No016 アイリの野望、内政編 「兵制と募兵と軍師」 募兵実施。軍師を見つけた。5歳6月、
いよいよ西川郡での6か月が終わろうとしている。
こちらでの政策は終わった。
後は成果を見るだけになるだろう。
先月、防衛院に指示して募兵の手配をした。
量産型の武装を元に、初期部隊の編成を行うためだ。
実際に集まったら訓練所での訓練が始まる。
その頃にはアイリは東に行っているだろう。
基本構成を作り、部隊制度を設定する。
1分隊は12人、3人1組の班を4班分とした。
5分隊で1小隊とする。1小隊は60人。
5小隊で1中隊とする。1中隊は300人。
5中隊で1大隊とする。1大隊は1500人となる。
戦術面で行動する一番大きな規模はこの大隊となる。
但し、隊内での兵種混合はあり得ない。
隊の構成兵種は統一とする。
歩兵として、槍兵と刀兵の2種
射兵として、弓兵と弩兵と投石兵の3種
支援兵として、輜重兵、医療兵、諜報兵、連絡兵の4種
例として
槍兵1大隊、刀兵3中隊、弓兵と弩兵各1中隊、投石兵1小隊
これを第1軍団とする。軍団レベルの兵種混成はあり得る。
隊内での兵種混成はあり得ない。
これは戦術的命令と現場指揮との連携を円滑にするためだ。
しかしこの国では、隊内混成は当たり前のようだ。
だからこういうことも、きちんと制度化しなければならない。
皆が好き勝手に行動されては、作戦も何もない。
それこそ、戦え、守れ、逃げろくらいしか指揮できなくなる。
まあここではそういう戦いらしいのだが・・。
今回の募兵規模は、
槍兵1中隊、刀兵3小隊、弓兵と弩兵各1小隊、
全部で600人となる。
現時点でのマサツグ指揮下の武官数が1500人だから
1度の募兵数としては、かなり多いと言える。
もちろん戦時になると農民兵が当たり前なので
人数だけで言えば数倍に膨れ上がると言える。
「農民兵は指揮的に邪魔だし、生産性を落としたくない。」
自分たちを守る自警団になるだけでいい。
「戦場に出るのはプロの仕事。」だとアイリは言っている。
アイリは、最終的には1万人程度にするべきだと考えている。
先ほどの例でいう第一軍団というのが3つある規模だ。
それまでには、マサツグ指揮下の武官も再配備になる。
最終的には、
近衛部隊を500人ほど作り、マサツグに付ける予定だ。
出来ればその部隊には、なんちゃって日本刀を持たせたい。
最後の課題として、参謀の任命がある。
参謀とはいわゆる軍師だ。
この国では、兵種編成問題もあり戦術指揮がかなり適当だ。
しかも指揮官は前線に立って戦ってしまう。
マサツグも戦場ではそうしていたらしい。
兵種を分けた軍団制であれば、戦術指揮が可能になる。
そのためには、軍団長に参謀を付けるほうが効果的だ。
信長は兵種を分けた戦術戦をおこなった。
その時代は、有名軍師が排出された時代でもある。
山本勘助、竹中半兵衛、黒田官兵衛などなど
約束期限の半年が、あと10日に迫ろうとしていたある日。
アイリは、カンドウや直臣たちに
「三顧の礼に行ってきます。」と言って姿を消した。
意味不明な言葉だったが
周囲の者は、いつも通り出かけるのかと思っていたらしい。
アイリは、メイド隊を数人引き連れ
お出かけセットを身に着ける。
仔馬に乗って普段と異なる方向へと向かっていった。
以後、アイリの姿はいつもの場所には見かけなくなった。
周囲の者たちが、アイリを見なくなったことに気が付き
騒ぎ始めたころ。
アイリは、中川郡北部の山林の中にいた。
そこには、数軒ほどの小さな集落がある。
アイリが領主館にいたころ
軍術、軍学の教師になった人物がいた。
彼は今、防衛院直下の軍学道場で指南をしている。
その教師から師匠の話を聞いた。
歳は60を超えるらしい。
「人生50年・・・を優に超えたヨーダのようだ。」
なんちゃって・・えへへ
老齢でもあり、隠棲している地から離れないらしい。
弟子を取っては、身の回りの世話をさせているという。
アイリは、名前を聞いて興味を持っていた。
老人名は、ショウギク(承菊)
最初聞いた時には、全く気にしていなかった。
変わった名前だなくらいにしか思っていなかったのだ。
強兵政策の必要を感じ始めていたころ
軍師を見つけようと思っていた。
兵の編成を考えたり軍制などを検討していた時
何故かこの名前が気になった。
アイリは前世のオタク歴女の記憶の断片を探る。
今川義元の軍師に採用された老人、太原雪斎。
太原雪斎と名乗る前は、九英承菊・・・ショウギク!?
そこでアイリは自ら鑑定を行うためにこの地へやってきた。
この国で初めて、有名人と同じ名前の人物がいると知った。
しかも軍学師である。類似点が多い。
アイリは一人、粗末な小屋の中に入っていく。
「初めまして、アイリと言います。」
何となくそう言った。
小屋の中には老人と若者の二人がいた。
「何じゃ、小娘が弟子になりたいと来たのか?」
老人は答える。
アイリは鑑定を行う。
名は、ショウギク(承菊)64歳。 間違いなく同名だ。
頭は毛が無く、白いひげを生やしている。
まるで仙人のようだ。杖もついている。
「弟子ではなくて、お話をしたいと思って来ました。」
アイリは、この後軍学についてショウギクと話をした。
ショウギクは確かに知識があるが、経験はともなっていない。
しかもスキル持ちではなかった。単なる学士だった。
「その歳でそこまで学んでおるとは、すごい娘じゃ。」
ショウギクは、アイリを非常に気に入ったようだ。
老人のこの年では戦場に出るなどは無理だ。
アイリが、ここまで来た理由を話した。
「軍師を探しているとな、わしには無理だ。歳じゃからのう」
「しかもこの国では、軍学などただの習い事にしかならん。」
「教える事は叶うが、軍師として戦場に立つのは出来ぬ。」
アイリの鑑定からもそれは理解している。
「誰かご存じの方はいませんか?お弟子さんとか・・」
アイリは、ダメもとで聞いてみる。
「うーむ、それならこやつを連れていけ。」
「役に立つかわからんが、弟子の中では一番素養がある。」
ショウギキクは、隣にいる青年を指した。
シゲハル(重治)17歳。
軍学士、軍術技能持ち・・・そして「某策」スキル!?
アイリは青年の鑑定を見逃していた。
老人のインパクトが強すぎて
世話をしている粗末な青年など気にしていなかった。
前世知識から一つの記憶が呼び出される。
それは、ショウギクを凌ぐほど強烈だった。
竹中半兵衛、半兵衛とは通称名である。
正式には、竹中重治という。そのままシゲハルだ。
「え、え、えええ・・太原雪斎の弟子が竹中半兵衛?!」
この国に来て二番目の有名武将の同名。
しかも、英雄クラスである。良いスキルも持っている。
偶然にしては、出来すぎる話だ・・・。
この後、アイリは一人の青年を連れて
西川郷へと戻ることになる。
「ふふふ・・・英雄ついに見つけた!」
アイリの胸が高まり、夢が膨らむ。
シゲハルは、知識はショウギクに劣る。
アイリのほうが、かなり上だと言えるレベルだ。
しかし策謀に関しての閃きは、スキルで底上げされる。
知識と経験を積めば、一流の軍師になれるだろう。
ショウギクには、付き人を採用して世話係にしておいた。
シゲハルは、それで納得してアイリの元に来てくれた。
とりあえずしばらくは勉強してもらおう。
「これ・・・他にも見つけられるのかな英雄の卵。」
「この世界と前世の歴史の類似点・・・。謎だ。」
アイリはそう思いながら、約束の半年を迎えるのだった。
アイリがショウギクを雪斎の前名であると気が付いて行動した。
そこにいたシゲハルを半兵衛の本名であると気が付いた。
そして鑑定スキルをアイリが持っていた。
たぶん、アイリがいなかったらシゲハルはこの地に埋もれ
名も知られずに消えていただろう。
アイリが重度のオタク歴女じゃなかったら気が付かない。
偶然なのか・・。それとも必然なのか・・。
答えが出るはずもなく、時間だけが過ぎていった。
西川郡におけるアイリ最後の指示
それは、技術院を通して鍛冶工舎に依頼が出された。
依頼は2点これが最後の指示となった。
4郡の政策時、長の基準器として長尺を作らせた。
長尺によって縄に印をつけて縄尺を作り、距離を測ることで
測量が出来た。縄尺は巻き尺にも発展し、より測りやすくなった。
地図院に地図を作らせた時も拠点間の距離はそれでつかめた。
しかし問題は方向だ
この地の人は感覚で東西南北を知る。
星とか山とか目安を使っているらしいのだが
現代人脳のアイリには理解できない。
方向や位置は、近辺の人に聞きながらということになる。
しかし、出てくる答えは、あっちの方に村があるよという感じだ。
方位磁石が無い。作れないのが一番の問題だ。
次に時間、これもこの地の人は感覚で何時ごろという。
太陽の位置とかで決めているのだろうと思い。
技術院に話して日時計は作らせた。
しかし季節の関係や天候でこれも曖昧だ。
武器を鍛冶工舎に作らせた時
弩の巻き取り機構にカラクリを教えた。
今では、木材でも金属でも歯車が作れる。
アイリの指示は
指南車と時計の開発。
クジラ髭によるゼンマイのことも教えた。
詳細は、アイリにもわからない。
結局、絵をかいてヒントだけ与えて丸投げにした。
「急ぎじゃないから・・。」
と言い残し、アイリは指示を終えた。
そして今日からは東へ向かう。
お土産を沢山馬車に積み。メイド隊を引き連れ
お出かけセット姿で仔馬に跨る。
目指すのは、領主館。
この半年は短かったがアイリは満足している。
「少しだけ領主館で休んでから、東部視察に行こうか。」
アイリは、サヤカにそう言うと、自ら先頭に立って出発した。
数日遅れて、カンドウも東へ向かう。
東部でも、いろいろな人に出会えるだろう。
政策の多くは、西部のコピーだからカンドウに丸投げだ。
自分は、視察で動き回りたい。
鑑定と世界事典と人物事典を使いまくって・・・。




