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冒険者の実態、馬車は腰に響く。

 私はとある世界の冒険者という職に関して取材し。それをまとめたものを乗せている。過激な表現などがあるかもしれないがこれもリアルを届けるためにそのままお届けさせていただく

今回は職場に着く前『通勤』にフォーカスして取材し書き残した。

 ガタガタと揺れる重馬車。馬が六頭で引っ張り、荷車が三つ。一つは大量の食料と資材、二つの荷車に人がゴミのように詰め込まれている、と言ってもこれが中隊カンパニーの福利厚生の精一杯だという。

 みんなで馬車に乗って仕事場に行くだけでもマシなほうという話である。他の会社なんて勝手に馬を引いて現地集合なんてザラと聞く。馬代は最初に借金にしていつまで経っても水飲みの冒険者なんてのもいるとか……。

 なかなかこの世界は厳しいものである。

 「おい、ここらで晩飯にするから飯炊きどもはさっさと出て準備しろ、フレッシュのレモンとトマトは使うなよ、明日に使うからな」

 御者席からホロを突き抜ける大声で隊長が新人に号令をかける。一つ目の荷車の一番前。所謂五番席ってやつには決まって新人の冒険者が乗る事になっているらしく、そこだけ三つの寝藁が雑に置かれて新人共は何人でもそこで雑魚寝をする。馬の世話や旅の途中の飯の支度、宿を取るときは宿屋の親父に話しを付けるなどなど、雑用は五番にやらせるというのがこの世界の常識なのである。

 「あーあ、今日はどうしようか、豆を煮ただけだとまた文句言われて面倒だぞ。」

 号令を聞いて外に飛び出した新人三人はケツの荷車をがさりと開けると、どの缶詰を煮ようかとぐつぐつと煮えきらない話をしていたのである。

 「つかよぉ、三人で缶詰眺めてもしょうがねぇだろ、俺とガンダで火の準備はしておくから、ゴス、お前が適当に見繕って持ってきてくれ。」

 そう言って少し仕切り屋の新人がこれまた新人の大男と一緒に荷車から出る。

「どうせ文句言われるだけで殺されやしねえよ、明日には着くって話だろうから明日からは何も言われねぇさ」

 そう言って泣きそうにしているゴスを尻目に二人は火を炊く場所を探すのであった。

 調査本部キャンプを建てると冒険者はコックを雇いそこでは美味い飯を食う。しかし入口に潜る奴らがその美味い飯にありつけるのは生きて帰ってきた時だけだが……

 「しかしフェイルは勝手だなぁ、どうせ文句言われそうになったらアイツがって言うつもりで僕を一人にして……うーん豆はとりあえずかさ増しするから入れるとして、トマト缶はなぁ…どうせ明日はフレッシュを食うからなぁ……」

 今フォーカスしている中隊、サンダー中隊には3人の5番《新人》がおり、名前はフェイル、ゴス、ガンダである。

 「干し肉はとりあえず入れるとして…味付けよなぁ…塩と香辛料でいいとは思うがやれ辛いのが嫌だの甘いのが嫌だの塩辛くしろだの面倒なんだよ…ごった煮するなら卵と…」

 そうして少し気弱なゴスが独り言をボソボソと零していると男が背中を小突いてきた。

「おい、とりあえずトマト缶入れとけ!どうせ2コンカーどもは何食っても文句言いながら食うだろうし1スカウトは何も言わずに食って明日に備えてさっさと寝るさ」

 と少しばかり口の悪い男は彼らの直属の上司3テント班長であるロクスタであった

 「そんでお前らは残りの飯を頑張って平らげ明日のフレッシュには何も食えないと」

 「いやいや、僕らだって3回目の遠征ですよ、そこまで馬鹿じゃない、奴らもでっかい焚き火なんて作らないでさっさと明日に備えますって」

 「さすが製図師マッパーの卵は学習してるな、戦闘も3人でどうにかやってもらいところだな……こちとら年長組なのに上からは怒られ、下からはやれ前衛しろだの魔法が出せないだの安定器ワードが置けないだの――お前らこのままだと死んじまうぞ」

 ゴスがいつもの隊長の説教を軽くいなして聞いていると周りが馬鹿みたいに明るくなった。

 「おい、どうやらあの二人は学習してないみたいだぞ、消火に使える魔法ってお前ら使えたか?」

 「隊長、お願いします、馬鹿どもには僕にはどうにか言っておきますので今回だけは消火を手伝っていただけないでしょうか」

 「そうだな、また俺が隊長に怒られるのもしんどいし。アイツラにはげんこつカマしてさっさと飯を作るとするか、今日は手伝ってやるから」

そう言って二人は馬鹿でかい焚き木に向かうのであった。


 「だからよぉ、豆の煮込みは多少塩辛くしておかないとパンと一緒に食えねぇだろうが」

 「塩辛いだけだと酒ばっか進むんだよ、俺はこれくらいで丁度がいい、けれども明日フレッシュなのにトマト煮とか舐めてんのか」

 「辛いほうが俺はいいって言ってんだよ。え?辛味を後で入れろって?そもそもを甘く作ってんだからあとから辛くしたって美味くねぇんだよ」

 ご覧の通り2コンカーの奴らがボロクソに文句を言うところから食事というものが始まるのである。

 「今回の味付けは一応班長なので、俺等に文句行っても無駄っすよ」

 口を開けば災いを呼ぶ男。フェイルが余計な口を入れる。

 「今回はじーさんかよ、だから味付けが田舎臭えんだ、ロポイなんて人が住んでねぇクソ田舎にまともな料理なんてねぇんだな」

 悲しいことに班長も正直この中では立場が低い。

 昔は1スカウトの隊長をやっててこの会社のエースだったらしいがどうやら10年以上前にその座を自ら降りたらしいのだ。その時を知ってるのは隊長と副長…あとは事務所のばあさんくらいだそうだ。

「お前ら、文句言ってグダグダ食ってねぇでさっさと食って寝ろよ、明日は早いんだ。1時間後には出発だぞ。まぁ、バカみたいな焚き火を消してからになるから少し遅くなるだろうがな」

 隊長がそういいながら焚き火にタバコをぶん投げる。

 「隊長、消火は俺が手伝うから多少は早くなるよ。あと1時間もあれば出れるさ」

 おう、頼んだと隊長が言うと隊長は御者席に消えていくのだった。

 

 夜馬車は走る。街に向かって。

 ふとこう考えないだろうか。夜に見張りもつけず御者席には一人だけ、盗賊の格好の的ではないかと、しかし誰も襲いもしないのである、理由は簡単だ、荷車を3つも連ねて走る馬車なんざ冒険者しか居ないからである。もし襲いでもすれば、人よりも強い化け物共と相手をしている奴らを相手にしなければならないわけである。

 「冒険者(馬車乗り)には手を出すな」

 これが盗賊たちの掟なのである。


 さて、少しこの世界の話をしよう。

 この世界では死人をそのまま埋葬したり、そのまま放置してしまうといつの間にか「死の国への入口」(ピット)と呼ばれる複雑な洞窟が出現することがある。

 そしてその入口からは動く死体やでかい虫のようなもの、普通ではありえないことをする異形の者が入口から飛び出してくるのだ。

 そしてそれらを管理し、維持するのは本来であればその国の正規軍なのだが、とあることから実作業。所謂攻略ということに関しては冒険者に委託している。というのが現状なのだ。

 そして皆は思うだろうなぜ維持するのかと、根絶すればよいのではないかと。

 実は死の国への入口からは異形の者だけではない。嬉しい力を生み出しているのである。ここでは表現が難しいが、言ってしまえば魔力、そう魔力である。

 簡単に言えばこの死の国への入口(ピット)から出る力によって人間は様々な能力を獲得し、それらが密接に生活に根付いてしまっているのである。


 

 「変わろうか、寝てないんだろう」

 馬車が少し止まり、隊長が馬たちを少し休ませてるところにボソリと言う男が居た。

 「ルイスか、どうだあの3馬鹿は今回は単隊での攻略だからシメは参加させたいんだが」

 と隊長がボソりとテント長(ルイス)に漏らす。

 「それはなかなか厳しい話じゃないかな隊長。ゴスは俺込みで連れてってもいいが、他二人はどう考えても今のままだと足を引っ張るぞ、ワード《安定器》を焼いたりぶった切ったら面倒だぞ」

 それを聞くと少し隊長はため息を吐く。

 「こんなときだ、リボルトでいい。年長組だけの時は昔のままがいい」

 「しかし、そんなにダメか、フェイルはそれなりに強撃魔法スマイトは打てるしガンダも力はある、フォローすればそれなりにいけると思ったんだが」

 その言葉を聞いたや否や何も知らんと言わんばかりにルイスはこぼす。

 「あのなぁ。前回の攻略の話をしなかったか?仮設中に敵に出くわして引き付けて叩いて、そんでワードを一人で蒔いてたんだぞ、俺一人で。その間あいつらは魔法が出ないだの探知が切れてましたって言い訳したり挙句の果てに前衛が小便ちびって動けませんだぞ、石化もなにもねぇ敵にだぞ」

 「まぁ若いし、何事も経験だ。やらせるのは悪くない。ただし俺は仲間を死なす趣味は無いぜ」

 怒涛のルイスの愚痴である。これには隊長のリボルトもどうどうと落ち着かせるにしかなかった。

 「とりあえずお前の言いたいことは分かった。この先は馬を走らせながら話し合おうじゃないか、俺だって3人も旅のコックを雇ったつもりは無いと思って使いたいだけなんだからよ」

 こうして、二人で御者席に乗り、街に向かって馬車を走らせるのであった。

 

 さて、話し合いで出た結論はこうだった

 1.3馬鹿どもをこの攻略中に多少使えるように鍛える。

 2.それでダメなら街に今回の賃金と一緒に置いて別の道に進ませる。

 3.隊の構成は変わらずテント班は3馬鹿とルイスの4人であるが『合言葉』を言うとリボルトが手助けをする、そしてその合言葉がクビの通告ということである。


さて、3馬鹿の運命や如何に。そしてこれから始まる攻略。しっかりと書き残して皆様にお届けできるよう、私もここらへんで筆を休め、街に着くまで休息を取ろうと思う。


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