表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猟犬と転移者  作者: タンナファクルー
第三章 指揮者は命を動かす
32/42

第28話 先導

中村遥香は木に手を向けた。


視界の端に文字がある。


【ギフト:爆裂】


木が爆ぜた。


遅れて音が来る。


幹が抉れる。

破片が飛ぶ。

衝撃が胸を叩く。


体が後ろに弾かれた。


肩から落ちる。

肘を打つ。

息が詰まる。


耳が鳴った。


すぐには起き上がれなかった。


胸が苦しい。

息を吸うたび、遅れる。


少しして、手の甲が熱くなる。


血が細く流れていた。


木の皮の破片が制服に引っかかっている。


中村は木を見た。


深い。


「……何この威力」


手の甲を見る。


血が滲んでいる。


制服の袖で拭う。


うまく拭えない。


膝を立てる。


そのまましばらく動けなかった。



足音がした。


中村は振り向く。


同じ制服が、木々の間から出てきた。


相澤結だった。


少し息が上がっている。


相澤は木を見る。

破片を見る。

中村の手を見る。


「……これ、中村さんがやったの?」


「うん」


相澤が木に近づく。


抉れ方を見る。


「やばくない?」


中村は小さく頷いた。


相澤は木を見たまま言う。


「……思ったより全然強い」


相澤は中村の手を見る。


「切れてる」


「平気」


相澤はポケットを探った。


絆創膏を一枚出す。


「使う?」


中村は少しだけ黙った。


「……持ってるんだ」


「一枚だけ」


中村は受け取った。


「ありがと」


血を拭く。

貼る。


相澤はその間も森の奥を見ていた。


「どうしたの」


「私のギフト。知ってる人がいるのがわかるみたい」


中村の手が止まる。


「……クラスの?」


「うん」


「どこに」


「散らばってる」


相澤は木の間を見たまま続ける。


「ここがどこかは分かんない。でも、みんな来てる」


中村は少しだけ息を吐いた。


相澤は続ける。


「落ち着いて聞いてね」

「佐藤君と田中君は死んだ」


中村の顔が止まる。


「……え」


「何かに殺されてる」


中村は森を見る。


何も見えない。

音もない。


「なんで」


「それは分かんない」


少しだけ間。


「でも、そいつがどこにいるかは、だいたい分かる」


「分かるの?」


「うん。だから離れられる」


相澤はそこでやっと中村を見た。


「他の人とも合流したい」


「……私も行っていいの」


「え、いいに決まってるでしょ。そのつもりで来たし」


即答だった。


中村は小さく頷いた。


そこで、木がずれた。


中村は目を瞬いた。


枝が近い。


次の瞬間には遠い。


幹が曲がる。

地面がわずかに波打つ。

木の間の距離が伸びる。


「え」


中村は立ち止まった。


さっき爆ぜた木の位置まで違って見える。


足元が遠い。


「何これ」


相澤が振り向く。


「鈴木さん」


「え?」


「たぶん鈴木さんのギフト」


中村は森を見る。


木が動いたように見える。


でも動いていない。


「これが?」


「たぶん」


「大丈夫なの」


「分かんない」


相澤は短く息を吐いた。


「でも今動くのはやめた方がいい」


木の根が浮いたように見えて、中村は一歩下がる。


肩に何かが触れた気がした。


振り向く。


何もいない。


呼吸が浅くなる。


「これ無理」


「うん」


相澤も森を見たまま言った。


「私も普通に嫌」


森がまたずれる。


中村は立ったまま動けなかった。


相澤も動かなかった。



やがて、歪みが止まった。


中村は長く息を吐いた。


膝が少し抜ける。


「……終わった」


「うん」


相澤は視線を動かさない。


「鈴木さん、殺された」


中村は顔を上げる。


「え」


「殺された」


少しだけ間が空く。


「剣持った男」


背中が冷える。


「たぶん、田中君と佐藤君やったのもそいつ」


中村は森の奥を見た。


もう何も動いていない。


でも、どこかにいる。


「もう行こう」


「次、誰」


相澤が前を向く。


「高階君」


「少し先」


相澤が歩き出す。


中村もついていく。


少しだけ近くを歩いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ