↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雷鳴士、世界を救う  作者: けん@転生したら才能があった件書籍コミック発売中
第2章 オイルリグ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/63

第57話 阿吽之呼吸

「アリサ、シルバとの連携は考えなくていい。いつも通り、俺との連携だけを意識してくれ」


 そう伝えると、アリサは少し戸惑ったように眉をひそめた。


「え!? ……分かったわ。でも、そもそもユウトとの連携を意識したことなんてないのだけれど」


 それはそうだ。


 俺たちの連携は、苦労して身につけたものではない。

 気づけば自然とできるようになっていた。だから、意識する必要がなかったのだ。


 だが、シルバとの連携は違う。


 本来なら、アリサが彼との距離感を測り、連携を深めるべき。

 それなのに、俺が「考えるな」と言ったのには理由がある。


 ――俺がシルバとの連携を取れば、自然とアリサもそれに馴染むのではないか?


 俺とアリサの息はすでに完璧だ。

 ならば、その俺がシルバとの距離感や動きを調整すれば、アリサも無意識にそれについていけるはずだと考えたからだ。


 いわば、俺を介した三人の連携――それが、俺が出した答えだ。


 まぁカオリに思考を誘導された結果なのだが。



 十二層の部屋に入ると、いつもの魔物が待ち構えていた。


 相手はモストード――巨大な蛙の魔物が十体。


 さらに、泥まみれの鎌を持つフェンリーパーが十体。

 骸骨のように痩せこけたその体は不気味に歪み、どこか人間じみた動きを見せる。


「行くぞ!」


 俺の声に最初に反応したのはアリサだった。


 アリサが一歩踏み出した瞬間、俺はすでに詠唱を開始している。

 彼女の剣が煌めき、一直線にフェンリーパーの肩口を裂く。

 刃が抜けると同時に、俺の《ウィンド》が穿ち、その骨を粉々に砕いた。


 互いに視線を交わすこともなく、次のターゲットに移る。


 アリサの動線を先読みしながら、俺は《シルフィード》を付与。

 彼女に風の魔力が集まり、湿地帯フィールド特有の敏捷値半減の効果を軽減させる。

 フェンリーパーの鎌が迫るが、アリサは寸前で回避し、返す刃で逆に鎌を弾く。


 俺もそこに《ファイア》、《ウォーター》と魔法を重ね、アリサがターゲットとするフェンリーパーを焼き払い、水流が呑み込む。


 さらに追撃をしようとしたところに、モストードが大きな口を開ける。

 奴は敵が射程に入ると酸を吐き出す。


 いつもなら、多少のダメージは気にせず前に出るところだが――

 今日の目的はシルバとの連携。


 俺が意識的に後退すると、アリサもそれに合わせるように攻撃の手を緩める。

 まるで約束された動きのように、俺たちは背中合わせになり、お互いの死角を補い合う。


 モストードが酸攻撃の射程に捉えたときには、俺たちはすでにシルバの近くまで退避していた。


「シルバ! 頼んだぞ!」


 シルバが大盾を構え、その巨体をすっぽりと覆う。


 次の瞬間、モストードの酸が降り注ぐが、盾の前で霧散し、地面に無力な水滴となって弾けた。


 ――狙い通りだ。


 律儀にも、酸を吐き出したモストードたちは、硬直を見せる。

 ゲームならではの隙。


「今のうちに!」


 声を掛けるまでもなく、アリサはすでに動き出していた。

 疾風のようにフェンリーパーへと駆け込み、迷いなく剣を振り下ろす。


 俺もその流れに乗り、追撃をかける。

 距離に応じて最適な攻撃を選ぶ――近ければ剣で、遠ければ魔法で。


 アリサの太刀筋が残したダメージエフェクトの軌跡をなぞるように、俺は剣を振るう。

 フェンリーパーが鎌を振り上げた瞬間、その隙を逃さず、一閃。

 斬撃が骨の接合部を正確に捉え、フェンリーパーは真っ二つに裂けて崩れ去る。


 別のフェンリーパーの鎌が唸りを上げる。

 だが、アリサはそれを紙一重で躱し、狙いすました一撃を叩き込む。

 システム的な硬直に捕らわれたフェンリーパー。

 反撃がこないと分かると、彼女は躊躇うことなく止めを刺す。


 俺の援護がないと判断したとき、アリサはより慎重に、確実に一体ずつ仕留める動きへと切り替える。


 ――そして、あっという間に骸骨の魔物を葬り去った。


 残るは、巨大なモストードのみ。


 HPも十分に削ったところで――

 この戦いの締めを飾る者の出番だ。


 愉悦の笑みを浮かべながら、カオリが己の両拳を突き合わせる。


「よっしゃぁぁぁあああ!!!」


 爆発的な勢いでモストードの巨体へと突っ込むと、全身のバネを活かして渾身の一撃を叩き込む。

 鈍い衝撃音とともに、モストードがぐらりと傾き――次の瞬間、光の粒となって消え去った。


 すべての魔物を討伐した瞬間、カオリの雄たけびが部屋中に響き渡る。


「っしゃあぁぁぁ!! やったったー!!!」


 その勢いのまま、彼女は俺たちの前に駆け寄り、次々にハイタッチを交わしていく。

 アリサ、シルバ、そして俺。


 カオリの熱気がそのまま俺たちにも伝播する。

 興奮冷めやらぬまま、シルバがアリサと俺にハイタッチを求め、力強く手を打ち合わせる。


 その流れのまま、俺とアリサも自然と向かい合った。

 一瞬、互いに目を合わせ、そして――微笑む。


「……ナイス」

「ふふっ、ユウトこそ」


 アリサの心からの笑顔を、久しぶりに見た気がする。

 そして、こんなにも自然に、真正面から目を合わせられたのは、ずいぶん久しぶりな気がする。

 といっても、二、三日くらいだが。


 彼女が腰を下ろすと、俺も隣に座る。

 アリサは照れくさそうに微笑みながら、小さく息を吐いた。


「やっぱり……ユウトと組むのが、私には一番合ってるみたい」


 どこか安堵したような、しみじみとした口調だった。


「なんだ? 今更気づいたのか?」


 軽く揶揄うつもりで言った。

 だが、アリサは真剣な表情で、こくりとうなずく。


「うん……つくづくそう思った」


 ずっと当たり前だったことを、改めて確かめ合えたような、そんな感覚だった。


 すると、俺たちの正面に座っていたシルバが、感慨深げに腕を組みながら口を開く。


「まぁ、今日で思い知ったな。アリサと組めるのはユウトだけだ」


 淡々とした言葉だったが、妙に説得力があった。


 そして、その隣に座っていたカオリが、ぶりっ子口調でおどけながら言う。


「でしょでしょ? 私が言ったように、二人はくっついてないとダメなんだから。離れると不幸なことしか起きないんだからね? これからもずぅ~っと一緒にいなきゃダメだよ?」


 にこにこと楽しげに言うカオリ。


 ……いや、楽しげというより、どこか確信めいた口ぶりだった。


「さて、この調子でボス部屋に挑みますか」


 自分でも驚くほど、声が弾んでいた。

 ずっとアリサのことで悩んでいたからか、気持ちが軽くなったせいかもしれない。


「賛成~! 私がボスのとどめを刺してみたい!」


 カオリが嬉しそうに手を挙げる。


 ……アリサと仲直りできたのは、間違いなくカオリのおかげ。

 なら、そのくらいの願い、叶えてやるのも悪くない。


「いいだろう。カオリに最後を譲る流れでいくぞ」


「やったぁ♡」


 カオリが満面の笑みで拳を突き上げる。

 その隣で、アリサとシルバも静かに気合を入れていた。


「行くぞ――十二層ボス戦だ」


 そのままの勢いでボスを倒し、一つ攻略組へと近づいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。