No049 アイリの野望、領主編 「近況と新兵器」 織田家の血族類似者とアイリの各政策。 8歳2月、
後に重要な人物になる一人が登場します。
アイリは今日も忙しい。
日々内政に明け暮れながら他にもいろいろ仕事がある。
現在、各領共とにかく人が集まり増えていく。
アイリは地図機能の向上時に
人物事典の類別である星の枠が10枠になっているのに気が付き
それを運用している。
重要人物は皆、星一つにした。
とにかく人が多すぎて人物事典が混沌としてしまうからだ。
同名者も多く集まる。
先日でトシイエは3人になった。
トシイエとは利家、前田利家の同名者だ。
カツイエも今は2人いる。
武官の出には家がつく名が多いのだろうか。
家名を持ちたいという思いが強いのかもしれない。
織田家の同名者もきた。
ノブミツ(信光)だった。
織田信光とは信長の叔父である。
うつけものと言われた信長が信秀の後を継いだ時。
信長側について献身的に尾張内部の統一に貢献した人物だ。
当人は信長がこれからというときに死亡してしまった。
殺害説が物語ではよく使われる。そういう記録もあるからだ。
息子が2人いたが長島の一揆討伐戦で戦死している。
非常に残念な家系だといえる。
娘も一人いた。仙千代という。
一部の家系図や記録から、お市の方ではないかという説もある。
ノブミツはスキルを持っていなかったが
人物事典情報に不思議なものがあった。
元織田家というその記述にアイリが反応したのは言うまでもない。
ノブミツが織田信光の類似的存在の同名者である証明だけではない。
織田家が存在していたのだ。
聞くと兄弟に、ノブヒデ(信秀)という同名者がいた。
若くして戦死したという。妻子はいなかったそうだ。
これはアイリにとってすごく重要な情報だ。
この世界には、信長が存在しない可能性が非常に高くなった。
それと同時にお市の方が存在するのかも不明となった。
ノブヒデは、父親に位置する存在の同名者だ。
ノブミツには娘がいない。
仙千代がいなけば、お市の代行者にするわけにもいかない。
この世界は年齢も出身地も異なって人物が存在している。
異世界なのだからそれは当然なのかもしれない。
しかし歴史の修正なのか単なる偶然か何らかの関係者は出てくる。
どこかで、生まれ変わりが誕生している可能性は残される。
「浅井イベントのお市フラグはどうなるんだろう・・。ふぅ」
アイリはこの時そう思った。
しかし、ノブミツ仕官後にそれは解消されることになった。
ノブミツの仕官。
それはある種、お市発生フラグだったのかもしれない。
アイリのメイド隊に仕官希望して来た少女。
不思議なことに成人前なのにやってきた。
まだ10歳になったところだ。通常なら不採用物件である。
名前をオイチ(於市)という。これはお市の方の通説名だ。
しかもスキルを持っていた。
この年齢だと生まれた時点から持っている先行所持スキルだろう。
とても珍しいスキルだと言える。スキル名は「無償」。
お市の方の類似同名者である可能性が高い。
「無償」とは「無償の愛」につながる。
話を聞くと親がなくなったらしい。
他に頼るところが無いときにこの応募を知ったようだ。
1人でここまで旅をしてきたのだという。
アイリは、メイド隊ではなく2人目の側仕えにした。
今はアイリの部屋で、サヤカと3人で暮らしている。
10歳は奉公の年齢だ。
サヤカについてもらい側使えとして育てている。
歴史のお市の方のような不幸は避ける。
浅井相当の家に嫁がせるつもりはない。
フラグさえ立てば、歴史イベントは何とかアイリが工夫する。
自由に平和に暮らしてほしいとアイリは願っている。
メイド隊は今や10軍編成できるほどになった。
まだ未編成の予備隊員もいる。
彼女たちは完成したメイド館で暮らしている。
メイド館は巨大な建屋で、かなりの人数が収容できる。
あの濃姫ことキチョウは、後発スキルを顕現させて今や1軍の隊長だ。
努力して戦闘技能を上げたのだろう。
戦闘技能スキルではなく「努力」というスキルが発生していた。
努力スキルは技能向上のバフ的スキルだった。
アイリのメイド隊の1軍になりたい一心で頑張ってきた。
メイド隊の2軍の隊長にまでなり積極的に実績も積んできた。
そう言う方向でも後発スキルが発生することが分かった。
母上の「慈愛」もそういう方向性での後発スキルだったのかもしれない。
アイリを身ごもり愛情を注いだ結果だとも考えられる。
もちろんそれだけの素養はあったのだろう。
1軍のメンバーだけは、アイリの居館で暮らしている。
アイリが出かけるときに必ず随行するためだ。
アイリは1軍メンバーのエプロンに花丸マークを付けている。
これはメイド隊の勲章らしい。
ちなみに側仕えのサヤカとオイチのエプロンにはウサギマークがある。
アイリはアイチ領内には出かけるが
直轄領とはいえ、ギフ、ミエ、シズオカなどへは忙しくて行けない。
当然人物事典は、報告された情報しかない。
報告にのらない新しい領民の情報は全くない。
それは人が短期間で増えているアイチ領内でもいえる。
情報量が多い重要人物には人物事典で経歴などが追記される。
叔父のカネツグに後発スキルが発見できた。
「指揮」スキルだ、技能スキルである。
努力していたから、いつかは後発スキルが発生するだろうと思っていた。
各領の内政の指示は、報告を参考にするだけではない。
世界地図を使い、世界事典の地域情報を参考にしている。
特に力を入れている自由貿易郷などは
地図を見てその発展具合を確認したりしている。
まるで国つくりのシュミュレーションゲームをしているようだ。
緊急伝達方法に「のろし」を使うことにした。
のろし台を作り、緊急時に対応するためだ。
移動による情報伝達のタイムラグをそれで補う。
諜報院からの情報がいくら早くても
支配地が広がった今では数日かかってしまう。
アイリは他に一輪車を流行らせた。
自転車の一輪車ではなく工事現場の一輪車だ。
かなり開発に役立っている。
ちなみに、自転車も作った。木製の足漕ぎ自転車だ。
足で地面を蹴って進む。慣れると面白い。
玩具として作ったわけではないが何故か玩具として人気が出た。
まあ新しいスポーツ玩具であるということは否めない。
そのうちチェーンを付けてペダル式の自転車を作りたい。
それがあれば伝達速度があげられる可能性がある。
とりあえず試作として歯車を利用した物が出来た。
以前、前輪に直接ペダルを付けたら
力が必要過ぎて使い物にならなかった。
それの対策品だ。
チェーンはかなり難しい技術らしい。
一足飛びに歴史を進めると、ろくなことがないので急がせてはいない。
なんちゃって火縄銃の試作も出来た。
サイズ的には抱え筒のような代物だ。
サイズを小さくする技術も難しいらしい。
火薬の爆発力不足で飛距離がでない為、
現時点では弩や投石機のほうが有効だ。
しばらくは弩と投石機に頼ることになるだろう。
アイリは、新兵器案として気球を作らせてみた。
空からの攻撃は有効だ。物見にも使える。
熱気球なのだが熱量が不足して高度が上がり切る前に落ちてしまう。
高度の維持も難しい。
それとこの国の人は空を飛ぶのが相当怖いらしい。
とりあえず断念した。
騎馬用の馬は現在、品種改良と称した飼育活動を実施中だ。
先天的に足の速い馬を種馬として増やしていく。
アイリ直轄牧場ではこれを今、重点事項として取り組んでいる。
時間はかかるが、やがて今より騎馬隊が使えるようになるだろう。
弩は弩兵に持たせた軽弩と大型の連弩との中間の物を作った。
連弩は威力も飛距離も高いが連射出来ない為、
運用が難しく、移動に時間がかかる。連弩は防衛兵器にした。
代わりに一輪車に大きめの弩を付けた移動弩を作った。
このために一輪車を開発した。
一輪車は思わぬところで人気が出て
今や土地開発で盛んに運用されている。
移動弩はカラクリを多用した。
弩の発射角度を変えて矢を曲射用に変えると曲射が可能になる。
曲射用の矢は羽がなく先が重い。投槍を弩がやる感じだ。
直射と曲射の両方が使えることで戦略の幅が広がるだろう。
飛距離も威力も軽弩よりはあるが連射が遅いのは仕方がない。
弩兵と同じく3人で運用させる。これで弩兵は二種類になる。
投石と合わせて矢が頭上から降ってくるのは脅威だと思う。
育成と訓練が大変な弓兵に曲射をさせなくても済む。
そう言う利点もある。
弓兵は技能が高ければ直射で狙い撃ちもできる。
スナイパーとして使うことが出来るようになる。
比較的近距離に相手が来ても連射撃攻撃が出来る。
運用の幅が広がれば戦術の幅が広がる。
弓兵が曲射をするのは今後火矢になっていくだろう。
火矢は矢を銃身に置く弩では難しい。
投石機の火薬弾は、花火で苦労した技術を取りいれた。
火薬は爆発力がいまだ足りない。
しかし、今回のは火を広げるだけの従来の物と違い火花が広がる。
これはかなり驚くだろう。
火計力も殺傷力も従来品に劣るが、初戦時の敵混乱に使える。
火計用と二種類の火薬弾の運用になる。
アイリが嫌がらせに作った各種の投石壺は実戦で試験運用し
使い物にならないと判断して取りやめた。
毒は矢に塗ったほうがいい。
他は殲滅戦などの乱戦時に味方に邪魔になる。
投石機は新型に代わりつつある。
重りが重いので牛二頭で移動させる。それで移動速度を維持する。
投射は牛は必要ない。カラクリで巻き取り投射する。
切り縄などの消耗品は必要がなくなった。
新型は従来の物より飛距離が出るので
自軍後方から敵の中間を充分狙える。
分断させて敵の先陣を弩や弓が狙うという攻撃が可能だ。
前進や突撃して来たら敵の後陣が狙える。
後陣が錯乱して、ついてこいない突撃など薄皮状態になる。
まあ前衛も弓や弩で錯乱するから同じなのだが・・。
だいたい、弓ですらこの国の弓の倍以上の飛距離がある
弩に至っては3倍以上だ。
これは一方的な攻撃ターンが続くことになる。
新型投石機の最大射程に至っては、5倍もの違いになる。
下手にその射程範囲に布陣したら、それごと壊滅可能だ。
近代戦術に近い戦い方であるため、更なる機動性を重視して
防具は胸当てと籠手程度になった。頭部も鉢金という鉢巻きに代わる。
相手がアイリ軍のような武装ならまた防御主体に戻せばいい。
軍服は木綿の供給量が増えて、割と厚手の物が作れるようになった。
アイリの綿花畑支援政策によるものだ。今は各領に綿花畑がある。
麻製の物と入れ替え中だ。これで近代兵装に近くなった。
近代兵装と言っても明治維新時代くらいのものだが。
戦車は1頭立ての二輪車を使った軽戦車を作った。
直線突撃だけでなく小回りが利く。
戦車本体をかなり小型化して搭乗者一人で運用可能にした。
これは歴史上でも存在が示されている。
馬車というより御者の足場に車がついているものだ。
従来より大きめの車輪に刃を付けることで
騎馬隊に近い突撃運用が可能になる。
騎馬隊としての育成もかなり楽だ。馬車が扱えれば済む。
高い戦闘技能もいらない、馬の操作だけ巧みならいい。
こういった利点で、短期間で大量投入が可能になった。
突撃して戦場を走り回るだけである。
投射攻撃で混乱している戦場なら問題ないだろう。
車が大きめであることで悪路も乗り越えられる。
アイリ考案のバネの一つである板バネで緩和する。
これは、アイリのメイド隊がいない軍に騎馬兵として
配置する予定にしている。
これらの兵器類によって軍編成に少し違いが出てくる。
槍隊の基本編成数が減る。
任務も変わり占拠後の防衛が主となる。
投射攻撃で混乱後の初戦突撃は騎兵になるため。
むしろ機動力がある刀兵を歩兵の主力にしたほうが良くなるためだ。
集団戦が起こりにくい状況が出来上がってしまうので
乱戦に強い刀兵が主力の要になる。
やがてアイリが力を入れている抜刀隊が出来るだろう。
そうなると近接戦闘も大きく変わる。
槍でつつきあう戦闘などは、アイリの軍相手では通用しない。
槍を構えて前に出てきたら投射攻撃で散々になる。
どんな長い槍もそれをはるかに超えるところからの攻撃を受けてしまう。
長い槍を持って右往左往していたら鉄鎧の馬に蹴散らかされる。
アイチ軍の現在の槍兵は基本的に防衛軍へ配置になる。
防衛拠点用の大型投石機や連弩などの操作も訓練をしている。
防衛拠点には、今まで領境にしかなかった砦を造った。
各郡役場や郷役場などは、砦の中にあると言ってもいい状況だ。
重要拠点の自由貿易郷は、周辺に砦が多数配置される。
攻撃だけでなく防衛もアイリの重要な課題だ。
各地で製紙事業に力を入れたことで紙の供給が豊かになってきた。
活版印刷は禁忌に触れそうなので版画印刷を主体にした。
もちろんアイリ直轄事業だ。
印刷工舎を作り、地図や本の制作を行っている。
本は教育本が主体だ。
指揮官向けのアイリ軍術教本もある。
それ以外に念願だった子供向けの教育本も作れた。
まだ一人一冊配布まではいかない。貸出本だ。
教室に配置して授業中にそれを使うことが出来る。
これにより、幼年教室だったものが一般開放できた。
学校の登場となる。教育院で教育制度を確立した。
5歳から入学出来て10歳になるまで通える。
5年生制度だ。10歳を超えると奉公に出る子も多くなる。
教育時間に両親共に仕事ができることから生産効率が高い。
高学年になるとアイリ直轄事業への見学ができる。
遠足とか修学旅行とか社会見学のようなものだ。
これが結構人気が有る。
アイリ直轄事業への奉公は卒業者のあこがれでもある。
優秀卒業生には、優秀証が贈られる。
優秀証には、アイリの「よくできました。」の文字と
花丸マークがついている。
それを持参すれば、どこでもまず採用される。
4歳以下は育児院だ。乳母役の保育士が面倒を見てくれる。
仕事を持つ母親の負担を軽減する。
残念だが2歳未満は受付できない。事故の危険も考慮した。
離乳食が可能になったら来てもいい事にはしてある。
数え年だから、実年齢がわかりにくいのだ。
その代わりアイリの直轄事業では育児休暇を認めている。
育児院はアイリ工房作の子供用玩具がたくさんある。
玩具だけではなく、数は少ないが遊具もある。
外に出れない小さい子向け用だ。
小さな小屋をつなぎ合わせたもの
幼児が入れるほど大きな箱に布玉がたくさん入っているもの
室内用の小さな滑り台などが設置してある。
基本文字を覚えるための教育玩具も揃えてある。
カルタと絵本だ。4歳くらいになるとそれで遊ぶ。
学校へ通う準備だ。
これらはアイリ直轄事業で働く者は無料で利用でき
それ以外の者でも非常に低料金で利用できる。
昼食付だから食事のことを考えなくても済む。
アイリは、10歳以上の子のために
奉公に出る代わりに職業訓練校も考えている。
子供が奉公に出てお金を稼がなくても親が働けばいい。
領内は、それだけ豊かになる努力をアイリはしてきた。
連絡文書や命令書や報告書は全て紙になった。
紙の普及で大型取引などは契約書を交わすようになった。
念願の銀行公舎を作り、小切手の運用を始めた。
大量な硬貨を持つなどというのは大変だ。
銀行にお金を納めておけば、その分の取引を小切手で行える。
小切手は銀行の窓口で発行してもらう。
小切手は証文ともいう。
割り印があって、片方を発行者、片方を銀行が持つ。
その割り印で照合するやり方だ。
預金・引き出しなども同じ方法だ。
これらは一応、低価格だが手数料をもらう。
銀行はお金の貸し出しも行う。貸し金融だ。
もちろん金利手数料は取る。金利が銀行の収入でもある。
これにより、事業拡大や家を建てやすくなった。
土地を使ってくれれば、税収としての土地借地料が入る。
家や建物を建てるならアイリの建設公舎が役に立つ。
今アイリの目標は紙幣。
これは、印刷技術が何とかならなければ仕方がない。
内政に重点を置いて仕事をしているが
こういった様々なことを並行して行っている。
忙しいのは当たり前だろう。




