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変種

結末は二つありますがどっちを使うかまだ決めかねています。

 俺たちは森の探索を続行し今も森の奥へと進む。

 これまで歩けば直ぐに魔物と遭遇していたのに、今は気配する感じられない。静まり返った森がより一層不気味感を醸し出している。


 さっき強気発言した俺も今は不安と緊張を拭うことができないでいた。

 一体この先に何があるってんだ。


「どうやらこの一帯の魔物は皆逃げたみてーだな。その一部がさっき俺たちを襲ったって訳だ」

「不気味ね。こんな事は今までなかったわ。二人共注意を怠ったらだめよ」

「あぁ」

「うん、分かってるよ」


 俺たちは気を引き締めつつ更に前進する。

 もう歩き始めて30分は経つのに一切魔物と遭遇していない。この森で一体何が起きてるって言うんだ。


「止まれ」

「どうしたのロイス? っあ・・・」

「どうしたの?」


 ロイスが俺たちの進行を止める。その表情は真剣そのものだ。マリーも最初は何事かと思ったようだが、すぐに何かに気づいた様子。


 どうしたんだ?

 俺も二人に習い前方に目を凝らす。


 あ。

 奥の森にゴブリンより遥かに大きい人型の巨体がそこにいた。

 脂肪の塊のような体つきだが、動けばしっかりと筋肉繊維が表面に浮かび、そしてその巨躯の上に猪のような頭が乗っかっていた。

 手には棍棒を持っており、目をギラつかせ、禍々しいオーラを辺りに撒き散らしながら何かを探すように巡回している。


 うん。

 きっとオークだ。

 でも俺が持っているイメージよりも随分と凶暴そうだ。


「あれはオークなの?」

「あぁ、そうだな。でも何か変だな」

「そうね。通常より大きいし、雰囲気が違うわ」


 俺たちは咄嗟に大きな木の陰に隠れ、目の前のオークを観察する。

 凶暴そうな目つきに低い唸り声。ゴブリンより知性はあると聞いていたが目の前のそれからはまるで感じられない。ひたすら何かを探している様子だ。


 と、その時。

 奥の方から同じような魔物が現れた。


「あれが俺たちの知ってるオークだ」


 出てきたのは先ほどより一回り小さく、頭は猪より豚に似た姿のオークだった。体は更に脂肪が乗っており、見るからに動きがにぶそうだ。


「見比べると違いがよく分かるわね。大きさも違うし顔つきも違うわ」

「そうだな。あんなオークは始めて見るな」

「変種なの?」

「へんしゅ? なんだそりゃ?」

「何を言ってるの? ルイ?」

「えーっと・・・」


 俺は俺の知識にある魔物の変種のことを二人に説明する。

 変異種、亜種、特別種といろいろ言い方はあるけど、ようは通常の同種と異なってる個体のことだ。

 当然そこまで話すと俺の前世の知識がバレて怪しまれるから、わざとあやふやな説明を行う。


「――そんな感じで、変な種類だから変種って呼んでみたの。で、そういうケースはないの?」

「言ってることがよく分からんがそんなのは聞いたことがねーな。同じ魔物なら一種類しかいないぞ」

「そうね。動物なら同種でもいろいろ違いはあるけど、不思議と魔物は皆一緒よ?」


 あれ?

 どうやらこの世界には魔物の変種はいないらしい。

 二人の説明を聞くと、この世界の魔物は同種なら全て同じ容姿で力も然程変わらないようだ。

 でも目の前のそれは明らかにオークと異なっている。

 俺の知識を当てはめるならどう見たって変種だ。

 どうなんだ?


《マスターの考えていることは正しいです。目の前のオークは変種で間違いありません。しかしこの世界で変種が確認されたのは近年のことで、発見件数もまだそう多くありません》


 やっぱりそうか。

 近年発見されたのなら子育てに専念してた二人が知らないのも無理はない。

 それに、もし俺の予想が当たっていれば――


《はい、変種は例外なく通常個体より凶暴で力も大きく向上しています》


 センセイが俺の思考を読み取り、聞くより先に回答してきた。

 以前聞いた魔物の凶暴化っていうのは変種のことを指してたんだな。

 だとしたらロイスもマリーも始めて魔物の変種を見たことになる。

 ここは注意した方が――


「何!?」

「え!?」


 俺が変種は通常のオークより凶暴で力強いかも知れないと注意を促そうと思ったら、その必要はなくなった。

 二人共目の前の異常な光景に言葉を失くし、嫌でも警戒心を上げざるを得なくなったからだ。


「仲間を喰ってるぞ・・・!」

「どうして!? 魔物は絶対に共喰いはしないのに・・・」


 そう、変種は目の前に現れたオークを突如棍棒で殴り殺し、直後死体に被さりその肉を喰らっているのだ。

 マリーの説明では魔物は動物や人間には容赦ないが、魔物を襲うことは珍しいと言う。しかも同種となるとほとんど攻撃することはなく、共食なんて聞いたこともないと言う。

 これに対しては少し意外だったが、目の前の異常な光景にそれどころではなかった。


「あれは色んな意味でやべーぞ。やってることもエグいが、その前の攻撃は異常だ。オークにあそこまでの力はない。どうやらこの森の異常事態はあいつが原因かもしれんぞ」

「そうね。オークの割にスピードがあったし、それにパワーは尋常じゃなかったわね」

「もしそうなら二人共気をつけて、これまでのオークの先入観があったら返って危ないよ」

「まともなことを言うじゃねーか。最初はゴブリンにビビってたのによ」

「ふふ、ルイも成長したわね」

「そんなことを言ってる場合じゃないよ!」

「「シーッ!」」


 俺の成長に一瞬両親二人は喜ぶが、今はそれどころではない。すぐにまた緊迫した面影で変種を見つめる。


「どうするのロイス?」

「今は見つかってないが、動いた瞬間に発見されるだろう。スタミナは分からんがさっきのスピードじゃ逃げきるのは苦労しそうだ。でも見つかってない今なら不意打ちができる。殺るしかないだろ」

「うん、私もそう思ってたところ。じゃあまず私がフレイムランスを放って弱らせるから、隙を見てロイスがトドメを刺して」

「あぁ、そうだな」


 二人の意見が纏まった。

 逃げるリスクを考えたら今の利を使って倒しきった方がいいと判断したようだ。

 決断も早く、即座に作戦を立てられるのは流石ベテラン冒険者の二人だ。元々同じパーティだったし息もぴったりのようだ。


「それなら僕も手伝うよ」

「ルイはここで待機してろ。付いて来ることは許可したが、こいつは俺と母さんで殺る」

「でも――」

「ルイ、実戦を見るのもまた勉強よ。それに母さんと父さんも伊達にBランク冒険者をやってないわ。私たちの戦いをよくみるのよ」


 それを聞いて何も言えなかった。

 力だけで見るなら俺は二人をも超えている部分も沢山あるだろう。でもベテラン冒険者には俺にないものも多いはずだ。

 若干心配は残るけど、二人を信じて見守ろう。もし危険があったら俺は身を挺して助けに入るつもりだ。


「分かったよ・・・」

「はっはっは、いい子だ。まぁ見てろって」

「母さん達だってすごいんだから。このオークに勝ったら家に帰っておいしいものを作ってあげるわね」


 おいおい。

 それフラグって言うんだぜ?


 二人が戦闘態勢に入るのを見て俺の不安はより一層大きくなった。




お読み頂き有難うございます。

次話は明日17:00に投稿する予定です。

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