魔法の応用
勢いって怖いですね。
絶望的な魔物集団を1分ほどで撃退した俺だったが、今マリーに激しく問い質されている。
おかしくね?
俺いいことしたよね?
「ルイ! 聞いてるの? 今何したかしっかりちゃんと説明しなさい!」
「はっはっは! すげーなんてもんじゃねーな!」
「呑気に笑ってる場合じゃないわよ!」
「痛っ!」
あまりの出来事にマリーがヒステリーを起こしていた。
こんな取り乱すマリーも珍しいな。
帝級魔法を習得した時ですら笑って祝ってくれたのに。
俺が使ったのストーンアローだからな?
「え? ストーンアローを放っただけだよ?」
「そんな訳ないでしょ!」
「いや、本当だよ?」
「はっはっは! マリーもストーンアローが使えること忘れてないか?」
「そうよ! 明らかに別物だったわ!」
「本当だってば。ギフトの力を使っただけだよ?」
「いくらギフトだってここまですごくっ・・・ないわよね? 」
「さぁ? 俺もギフト持ちに会ったことがねーからな」
やれやれ。
一から説明しないといけないようだな。
「じゃあ段階に分けて説明するから見てて」
「え? うん、分かったわ」
「お、面白そうだな」
先ほどの緊迫した空気から一転し、マリーもロイスも子供のように好奇心を顕にする。
君たち、さっき死すら覚悟してた表情してたんだからな?
切り替え早すぎるっしょ。
まぁ無事だからいいけどよ。
「見てて、まずは普通のストーンアローからだね」
【石よ、その硬き身体を用て悪しき者を貫き給え、穿つ石矢、ストーンアロー】
俺は敢えて呪文を詠唱して魔法を発動させる。
ッシュ! バンッ!
俺の手から岩の塊が現れ前方の木へと飛んでいき衝突する。
そしてぶつかった木の幹が岩によって抉れる。
うん、我ながらいい威力だ。
これは問題ないだろ。
マリー達を見ると頷きながら納得している。
「母さんたちも知ってるように僕は無詠唱で同じことができる」
「そうね」
「あぁ」
それを披露するため、俺は手を前方に向け先ほどと同じ現象を起こす。
ッシュ! バンッ!
「これだけでも十分すごいけどね」
「あぁ、実戦で十分使えるぜ」
これだけで驚かれちゃ困るな。
「更に僕にはギフトがある」
「重複魔法だよね?」
「同時に魔法が使えるってやつだろ?」
「うん、まぁ見てて」
俺はもう一度手を伸ばし魔法を発動させる。
ただし今回は直ぐには打ち出さず、そのまま宙に留めた。
すると俺の手の先には10個の岩の塊がふわふわ浮かんでいた。
「相変わらず信じられない光景ね」
「はっはっは! 何度見てもすげーぜ!」
ふっふっふ。
まだまだ驚くのはこれからだ。
「このストーンアローは別に同時に飛ばさなくてもバラバラでもいいんだ」
シュッ! シュッ! ・・・ シュッ!
俺は一つずつ岩の塊を飛ばしていく。
「本当だわ。以前は同時に発動させていたわよね?」
「っお、ちょっとさっきの技に近づいたか? でも数も速度もこんなもんじゃなかったぞ?」
「うん。ここから更にイメージを加えて応用させるんだ」
「イメージ?」
俺の言ってる意味が理解できないのか、マリーが頭を傾ける。
ロイスは・・・ まぁ放置でいいだろう。
そう。
魔法は応用が効くのだ。
もちろんコツはいるけどね。
無詠唱魔法を使い続けてる内に俺は魔力に対して非常に敏感になった。
魔力を変化させることで発現する現象もだいぶ把握できている。
つまり魔法はアレンジすることも出来るって訳だ。
逆に詠唱魔法だと威力の強弱はあれど効果は同じものになる。
呪文によって現象が制限されているからだ。
だから俺のように魔法をアレンジさせるような考えは普及していない。
ようはイメージと魔力操作さえ出来れば魔法は応用が効くってことだ。
「うん、見てて」
俺はもう一度ストーンアローを発動させ、岩の塊が目の前に現れる。
そして魔力操作を加えていくと――
「あら? 岩が小さくなって・・・ 鋭くなってる?」
「おぉ! すげーな! 初めて見るぜ。なんか弓矢みたいな形だな」
「これでさっきの魔法と形状は同じになったよね? あとは・・・」
キュイィィィ・・・・
更に魔力を操作すると岩の弾丸が回転を始める。
そのスピードはどんどん上がり、この世界で聴きなれない回転音が響く。
そして魔法を発動させると――
ッシュン! ズシュッ!
「「ッ!?」」
普通のストーンアローの数倍ある速度で弾丸が飛び出す。
木に直撃した弾丸はそのまま幹を貫通した。
俺も理屈はよくわからんが、回転させた方がいいと前世の記憶をそのまま参考した結果だ。
「すごい・・・ 本当にストーンアローなの!?」
「すげーな! さっきの技と同じ速度と破壊力だ。じゃあ連射は?」
「あとは簡単だよ」
俺は手を前方ではなく上空へ向ける。
その瞬間、今見せた弾丸で空が覆い尽くされていた。
うん、多すぎてちょっと気持ち悪い。
「普段は数個から10個前後しか同時に発動させていなかったけど、やろうと思えばこれだけの数だって出せるんだ。だからさっきの技は次々と弾丸を作って放っただけだよ。同時にじゃなくてバラバラで放ったほうが応用が効くし、かっこいいでしょ?」
二カッ!
よくある主人公のように爽やかスマイルで説明を終える。
決まったな。
あれ?
何も反応がないな。
マリーたちの方を見ると――
「ロイス・・・ ルイのダンジョン行きだけど、もう反対はしないわ」
「あぁ・・・ だろうな」
おぉ!
マリーがダンジョン行きを許可してくれた。
これで目的は果たしたな。
最初からこれをやればよかった。
めでたしめでたし。
「ありがとう母さん! 僕がんばるね父さん!」
「えぇ・・・」
「あぁ・・・」
喜ぶ俺に対して両親のテンションは明らかに違っていた。
なんで?
お読み頂き有難うございます。
次話は明日17:00に投稿します。




