ギフトの力
冒険にハプニングはテンプレですね。
「バカ野郎! 俺を殺す気か!!」
「ルイ・・・」
頭が少し焦げたロイスが俺に向かって怒鳴る。
ちょっとやり過ぎたか。
でもあれだけ数がいる緊急事態だったんだ。
俺は悪くないはず。
うん、悪くないったら悪くない。
「ごめんなさい。父さんの周りに敵が多すぎて無我夢中だったの」
「っう、俺を心配してやったんだな・・・ 怒鳴って悪かった。ありがとな」
「ルイは優しいわね。緊急事態だもの、仕方ないわ」
ちょろいもんだぜ。
親バカ相手ならいくらでも言い訳できる。
でも次からはもうちょっと気を付けよ。
「次からはちゃんと手加減するね」
「分かればいいのよ。でもルイ、パーティでの戦闘は状況判断が大事なの。魔法を使う時は仲間のことも考えてね」
「気にすんな。次からはお前の魔法を見て俺も動くからよ」
言われてみると軽率だった。
さっきは敵の殲滅しか考えていなかったが、それならソロと変わらない。
パーティを組むなら仲間のことを意識して魔法を選んだり、強弱をつけないといけないな。
次はもっとしっかり状況を見て判断しよう。
「ねぇロイス」
「ん? なんだ?」
さっきまでの穏やかな雰囲気が一変してマリーがロイスに話しかける。
「一角兎がこれだけ集団でいること過去にあった?」
「ねーな」
ロイスがマリーの問いかけに即答する。
「そうよね。どう思う?」
「はっきりとは分からねーが異常だな。それに気のせいかもしれねーけどヤツら焦ってたような気がした。まるで早くここから離れたい感じでな」
「ロイスもそう思う? 私も変だなって思ってたの。普通一角兎はもっと警戒心が高いわよね。さっきの攻撃は必死さを感じたわ」
「あぁ、最近魔物が増えたり凶暴化してるって話はよく聞くけど、それとなんか関係があんのかもしれねーな」
「そうね。気をつけましょ。ルイも私たちから離れちゃだめよ」
「うん、分かった」
途中マリーが家に戻ることも提案したが、最終的にもっと俺に魔物との実戦を経験させることが決まり、俺たちは森の探索を続けた。
そして更に歩くこと10分。
ッドドドドドド!!!
大きな地鳴りが聞こえる。
「え? 何?」
「こりゃただ事じゃねーな」
前方の森から大きな砂煙が見え、聞こえていた地鳴りの音が大きくなっていく。
その距離は俺たちにどんどん接近し、そして俺たちは信じられない光景を目にする。
「ギャァアアオオオオォォォオオオオ!!!」
「ギャァアアアオオオオオォォォオオオ!!!」
「シャァァアアアアア!」
「シャァァァァァアアアアア!」
ゴブリンと一角兎の集団が俺たちの視界に映った。
その数は優に100を超えるだろう。
それぞれの魔物が俺たちを威嚇し、まるで「どけ!」と叫んでいるようだ。
今にも襲いかかってきそうなその集団にマリーとロイスですら困惑している。
「何よこれっ!」
「こんなことは初めてだ。この数はやべーな。マリー! ルイを連れて逃げろ!」
「ロイスは!?」
「俺がヤツらを抑える。お前らが逃げ切ったら俺も逃げるからよ」
「だめ! 私も一緒よ! ルイ、一人で先に逃げなさい!」
ロイスが一瞬で状況判断をして撤退を選択する。
いくら低ランクとは言えこれだけの数じゃジリ貧だ。
普通に戦っていたら全滅することもあり得ると判断したのだろう。
だからロイスは俺たちを逃がすために囮になると提案したが、マリーはそれに応えない。
やっぱり夫婦なんだなとこの時俺は呑気なことを考えていた。
「だめだ! お前が増えたところで状況は変わんねー! さっさとルイを連れて逃げろ!」
「っでも!」
ロイスとマリーが言い合いになる。
この間も前方の魔物軍団は俺たちに向かって突進している。
もう少しで俺たちに届く距離だ。
「ねぇねぇ」
「あぁん?」
「ルイは黙ってて!」
この緊迫した空気に似合わない俺の声に二人共苛立げに反応する。
ちょっとひどいな。
まぁ空気を読まない俺が悪いんだけど。
「僕なら多分問題ないよ。ほら、僕に量ってあまり関係ないから」
「はぁ?」
「っあ・・・」
俺の提案にロイスが驚き、マリーは何かに気づいたようだ。
「僕なら一気に片付けられるよ。今日たくさんの魔物を倒したからもう慣れたしね」
「いや、けどな・・・」
「練習と実践じゃ訳が違うのよ? 大丈夫なの?」
「うん、見てて」
それだけ言って俺は手を前方の魔物集団に向けた。
実際俺は平行思考のスキルもといギフト持ちだ。
数は俺にとっては何の意味も成さない。
さて、どの魔法を使おうか。
トルネードで一気に片付けてもいいし、上級魔法を同時に放っても良さそうだな。
でも、ここは・・・
「ガトリング」
俺は密かに練習していた俺にしか出来ない魔法の名を口にする。
尤も俺に呪文詠唱の必要はなく、ただの雰囲気作りだ。
次の瞬間――
シュインッシュインッシュインッシュインッシュインッシュインッ!!
俺の手から無数の岩の弾丸が飛び出し、機械音に似た風切音が響く。
その数は目の前が弾幕で埋まるほどで、速度はと言えば目で追うことすら難しい。
更に敢えて弾丸の大きさを小さくし貫通力を上げている。
当然それを受けた魔物はと言えば――
ドンッ! ッパン! グシャッ! ペシャッ・・・!
連続した鈍い音が辺りを包む。
弾丸が当たった瞬間肉が弾け、勢いの止まらない弾丸は更に後方の魔物を貫通していく。
俺たちの目の前に地獄絵図が広がっていた。
その様はまさにガトリングによる一掃射撃だ。
次々と魔物が俺によって倒され、無残な姿へと変わる。
うん、練習通りだ。
威力は予想を遥かに超えていたが。
マリーもロイスもこの現実離れした光景に言葉をなくしている。
でも確かに威力は凄まじいがやっていることは非常に単純なのである。
ただストーンアローを連続して打っているだけだからな。
尤もその量とスピードが桁外れで普通の人には真似できないだろう。
ギフト持ちならではの技だ。
約一分ほど弾丸を放ったところで俺は魔法を解除する。
生き残りがいないか確認するためだ。
うん、ちゃんと全部倒せたな。
「終わったよ?」
「「・・・」」
あれ?
反応がない。
「もう終わったんだけど?」
もう一度声をかける。
「「終わったじゃねー(ない)よっ!!」」
怒られちゃった・・・
お読み頂き有難うございます。
次話は明日10:00に投稿します。




