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No103 アイリの野望、覇王編 「九州震撼」 アイリと島津軍。 10歳11月~12月

アイリからの親書というか、脅迫状に近いものを受け取った九州では領主が頭を抱えていた。

遠い九州の地でもアイリのことを知るものは多く、その軍の強さも脅威だ。

中には信用できないとか、強いというのは欺瞞だと思う者もいて、二つに分かれることになる。


アイリが一番気にしていたのは島津家。

歴史では強兵であり、九州統一を目指していた。

最後まで秀吉に抵抗し、臣下になると次に敵対した家康からも一目置かれた。

だから敵に回すと厄介な存在として、アイリの記憶にあった。


九州で一番最初にアイリに返答を出したのは、その島津家だった。

アイリは返答を知り驚く。

敵対すると思われた島津家は、アイリに恭順を示したのだ。


実のところ九州統一を狙っていたのは間違いない。

それゆえに島津家は情報網を持っていた。

そこでアイリの軍の強さを知る。


島津家は海外の貿易商によって、火縄銃の存在を知っていた。

しかし高額なため、手に入れることが出来ず。

自領での生産が出来ないかを検討していた。


例のポルトガル人が話した内容だ。

あの値段は吹っ掛けすぎだと言える。

ポルトガル人は、試射して威力を見せたのだろう。


島津家は火縄銃を見て、戦争における火器の利点を見出していたのだ。


そこへきてのアイリの軍を知ることになる。

数万にも及ぶ火縄銃を持つ兵。


その火縄銃をさらに大きくしたような兵器や見たこともない兵器。

はるか先まで飛び、その爆発と威力に驚かされた。

その兵器が数十どころか数百、いや数千はあるかもしれない。


それがアイリの軍の一部だとすれば、到底勝ち目がないと知った。

最早戦いは自分たちが、ついていけないところへと変わっている。


島津軍にも騎兵はあった。

刀もそれなりに改良して、他領と比べれば兵装は上だと思っていた。

しかし主力はやはり槍兵で、突撃を繰り返す戦い方だ。


強いてあげれば、騎兵を用いて機動的な運用をしていたとは言える。


ところがその自慢の騎兵も、刀もすべてアイリが上を行く。

やっとそろえた騎兵も数では段違いにアイリの軍が多く訓練度も違う。

刀に至っては根本的に性能が違う。


遠距離攻撃をするために弓兵も揃えた。

しかし、火縄銃には勝てない。

あの変な形の兵器に至っては、対応すら思いつかない。


聡明である島津家の領主はそう判断し、早々に返事を出した。


次に返事を出したのは、大友家だった。

アイリはむしろ大友家が、こちらにつくと考えていた。

大友家は、敵対の姿勢を表明した。


その大友家に敵対していた龍造寺家は、アイリ側に付いた。


相良家、伊東家、肝付家はアイリの言う意味が理解できていなかった。

単に攻めてくるなら、迎えうつと言うだけで反発した。


島津家と肝付家は比較的に仲が良かったようだが、意見の食い違いで敵対しあうようになった。

相良家と伊東家は手を組み、肝付家の支援に回るようだ。


これにより九州は、南北でそれぞれ2勢力が対峙することになった。

九州北部では、大友家 対 龍造寺家。

九州南部では、島津家 対 伊東、相良、肝付家。


アイリはこの結果を得て、オオサカの軍に指示を出す。


アイリが指名した者は、柴田勝家、前田利家、丹羽長秀、森可成であった。

主力指揮官ではないが、長く共に戦ってきた者達だ。

森可成の指名は、大抜擢であるといえる。


これで功績を積めば、彼らもそれなりに昇格してもらってもいい頃だ。

アイリの気持ちの中には、それもあった。

「4軍は、九州北部の大友家討伐に向かってもらいます。」


総司令官として、柴田勝家を任命。

本来なら丹羽長秀の方が向いているとも思えるが、勝家の頑張りを認めた人選だ。

長秀には参謀役として、勝家を支えるように指示した。


「龍造寺家は、こちら側になります。」

「その地で上陸し、北へ向かってください。」


支援水軍は、水軍司令官、松浦隆信

海兵隊として、小西行長を付ける。


「行長は下関を中心とした、上陸作戦です。」

「拠点を築いたら固く防衛して、陸軍が来るのを待ってください。」

「隆信は行長の支援と、海上支配をお願いしますね。」


そして皆に告げる。

「九州北部は、大切な拠点になります。」

「それを念頭に、それぞれの力を発揮して見せてください。」


そして九州南部だが。


アイリは、支援に海兵隊2軍を付けただけで、

あとは本軍の自分だけで行くという。


海兵隊は、村上武吉、九鬼嘉隆になる。


「九州南部の東からの上陸奇襲になります。」

「重要拠点を早く攻め落とすことが大切です。よろしくお願いしますね。」

これは、肝付家の領地侵攻だ。


アイリ本軍は、その南の島津領から上陸し、九州南部の西へ向かうという。

そこには、相良家がいる。


アイリは、島津軍にも同行させるつもりだった。

アイリの指揮を見せる意味もあるが、行動を共にして島津軍に功績を積ませる意味もある。

島津家の領主の慧眼を知り、将来、九州の司令官が務まるかもしれない。

そう言った思いもある。


島津家の領主の名は、タダヒラ(忠平)。

島津義弘の同名者である。


歴史では、

兄の義久が家督を継いだ時、伊東義祐が3千を率いて攻めてきたのに対して、3百の寡兵で奇襲。

これを打ち破るなどの逸話がある。

豊臣秀吉の九州侵攻では、義弘は自ら抜刀して敵軍に斬り込むほどの奮戦ぶりを示した。

兄の義久が降伏した後も、義弘は徹底抗戦を主張したという。


その後、朝鮮出兵で、

中路明軍約2万7千と朝鮮軍約2千の計2万9千を相手に7千の寡兵で打ち破った。

徳川家康もこの戦果を、前代未聞の大勝利と評した。

この他いくつもの、勇猛な記録が残る人物だ。


武勇だけでなく、戦術的にも優れていたとアイリは見ている。


アイリは仲間と共に、海路を九州に向かう。


肝付家は、宮崎のあたりの領主で、

アイリの予測では2、3か所ほど拠点になりえる場所を想定している。

その中でやはり宮崎市があった所が一番怪しいと感じている。


島津家と仲が良かったというのは、島津家の領地に近い場所に重要拠点があり

親交しやすかったのではないかという考えもある。


九州東部を南下、そこで海兵隊と別れる。


アイリはさらに南下して、南から回り込む様に鹿児島湾に入った。

桜島を目差して接岸できる場所を探すと、港が見つかった。

港に入り軍を移動、特殊諜報員に領主の居場所を調べさせる。


アイリがそちらに向かうと知らせてあるから、

行き違いや場所違いがあるといけないと思ったからだ。


ほどなくして、お互いの場所が認識され挨拶を交わす。


アイリが思った通り、スキルを持っている。

やはり芽が出ていないが、そのスキル影響があるはずだ。


タダヒラはアイリに会って驚いた。

幼い少女だからと言うだけではない、その引き連れた軍に対してもだ。


アイリの周囲には、異様な姿の女性兵士。

アイリの近くには少女たちがいて、子犬を抱いた幼い娘もいる。

戦争に来ているとはとても思えない。


それが逆に余裕がある様に見えた。

確かにアイリは、自ら前線で戦っており、下手な武将よりも戦場を駆け巡ってきた。

話をすると、アイリの凄さが分かった。

見た目に騙されてはいけない。タダヒラはそう思った。


アイリは中身おばさんの記憶を持ったオタク歴女だ。

おばさんは失礼かもしれない、ギリギリセーフだったと言っておこう。


アイリから話される作戦に舌を巻いた。

自分も情報を得るための手段を持っているが、この少女はそれよりも上に行く。

一度東に向かい海沿いを、北に4郡ほど占拠すれば、その次辺りに本拠地があるという。


敵を蹴散らしながら北上していくというのだ。

それによって、敵は勝手に戦意を無くしていくはずだという。


肝付家も相良家もアイリのことをよく知らないで、反勢力側になっている。

伊東家に関しても同じだろうが、大友家とは隣になる為、容易に敵対しにくい。

むしろ、龍造寺家と島津家両方に接しながら敵対してしまう相良家が変だ。


実態を知ることで、その過ちに気が付くだろう。

別の意味で、肝付家は申し訳ないが生贄的存在になってもらう。

どこからでも、侵攻できるという怖さを知ってもらうためだ。


きっと島津家との対策で南に兵を集めるだろうが、

突然わいたように北から兵が来ることになる。

北は味方であるはずの伊東家、気が付いた時点ではもう遅いということになる。


アイリは島津軍とともに北上を開始した。


肝付家への牽制でそちらにも目立つように島津軍の兵を出してもらう。

但し島津軍は侵攻しなくていい。

適当に姿を見せて警戒させれば役目は終わりだ。


アイリは行軍中でも旅と同じで、仲間たちと楽しくやっている。

移動中でも「ににんがし、にさんがろく、にしがはち・・・。」

九九をやってたりする。


最近ハチも、九九の時にワンワンとあいずちを、うつようになった。

本人も参加しているつもりなのだろうか。

本人じゃなくて本犬だが。


アイリの余裕は全て、特殊情報員からの情報だ。

どこに敵がいるのか、どれくらいいるのかが分かっている。


それと生きたレーダー兵器が二人いる。


相良家はアイリが来るなら、北からだと思っていたのか南は手薄だった。

目に見えない距離から攻撃するだけで、少ない兵は四散する。

四国の豪族もそうだったが、初めてそんな攻撃を受けるとかなり衝撃の様だ。


実は一緒にいる島津軍も驚いていたりする。


タダヒラは敵にしなくてよかったと、自分の判断が間違っていなかったことを安心した。

街を見れば、騎馬隊と歩兵隊がすぐに占拠していく。


歩兵隊の威嚇射撃と、騎馬隊が駆け回れば抵抗をやめてしまう。

全くと言っていいほど、防衛が機能しないまま北上は進んだ。


「もうそろそろね。」アイリが突然口にする。

重要拠点が近くなって敵兵が集まっているらしい。

遠くてそんなことはわからないが、防衛の為の陣を敷いているらしい。

タダヒラも、よくわかっていない。


こんなに離れても、敵がわかるのはサヤカぐらいだ。

視覚できなくても、スキルのせいで視認できてしまうという恐ろしいものだ。

さすがにこれだけ離れると、ナオトラも気が付かない。


敵陣から1000メートルも離れた場所で、アイリは攻撃準備の指示をする。

「火箭、大砲準備!」太鼓が鳴る。

「攻撃開始!」太鼓が二つ鳴る。


「そのまま続けてね、しばらくしたら止めて前進してきてね。

「それじゃあ行きましょか。騎馬、歩兵は前進。」

遠距離攻撃をしたまま、距離を詰めていく。


敵は遠距離攻撃だけで、直撃を受けなくても逃げまわっている。


「騎兵は左右に回り込んで待機、歩兵は前進しながら射撃攻撃!」太鼓が3つ鳴る。

指示した通りに兵は動き、前進しながら射撃してさらに前進する。


この時点では遠距離攻撃も終わっていて、後ろから移動してくる。


様子を見てアイリは指示を出す。「突撃開始!」

歩兵が中央へ走りこんでいく。

騎馬隊は、左右に回り込んでいた場所から、敵陣後方へ突撃した。


タダヒラは聞いてみた。

最初に攻撃し始めたときに、敵はどれくらいいたのか。


アイリは、簡単に2万くらいかなと答えた。

敵はアイリの4倍もの兵数を用意してきたわけだ。


何食わぬ顔をしてアイリは、そのまま前進していく。

アイリの周囲にはまだ、メイド隊と抜刀隊がいる。


敵軍をそのまま騎兵と歩兵に任せて、アイリたちは平気で前進していく。


戦場の先にある領主館に来ると、メイド隊と抜刀隊に指示を出す。

「居館制圧!」


この指示を受けて、キチョウ、シホウ、ナオトラ、マナリが指揮をとって突撃していく。

リンコも近衛隊員として初の戦闘参加だ。

キチョウの後ろを、頑張って付いていく。


リンコはまだ年齢不足だが、アイリがキチョウと一緒ならいいと許している。

本人がやる気があるのなら、その意思は尊重する。

だいたい、マナリだって未成年だ。


居館にも防衛兵はいたのは知っている。たぶん領主の直臣たちだ。

精鋭かも知れないが、数もそれほど多いわけではない。

アイリの近衛軍は、アイリのすべての軍の中で近接戦が一番強い隊だ。


ほどなく領主は捕縛になった。

アイリの元へ、メイド隊と抜刀隊は帰ってくる。


アイリは領主に言う。

「これで理解できましたか?」

「まだ戦いたいなら、逃がしますけどどうします?」


アイリの元へ、戦場にいた兵達も戻ってきた。


いつものアイリの命令を守り、農民兵は見逃した。

降参するものや、戦意のない者は捕縛されて連れてこられる。

一緒に火箭隊や砲兵隊も集まってきた。


もちろん島津軍は、アイリといて一部始終を目にした。


相良家の領主は、その場で降参した。

これ以上続けても無駄だと分かったからだ。


アイリは言う、

「内政官として一から勉強をやり直す気があれば、私の下でこの領地の為に働きませんか?」

ここの領主は黄色でもなく、赤色はすぐに消えた。

経歴を見ても、さほど問題ないと思ったのだ。

ただ単に浅慮だったと言える。


アイリはそういう駄目さも認めた上で、やる気があれば再出発の道を作るつもりだ。

負ければ、領主など斬首と言うこの国で、アイリの言動はどう見えたのだろうか。


タダヒラの人物事典は青くなり、アイリに対して信望と言う文字が出た。

領主の答えは、もちろんやり直すというものだった。


アイリは頑張れば家名も戻すし、この領の内務官にもすると言った。

内務官とは、アイリ直下の官吏院やその下位組織の実務直轄院の上級職員を示す。

いわゆる代官的な役割を持つ。


これは領政に携われるというチャンスを示したことになる。

あの、細川家の領主の時と同じだ。


その後、アイリはさらに北上して龍造寺家の領地に入った。


龍造寺の領主に会う為と、その後に大友家に行くためだ。

大友家を倒せば、伊藤家もそう簡単に敵対し続けられない。


それに大友家の領主にも興味がある。



すでに12月中旬になっていた。


ここへきてのアイリの気がかりは、聖祭日の事だけだった。

「聖祭日までに終わるかな・・。」

全くブレ無いアイリだった。





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