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【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~  作者: パンダプリン


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第615話 愛の巣から漏れてくる甘い香り

「仮にも魔王ですよ!?」


「仮というか、まごうことなき魔王です」


 全ての罠とモンスターを力ずくで突破するその姿は、まさしく魔の者の王といえよう。

 嘉神を無力化した極低温の霧とか、気にしてすらいなかったし。

 そうかあ。フィオナ様には、完全に無意味かあ。

 回復薬もあるし、本気で挑んだんだけどなあ。


「傷の一つもつけられないとは……」


「わ、私をキズモノにしたいと!?」


「人聞きの悪いことは言わないでください」


 なんてこと言い出すんだ、この魔王は……。

 そもそも、本気で挑んで良いと同意したじゃないですか。


「それに、万が一傷ができたらちゃんと責任取りますし」


 回復薬は常に準備していたからな。

 一瞬で届けて、傷を消すこともできるようにしていた。

 だからこそ、本気で挑めたわけだし。


「……今から引き返して、わざと怪我します」


「何考えているんですか。やめてください」


 いくら罠が通じなかったとはいえ、わざと怪我なんてされても何も嬉しくありません。

 大人が子供相手に、やられたふりするみたいなものじゃないですか。

 ……まあ、実際の実力差はそれ以上なんだけど。


「ふむ……。まあ、レイは私のものですし、ずっと一緒にいますから、そんなことしなくても平気ですね」


「なんですか、急に。そんなの当然じゃないですか。俺はずっとフィオナ様と一緒にいますよ」


 捨てられなければの話だが。

 ということで、もっと役立つことを証明しないとな。

 対勇者ダンジョンと呼ぶには、今回のダンジョンはいまいちだった。

 もっと強力な罠やモンスターを配置できるようにしたいところだ。


「ところで、効かなかったとはいえ、本気で仕留めようとされたことを抗議します」


「本気でも良いって言ったじゃないですか……」


「それはそれです」


「暴君……」


「ほう? 暴君のようになってほしいと? では、レイの意思を無視して、今日は一日中抱き枕にします」


「疲れたんですか?」


「癒しが欲しいのはたしかですね」


 ということは、肉体的には問題なかったが、精神的には疲弊するダンジョンくらいにはなったのかもしれない。

 良いじゃないか。魔王の精神をすり減らせるということは、勇者にも効くかもしれない。

 まったく通用しないと思っていたダンジョンが、意外なところで通用しそうだ。


「あ、ちょうど良いですね。レイが熟考モードになったので、このまま部屋に連れ込みます。プリミラ、ダスカロス。後のことは頼みました」


「承知しました。ごゆっくりお楽しみください」


「魔王軍のことは、我々でなんとかしますので」


 こうして俺は魔王に拉致された。


    ◇


「はあ……。落ち着きます」


「気付いたら、魔王の寝室のベッドに引きずり込まれているんですけど」


 しかも、逃げられないように、後ろからしっかりと抱きしめられている。

 まだ昼だよな? ここで眠ったら、夜中に目が覚めそうで困る。


「レイと一緒に寝るときは、プリミラもダスカロスもむしろ協力的なので助かりますねえ」


「たしかに……厳格な二人なのに、フィオナ様が俺を寝具にして寝るときだけは、やけに甘いですよね」


「魔王の威厳が効果を発揮しているのかもしれませんね!」


「むしろ、駄目魔王と判断されて、自分たちがしっかりしないと、とか思われているんじゃないですか?」


「ぐう……」


 ぐうの音が聞こえた。

 言い返せないからって、抱きしめる力を強くするのはやめてください。当たってます。


「ところで、今さらなんですけど」


「なんですか?」


「俺を使って寝るときって、いつも後ろから抱きしめますよね? なんで正面じゃないんですか?」


「うっ……。だ、だって、恥ずかしいじゃないですか」


 何を今さら。

 この魔王、恥という概念が存在したのか。

 ……まあ、水着のときとかは、こちらも照れくさくなるほど恥ずかしがっていたけど。


「な、なんですか? なら、試してみましょうか? きっと、レイも恥ずかしいですよ!」


「え、否定したつもりは」


 弁解しようにも、いつもの強がりというか、切羽詰まって暴走する状態になってしまった。

 先ほどまでフィオナ様に背を向けるような姿勢だった俺は、反転させられて向かい合うような状況に……。


「……」


 顔近っ!

 た、たしかに……。恥ずかしい。

 ああ、くそっ。美人だなあ。

 きっとこの先もこの方以上に美しい者と会うことはないだろう。

 まずい……。さすがに恥ずかしい。


「な、なんか言ってくださいよ!」


「顔がすごく良いです」


「で、ですよね!」


「……」


「……」


「……フィオナ様こそ、なんか言ってくださいよ」


「わ、私もレイの顔好きです」


 ……なんで余計に恥ずかしくなるようなことを言うんですか!

 わざとやっているのか? この魔王様は。

 頬を赤らめながら言われるものだから、こちらも余計に照れ臭い。

 自分が赤面していることがわかる。


「……寝ましょう」


「そ、そうですね! それが良いです」


 そうだ。眠ってしまえば良い。

 目を閉じれば、気にすることもなくなるはず……。

 いつもより近いから、吐息とか匂いとかが……。

 よしっ、ダンジョンのことを考えよう!


「……」


「な、なんで、抱きしめる力を強めるんですか!」


「私ではなく、別のことを考えようとしたでしょう!?」


「仕方ないじゃないですか! 恥ずかしいんですから!」


「はあ!? 私だって恥ずかしいですけど!」


「なら、なんでこの状態のまま意地になっているんですか!」


「幸せだからです!」


「うっ……」


 たしかに、俺だって悪い気はしないというか、ぶっちゃけてしまうと幸せだけどさあ。

 いいや。恥ずかしさなんか気にしないでおこう。


「わかりましたよ……。まったく、わがままな魔王様ですよね」


「そうですよ? 今さら嫌になりましたか?」


「まさか」


 知っていて聞いてくるのだからたちが悪い。

 俺の返答に満足したフィオナ様は、さらに力を込めて俺を抱き寄せた。

 触れる寸前の距離に美しい顔がある。

 ……ほんと、無防備な魔王様だ。だからこそ、俺たちで守らないとな。


    ◇


「本日、魔王様とレイ様はお休みです。何かありましたら、私かダスカロスに言ってください」


「はい!」


「なんでしょう。アナンタ」


「対魔王様ダンジョン、早急に破棄しろよ? 間違っても人類を招こうなんてすんなよぉ?」


「レイ様にお伝えいたします」


「魔王様が力を取り戻した、なんて噂されるからなぁ? 本当にちゃんとやれよぉ!?」


「お伝えいたします」


 今日はレイさんと魔王様は、有休みたいだ。

 慣れたもので、プリミラさんとダスカロス先生が、テキパキと指示を出している。


「さて、僕たちも仕事に」


 向かおうとしたところ、新と友香は時任さんと奥居さんと話をしていた。


「魔王様とレイさん、急なお休みだね~」


「そうね。邪魔しちゃ駄目よ。二人でずっと寝室にいるみたいだから」


「そ、それって! ひえ~……」


 ……うん。あまり詮索しないほうが良いね。

 というか、僕たちだって毎日同じような状況だから、下手にその話題に触れると藪蛇だ。


「でも、赤ちゃんの話聞かないね。魔族って、子供ができにくいのかな?」


「どうかしら……。寿命がかなり長いみたいだし、その可能性も高そうね」


「ということは、普通の寿命の人たちは……」


 時任さんの視線は、新と友香に向けられてから、最後に僕に向けられた。

 ……さあ、仕事に行かないと!


「新、友香、そろそろ行こうか」


「そうね。しっかりと働いて、夜は休みましょう!」


「うん。ちゃんと体力は残しておかないとね」


 ……今日も疲れそうだなあ。

 時任さんが、またも顔を赤くしているけれど、僕の顔色は逆になっているかもしれない。


「……タケミ。無理すんなよ」


「無理はしていないから平気さ。ところで、君こそクララさんとそういう話はないのかい?」


「女王様と? なんで急に、痛っ! な、なんだ!? 魔法が暴発したのか? 女王様」


「知らない」


 ロペスは、機嫌を損ねたクララさんを見て首を傾げると、急いで彼女についていった。

 この二人、レイさんと魔王様と違って、くっつくのはかなり先になりそうだなあ。

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『転生宰相のダンジョン魔改造録』第1巻 発売中!
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― 新着の感想 ―
精神攻撃系なら結構効きそうかな?孤独とか努力が裏目に出るとか信じた者に裏切られるとかを幻なんかで…… いや、やめましょう。そんなことをするレイ君も、されるまおーさまも、見たくはありませぬ。
この魔王下手したらコウノトリが赤ちゃんを運んでくるとか思ってそう
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