9
季節は廻って、私とミアは十歳、リアンは九歳になった。
大陸の大部分の国では、子供は十歳になると教会なんかで魔力の有無を調べられる。
魔力測定が十歳なのは、魔力の有無が決まるのは十歳くらいだからとか。あまり早すぎるとわからなかったり、正確に測れなかったりするらしい。
アケルでは魔力持ちとわかれば、庶民でも授業料免除で王立の学校に入れる。
魔力持ちでなくても、何らかの著しい能力があれば、やっぱり授業料免除で入学できる。
特別なものを持っていない一般庶民は学校には入れない。
というか、許されない。もともと貴族や豪商のお子様が通うところだからね。
だいたい、入学する十歳から卒業する十五歳までにかかるお金がハンパない。日々の生活がやっとの庶民に払える金額じゃないのよ。
魔力持ちや顕著な能力者だって、授業料や、その他諸々かかるお金が国負担じゃなかったらとても入学なんてできない。
では何故、国はそんなにたくさんお金をかけて入学させて学ばせるのか。
魔力やそれ以外にも何らかの秀でた力は国力になるからね。国力の弱い国ほど優れた人材を欲している。早い時期に見つけ出して能力を引き出し、伸ばして、国の力にするという訳だ。
優秀な成績で王立学校を卒業すれば、宮廷に勤められる安泰の人生がまっている。
それは一般庶民が夢見るシンデレラストーリーといってもいい。
シンデレラといっても男子もいるけどさ。
という訳で、十歳になった私とミアも教会で魔力があるか調べられた。
お察しの通り、私にもミアにも魔力があったよ。元々、異種間婚で生まれた子には魔力持ちが多いらしい。
魔力持ちという事で、私とミアは王都の王立学校に行く事になった。
ちなみに著しい能力のあるリアンも一緒に行く。
リアンは九歳だけど、獣人の血が濃いために成長が早くて、身体だけ見たら私たちより少し大きいくらいだ。
そういう身体的な成長事情で、獣人は一歳までは早期入学できる事になっている。
もうひとつちなみに。
同じ理由でウィルも一緒に入学する。ウィルは十歳までには半年早い入学になる。
異種間婚で生まれた私とミアはきっと魔力があるだろうと、同じ時期の入学に合わせたのだ。
もし私たちに魔力がなかったとしても、やっぱりリアンと一緒に入学する予定だった。
そうそう、私たちの魔力だけど。
ミアは土属性とわかったよ。妙に納得したわ!緑の指の持ち主だもんね!
私たちが生まれた頃からリンゴの収穫量が増えたのも、味が良くなっていったのも、ミアのおかげかもしれない。
ミアは可愛いし、豊穣の女神様みたいだね♪
そして私だけど、何故だか属性はわからなかった。
わからないけれど、魔力はあるから入学して魔法科で学ぶように、という事になった。そのうち判明するだろうと。
稀だけど、そういう子もいない訳ではないらしい。
なんかスッキリしないけどしょうがない。
もしかして転生者とか、前世の記憶持ちなんかが関係してるのかもしれない、なんて思ったりする。
リアンとウィルは騎士科になった。というか魔力がないからそっちだよね。
身体能力が高い上に、リアンもウィルも父親から教え込まれていてすでに基礎はバッチリだ。
小さい頃から目指していたみたいだし、当たり前といえば当たり前か。
魔法科と騎士科というと、分かれているように聞こえるけど、基礎の学習や一般教養なんかは一緒に受ける。特別授業の時に分かれるだけで、クラスは一緒だ。
クラスは学年に三つしかない。
貴族のお子様クラスと、豪商のお子様クラスと、魔力・能力持ちの庶民の子クラスね。
貴族や豪商の子は特別な力がなくても入学できる。元々はその子たちのための学校だからね。ただしお金の免除はないから、費用はかなりかかる。
王立学校は全寮制だ。庶民クラスは寮費も国負担になる。
うちから王都までは片道二時間かかるから、これは助かった。毎日往復四時間は厳しいよ。
うちの荷馬車を使っちゃう訳にもいかないし。
魔力や能力を持った子は全国から集められる。アケルは大きな国ではないけど、それでも国の端の方からなら、王都までは何日もかかる。
とても通える距離じゃないよね。
全寮制だから王都内の子も寮に入る。
貴族の子も豪商の子もね。
例外なのは王族で、これはセキュリティーの問題なんだろうなぁ。
王子様やお姫様に何かあったら大変もんね!
本物の王子様やお姫様、遠目でいいから見てみたい…。
日本は王政じゃなかったから王様も王子様もいなかったし、イギリスなんかに旅行した事もなかった。
物語なんかでイメージする王子様とかお姫様、ぜひ見てみたい!
とまぁ、そんな私の願望は置いといて☆
ずいぶん詳しいじゃないかとお思いのあなた!
じつはうちのパパとママも王立学校出身だったのよ。
そうでもなかったらリンゴ農家の子が騎士になんてなれてないよ。
ママは獣人だからなれてたと思うけど。
そう思うとパパってすごい人だったんだな。(失礼!)
だって顕著な能力があったって事でしょ?
(失礼!)
話を聞いた時から、ちょっとだけ見る目が変わったよ。(失礼!)
パパとママからは、そういった国の考えとか(多分に私の推測が入ってるけど)学校の仕組み以外にもたくさんの話を聞いた。
学校生活は楽しい事、小さな町の農家でいたら会う事のなかった人たちと出会える事、生涯つき合える友が出来る事。
伴侶が出来た人もいたらしい。
もちろん楽しい事ばかりじゃなくて、学科の試験は難しい事や、実技が思うように上達しない悔しさとか、どうしても勝てない相手がいて悔しかったとか、話が段々ずれていったりもしたけど。
それから、二人とも騎士科だったから
「魔法科の事はまったくわからないな。知り合いもいないし…。まぁ学生のやる事はそう変わらないと思う!難しい事はない!大丈夫だ!」
「そうねぇ、私も魔法科に知り合いはいないからわからないわ。でも三人で行くんだもの心強いわよね♪ ウィルも行くし、五年間しっかり学んで、たくさん楽しんでらっしゃい♪」
と話をしめくくり、笑顔で送り出された。
送り出されたといっても、両親揃って王都に送ってくれたよ。
これからは長い休みでなければそうそう帰れない。卒業して国に従事する事になれば、更に帰る事は難しくなる。
まぁ、そこそこの実力がなければ宮廷に勤められなさそうだけど。
王都までの間は親子五人楽しく話しながら行く。
時々しんみりもしちゃうのは、しょうがないよね。
王都につくと、ウィルの家に行く。
この日はさすがにお休みだったパパさんと、おじいちゃんとおばあちゃんとみんなでお昼ご飯をいただいた。
同じ王都内にいるといっても、明日からはウィルもそうそう家には帰れない。
外出許可をもらえば週末は帰れるらしいけど、平日は外出禁止なのだ。
ご飯が食べ終わると、名残惜しくパパとママにお別れを言う。
ウィルもパパさんとおじいちゃんとおばあちゃんにお別れを言っている。
「じゃあいってきます!」
「「いってきます!」」
「「いってらっしゃい!」」
「身体に気をつけて、しっかりね!」
ここからはウィルと四人で学校に向かう。
荷物も少ないしね。背負いカバンひとつくらいだ。庶民の持ち物ってほんと少ないんだよ。
学校までは子供の足で歩いてももう遠くないし。
王都で遊んだことは一度しかなかったので、道々珍しくてとても面白い。
私とミアはあちこちフラフラしがちで、その度にリアンとウィルに腕を引かれた。
「サラ、あれ見て!可愛いね~!」
「うん可愛い! けど、ミアあれ見て!美味しそう!」
女の子の可愛い物と美味しい物好きは、世界が違っても同じだと知った♪
校門を入ると、ずっと先には大きな校舎が見えた。
校舎までは並木道になっていて、歩道と馬車道に分かれている。
道の両サイドに並んでいる木々は若葉が柔らかい黄緑色だ。春らしくて清々しい。
ふいに強い風が吹いた。
ミアに向かって木々が嬉しそうに揺れているように見える。
さすがにそんな事はないけどね。植物が自分で揺れたらホラーだよ。
でもきっと花は綺麗に咲くだろうし、実のなる木なら実りも豊かになるだろう。
これから五年間、私たちはどう成長していくのかな?
どんな生活がまっているだろう。
あ。私二度目の思春期だわ。




