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銀色の恋は幻 〜あなたは愛してはいけない人〜  作者:


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血塗られた新年行事


  新年の夜が明けた。朝日と共に貴族や官吏たちが王への挨拶のために宮城に集まってくる。広い広い謁見の間に、たくさんの人が所狭しと並んで王を待っていた。


 やがて鈴の音と共に王が現れた。そして人々よりも二段高い場所にしつらえた立派な王の椅子に座る。その左隣りにはそれより少し小降りな、正妃用の椅子があった。もちろん、まだそこは空席である。

 王の右横、一段低い場所には宰相ケイカ。正妃の椅子の下段にはホアシャが座り、チンディエ、シアユン、シャオリン、そしてリンファが続く。リンファからはタイランが少し遠い。こうして離れて見ていると、部屋でのいつもの彼とは雰囲気がまた違って、堂々とした佇まいに王らしい威厳が溢れ素敵だと思った。


「皆のもの、よく集まってくれた。本年もみな息災で、国のために働いてくれ」


 ははっ、と臣下たちが一斉に頭を下げる。その光景は壮観なものだった。


 次に龍の大きな人形を持った者たちが現れ、楽団と共に新年を祝う舞を披露する。龍の頭を持つものが一人、棒を付けた長い龍の体を十人ほどが持って支えている。波打つように動かすさまは、本当に龍が生きているかのようだった。


(まあ、すごいわ……。町でも新年のお祝いで龍の舞を見たことがあるけれど、もっと小さかった。手作り感満載で、近所のおじさんたちが頑張って動かしていたりして、それはそれで楽しかったけど)


 リンファは目を輝かせて舞に見入っていた。


 その時、龍の中から一人の男が飛び出して来た。


「おのれケイカ! コウカク様の恨み、思い知るがいい!」


 そう言ってタイランの横にいるケイカに斬りかかった。


「危ない……!」


 妃たちの悲鳴が上がる。ケイカの腕を剣がかすめ、右腕を押さえてケイカがうずくまる。タイランはケイカを庇おうと立ちはだかった。


「王よ、おどき下さい! この国のためにこの男は成敗しなくてはならないのです!」


 そう叫びもう一度ケイカに剣を振り下ろそうとしたその男を、護衛兵士が背中から斬り裂いた。


「ぐわあっ……!」


 血を噴き上げ、男は倒れた。苦しそうにうめいている男の顔を見たケイカは、舌打ちをして苦い顔をする。


「この男はコウカクの下で甘い汁を吸っていた奴です。コウカクの失脚以来、落ちぶれたと聞いていましたが……逆恨みをしたのでしょう」


 男の血はケイカやタイランにも飛び散っていた。


「せっかくの新年の祝いに水をさされたな。妃たちも驚いただろう」


 四人の妃は少し青ざめてはいたが平静な顔を装っていた。宮城では、昔からこういうことはよくあるのだ。正妃になるには、この程度のことでうろたえていては駄目なのであろう。

 その中でリンファの様子は違った。まるで心がここにないかのようにうつろな目をして男を見つめていたのだ。


(タイランに血がかかっている……血が噴き出して……銀色の髪に美しい黒い瞳の、あれは誰?……森?……森の中?……あれは誰なの?……私の愛しい人を殺したあの人は……)


 リンファは息をのんだ。頭の中に浮かんだ映像が一気に繋がり、すべてを思い出したのだ。


「ああっ……!」


 突然、両手で口を押さえて叫び声を上げたリンファ。タイランが驚いて駆け寄ってくる。


「リンファ! どうしたのだ」


 近づいてきたタイランが、あの時の少年と重なった。美しい顔をして兄を斬った少年。


「来ないで! 私に近付かないで……ああ、チュンレイ!!」


 リンファは目を閉じ両手で髪をかきむしりながら叫ぶと、気を失った。


「リンファ!」


 床に倒れる寸前にタイランがその身体を受け止める。リンファの顔は真っ青で、苦悶の表情を浮かべていた。


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