前は……
タープが美人なのかペットなのか、時々解らなくなるのは俺だけか?
夕方……ようやく全部を燻せたぞ。
しかしコンロを持って行った苺心達はまだ戻って来てないから夕飯作りが出来ん……どうした物か。
「ウメオ、出来てる?」
「マリアか……丁度終わった所だ、明日の朝には食べられるぞ」
ほれ預かった塩漬け肉で作ったベーコン50頭分。
作っておいて何だが何処からこんなに仕入れたんだろうな?
「ん、ありがとう……そういえばウメオ達はケンタン族の領土から来たって聞いたけど、合ってる?」
「ああ、そうだが……それがどうかしたか?」
「私がこの街で商売するのは後2日、次はケンタン族の領土に緑を届けに行く予定……一緒に行っていい?」
後2日ならベーコン作りは明日で終わりそうだな……助かった。
最低でも後1回は商売が出来る……そして酒を買える。
「俺は構わんが苺心とタープが何て言うかが解らんな……」
まあ緑は緑色の水晶の事だろうから嫌とは言わんだろうが。
「ついでに、ウメオがコンテストから逃げない様に見張るのも目的」
「いや逃げないからな?」
誰よりもバーベキューを愛する俺が肉から逃げる訳がないだろ。
何よりマリアみたいな美人の頼みを断る訳がない。
「ならコンテストに出す肉料理……試作品で構わない、食べさせて」
こいつ……タダ飯が本当の目的なんじゃないか?
試作はした方がいいのは間違いないが……今はコンロがない。
「作ってやりたいのは山々だがコンロは可愛い妹が使っているし、懐が寂しくて肉が買えん」
「肉は私が用意する、だから作って」
「……焼くのは苺心達が帰って来るまで待ってろ、そうじゃなきゃ焼けないから」
「解った」
さて、と……
マリアに用意して貰ったのはウシのランプ肉、ブタの肩肉、ニワのムネ肉。
それに昨日作ったイノバラベーコンの薄切りと……塩茹でして粗めに潰したジャガイモ、みじん切りにしたタマネギ、各種香辛料だ。
まずは手頃な台にアルミホイルを敷いてベーコンをキッチリと、隙間なく並べてっと。
その上に潰したジャガイモを敷いて、塩コショウとガーリックパウダーを振り掛けておく。
ブタの肩肉をスライスしてからひたすら叩いてミンチにして……タマネギとパプリカパウダー、ナツメグを入れて粘りが出るまで捏ねたらジャガイモの上に敷く。
ニワのムネ肉は皮を剥いだらソーセージぐらいのサイズに切って……ウシのランプ肉も同じサイズに合わせて切って、胡椒と醤油で和え物みたいに味付けしておく。
それ等をミンチにした肉の上……の中心に並べて、ジンジャーパウダーと乾燥パセリを振り掛けて、巻き寿司の要領でキツめに巻いてやる。
よし、これをこのまま5cm幅に切って、アルミホイルを剥がして……次は焼くんだがコンロはまだか?
「ただいまー」
「今回もぎょーさん売れたでー」
ナイスなタイミングだ。
炭は片方に寄せて着火して、火のない方に乗せて蓋をしてっと。
5分したら様子を見つつ醤油を塗ったらひっくり返して、また蓋をする。
10分経ったら醤油を塗ってひっくり返す……よし。
ちゃんと中まで火が通ったら火のある方に移して、両面に軽く焦げ目を付ければ出来上がりだ。
「これがコンテスト用の料理、【肉スシバーグのベーコン包み】だ!」
「成程、いかにもな肉料理……凄い」
「コンテストって何や?でもこれは美味そうやな」
そういやタープと可愛い妹にはまだ話してなかったな……
まあ説明は夕飯の後でいいだろ。
「お兄ちゃん……カロリーって言葉、知ってる?」
「待て、可愛い妹よ……まず鞭を構えながら迫るのは止めようか?」
俺はドMな趣味や性癖は持ち合わせていないんだ!
ちゃんと可愛い妹の為に別の料理を用意するから!
可愛い妹にはイワシの塩焼きとタマネギの薄切り、スライスしたトマトを小麦粉を薄く伸ばしながら焼いた皮で包んで食べるクレープを作ってやったが……
うん、喜んで食ってるな……助かった。
今のうちに試食するか。
「確かに美味しいし、食べやすい……でも、イモの存在感が肉らしさを損なわせる」
むぅ……ジャガイモには肉汁を受け止める役目があるんだが、逆にカーニズ族の求める肉らしさを失わせていたか。
やはり試作したのは正解だった。
「こんな美味いのにアカンの?」
「どうやらアカンらしい……残りは全部食ってもいいぞ」
「ほな頂くで!」
本気で全部食う気か?
ま、無駄にするよりはいいか。
なら次は……
ニワムネ肉を半分に開いて叩いて、小麦粉、溶き卵、コッペパンを乾燥させて砕いたパン粉を纏わせて焼いて……
ウシのランプ肉はミディアムのステーキに、ブタ肩肉は生姜焼きにするぐらいの薄切りにしてベーコンと一緒に焼いてやる。
ついでにタマネギを薄くスライスしておこう。
全部焼けたら下から順にニワムネ、ブタ肩、ベーコン、ステーキ、タマネギ、ブタ肩、ベーコン、ニワムネ……よし。
味付けはステーキに振った塩コショウとガーリックパウダー、ベーコンのみだが充分の筈だ。
「これは【肉バーガー】という、俺の故郷では特別な日にだけ作られていた料理だが……」
某ハンバーガーショップが肉の日にだけ売り出す肉バーガーという物を手本に、俺が尊敬するピットマスター(故人)が作っていた、肉でベーコンを挟むサンドイッチも参考にさせて貰った。
「まさに肉、確かに美味しい……でも、味が薄い」
味が薄いか……しかしこれ以上塩を増やすと逆に塩辛くなるからな。
醤油も同様だし、だからって砂糖を使う訳にもいかん。
どうした物か……
「これも美味いやん、仕上げにソースでも付けたらもっとイケるんちゃうか?」
おいタープ、あの肉を食い尽くしておきながら……まだ食うのか?
しかし今は藁にもすがる気持ちで試してみるか。
幸いソースなら女神様が少しだけ分けてくれたし。
「……私はこの味を求めていた」
「んー、やっぱイケるやん!」
うん、ソースの量に注意すれば確かに美味いな。
とはいえ今の俺の胃袋には重すぎた……明日はアッサリ目のメニューにしよう。
試食が終わって、後はあの肉バーガーを改良しつつ試作すればいいだろうとなって……可愛い妹とタープに事情の説明をした。
「コンテスト?ええなぁ……賞金はなさそうやけど」
「つまりは人助けでしょ?いいと思うよ」
割とアッサリ賛成してくれたな……
いや、助かったけど。
元にしたのはモ○バーガーとBBQPB




