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家事に慣れてきて、ミアと家庭菜園を作った。

ご飯を少しでも美味しく、それとレパートリーを増やすために、野菜の他、ハーブなんかも植えてみる♪


農家は農作物を売ってお金を稼ぐんだけど、ご近所の農家さん同士、物々交換なんかもしている。

日用品やお肉なんかは町で買うけど、野菜は基本ご近所さんからのお裾分けですんだりする。

売りに出せないような形のものとか、育ちすぎてしまったものなんかね。

たまには罠でとった小動物もある。畑はけっこう害獣に荒らされるのよ。


お裾分けをいただいたら、うちは自慢のリンゴをお返しする。

リンゴの他にも、家で食べる用に植えてある果実なんかもお返しになる。

リンゴの実りは秋だから、それ以外の季節のお返しにはちょうどいいでしょ?

生は日持ちがしないけど、ドライフルーツにしておけばいつでもOK♪栄養価も高くなるしね♪


話を戻して☆


初めての家庭菜園は、お隣のおじいちゃんに手ほどきを受けた。

形になるまではけっこう頻繁に見に来てくれた。自分ちの畑仕事だってあるのにありがたい。

おかげさまで、初めての収穫はおじいちゃん(プロの農家さん)に褒められる程だったよ!


十歳にもならない女の子が初めてで、こんなに上手くいくなんて…。

ビギナーズラックというものかな?なんにしてもよかった♪

おじいちゃん、ご指導ご鞭撻ありがとうございました!


その畑仕事、性に合っているのか、だんだんとミアが多く担当するようになっていった。

動くことが好きなミアは、家の中より外の方がいいというのもある。

農作業は大変だけど楽しんでやっているよ。


反対に、私はインドアって訳じゃないけど運動はどっちかというと苦手だったし、まぁちょうどいいかな。

家事は嫌いじゃないしね♪


前世で『緑の指』という言葉を聞いた事があった。

植物を上手に育てられる人、みたいな意味だったと思う。

ミアはまさに緑の指の持ち主だった。おじいちゃんが驚くほど立派な野菜を育てられる。しかも味がいい!


ミアが土いじりの才能を開花させた頃、リアンもまた優れた才能を開花させていた。


パパママと一緒にリンゴの仕事をしているリアン。まだ七歳とはいえ獣人の血が濃く出ているリアンは、人の子の七歳とは成長が違っている。


騎士だったパパママは何か感じたものがあったようで、ちょっと剣の振り方を教えてみたら、これがもう才能があったとしかいいいようのない素晴らしいものだったらしい。仕事の合間に剣術や体術を教える。

リアンは乾いた土が水を吸収するように覚えていった。


意外と(失礼!)腕のあったパパが剣を教える。体術を教えるのは、体力のある獣人のママだ。

七歳から始めたそれらは、二年もするとしっかりと基礎が出来上がって、後の話につながる事になる。


でもその前に、もう少し日々の話をしよう。




秋になってリンゴの収穫の時期になった。

今年から私たちも王都まで一緒に行くよ!

ウィルに会いに行かなくちゃならないからね!


私たちが生まれてから三年ほど、町の農業ギルドに依頼してたけど、私たちがあまり手がかからないという事で、パパは以前の様に自分でも王都に運ぶようになっていた。

私たちは王都に行くのが初めてだからとっても楽しみ♪


美味しそうに輝いている食べごろのリンゴを荷台に積んで、ついでに私たちもそこに乗って、いざ!王都に出発!

うちの馬さんがポクポクと歩んでいく。


朝市に間に合うようにまだ暗いうちに家を出て、王都まで半分をすぎたくらいで夜が明けてきた。

地平線に一本、はちみつ色の光が見え始める。


「ミア!リアン!朝日だよ!綺麗だね~♪」

「綺麗だね~!」

「朝日、初めて見たね!」


秋の朝はちょっと肌寒いくらいだったのに、日に当たったら途端に暖かくなった。

お日様って偉大だなぁ。

なんて思いながら、明るくなって元気が出てきた私たちは歌を歌いながら荷馬車に揺られる。

子牛の歌ではないよ☆




そうして朝日が昇り切った頃、私たちは王都についた。


おおぉぉ!! 

王都という名の通りみやこだ!大きい!!

まだ早朝という時間なのに、大通りには人が行きかい、朝市が立つ場所も結構な人が集まっている。


朝市はこれからみたいで、集まっている人たちは露天の商人のようだ。

せっせと品出しをしている人、もう終わってお客さんを待っている人、色んな人がいる。


売り物も色んなものがあって、うちのような果物以外にも野菜や肉類、食べ物の脇に雑貨なんかも置いてあるお店もあって面白い!!


朝市に来たといっても、私たちが自分たちでリンゴを売る訳ではないよ。

朝市に出店している果物屋さんに卸すのよ。


うちのリンゴを気に入ってくださっているおじいさん、ボブさんとは、亡くなったおじいちゃんの頃からの長いお付き合いだ。


パパが私たちをボブさんに紹介してくれた。

朝の挨拶を交わす。

ボブさんは嬉しそうに目を細めると、私たちの頭を一人一人なでてくれた。


それから今年初のリンゴを一つ取ると、ガブリと噛りつく。わぉ。ワイルド!


シャクシャクいい音をさせて飲み込むと、ニヤリと笑った。


「今年の出来もいいな。ここんとこ年々味がよくなってきてるし、おやじさんより向いてたんじゃねーか?」

「いやぁ、おやじにはまだまだ敵いませんよ。それじゃ、ここに置いておくんで。明日も同じ量でいっすか?」

「おぅ!また明日も頼むぜ」


なんて会話をしてボブさんとは別れる。

市はこれから忙しくなるからね、ジャマにならないようにさっさと後にする。


それに、早くウィルに会いに行かなくちゃ!

また荷台に乗って、ウィルの家までポクポク揺られていく。




朝ご飯前の訪問はさすがにまずいと、私たちも途中の広場で持参していた朝ご飯を食べる。

サンドイッチとリンゴだ。それと冷たい湧き水。シンプルだけど美味しい♪


食べ終わって、頃合いを見てからやっとウィルの家に行く。

ウィルに会うのは約一年ぶりだよ!楽しみだ!


「おはようございます。早くからすみま」


パパがおとないを入れると、言い終わる前にすごい勢いでドアが開いた!


「サラ!ミア!リアン!!」


並んでいた私たちに飛びかかって来たモノが!

リアンが素早く動いて私とミアの後ろに立った。

おかげで吹っ飛ばずにすんだよ!


「久しぶり!!」

「「ウィル!!」」


よくよく見れば、飛びかかって来たモノはウィルだった!

いきなりの熱烈な歓迎に驚いたよ!


「ウィルったら!私たちはあんたたちと違って力の弱い女の子なんだからね!もうちょっと優しくしてよ!」

「ごめん! 嬉しくてつい…」

「あんたたち…。僕も言われてるし…」


ミアが文句を言うと、ウィルの耳がぺたんとしてしまった。

リアンも解せないという顔をしているし。


私はニヤニヤしてしまった。

約一年ぶりの再会というのに、みんな変わってないよ!


「驚いたね~!驚いたけどミア、気持ちはわかるでしょ!私たちだって同じくらい嬉しいもんね!」


そう言って、ミアの背中を抱え込みながら一緒にウィルに抱き着いた。


「ウィル~!会いたかったよ!!」

「もう!サラったら!! ウィル、会いたかったよ!!」

「うん!会いたかった!!」


ちょっとションボリしていたウィルも、大きくシッポを振りながら抱き着き返してきた。


「リアンありがと!おかげで吹っ飛ばないですんだよ!」

「うん」


リアンも巻き込んで四人で再会を喜んだ。




パパさんのご実家には、ウィルのおじいちゃんとおばあちゃんがいて、みんなで朝の挨拶をした。

パパさんは仕事でいなかった。会いたかったな。


この日の午前中、みんなでこの一年の間の話をたくさんした。

ウィルは元々王都に住んでいたから、すぐに馴染めたそうだ。友達もできたって。


でも私たちみたいに姉弟きょうだいのような付き合いはなくて、今日再会して、やっぱり私たちはいいなぁとしみじみ言っていた。




楽しい時間はあっという間に過ぎる。

お昼ご飯をご馳走になったら、すごくすごく名残惜しいけど帰る時間になった。

ウィルはとても淋しそう。私たちもだけどね!


今日は特別に半日ウィルの家にお邪魔させてもらったけど、明日からはそうはいかない。今は収穫時期だからとっても忙しいのだ。


これでまた来年まで会えないのは淋しすぎる。

ウィルが市場まで来てくれたらリンゴをおろす間は会えるけど、人の多い、忙しい市場ではジャマになっちゃうから、きっとパパはいいとは言わない。


どうしたらウィルと会う事ができるだろう?

だってこの時期しか会えないんだもん、会えるものならたくさん会いたい。

私は短い時間にフル回転で考えた。

あぁそうだ!


「ウィル、おじちゃんがいいって言ったら泊まりにおいでよ。リンゴを運ぶ最後の日にウィルを送ってくればいいし」


言ってから、パパを見上げる。


「パパ、いいかな? お願い!」

「「パパお願い!」」

「おじちゃん、俺リンゴの仕事手伝うよ!俺けっこう力あるよ!」


パパはおじいちゃんとおばあちゃんを見た。

お二人は頷いてくれた。


「ラィリーがいいって言ったらな」

「「ありがとー!」」


私たちは大喜びだ。

パパさんが帰ったらお願いする事になって、今日は私たちは帰る事になった。


淋しいけど淋しくないよ!明日にはまたウィルに会える。きっとパパさんはいいって言って、ウィルは収穫の間うちにこられる。


「「じゃあ、また明日ね!」」

「うん!」


また明日っていい言葉だね♪




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