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*ACT.2-2
最初に今の距離を望んだのは私だった。
***
中等部の頃、私たちの関係は今みたく良好じゃない訳じゃあ無かった。
むしろ、普通の。ありふれた。
何処にでも居る、幼なじみだった。
お互いの家も行き来して。
登下校も特別な理由が無い限りは殆ど一緒で。
他愛の無い話だって、普通にしてた。
幼なじみだから。
それが、私達にとっての当たり前であり。
定義でもあった。
だけど、周りから見れば。
その当たり前や、定義は。
私達の思ってた以上に、複雑なモノなのだと気付かされた。
"あの日" を境に
私は佑希に
一線を引き、
私は あの頃 とは変わって
彼も あの頃 とは変わって
お互いに、
この距離が交わらないことなど
もうとっくに分かってたことなのに
最初にこの距離を
望んだのは、
私だった筈なのに
願ったのは、
私だった筈なのに
現実となって、心底嬉しい筈なのに
私は、時々―本当に極稀に
胸が痛み、あの頃を思い出すのは
どうしてなんだろうか。