*REST-parallel side*佑希
いつだって、空回りで
テストみたいに上手くはいかない――
***
朝、教室へ入ればいつも通り真っ先に君を探す。
それがいつの間にか俺の習慣になっていたなんて。
君は知る由も、無いのだろう。
席に着けば、隣には君が居て。
支度をする俺を睨んでいるのは、見なくても直ぐにわかった。
手を止めて、君に視線をやれば
君と目が合って。
不覚にも、あの頃を思い出す。
「なに、徠梦。」
言いたいことがあるのであろう彼女に、俺は声を掛ける。
「別になんでも。」
真面な返事がこないのは予測通りだったけど。
こんなんじゃ、会話にもならない。
「言いたいことあるなら言えよ。」
できるだけ嫋やかに、宥めるような口調で言う。
「だから別になんでもないってば。」
そんなちっぽけな努力も虚しく、彼女は依然として変わらなかった。
「だったら、何で睨むワケ?」
「ただ気紛れ。」
俺はでかいため息をし、会話にならない会話を終わらせた。
徠梦が俺に対して睨んでいた理由なんて、そんなの聞かなくともいとも容易く分かっていた。
きっと、黒板に貼られた模造紙が原因――
否、正確に言えば俺が原因だろう。
まぁ、多分。否、きっと。
理由は其以外にもあるだろうけど。
幼なじみで、家も隣同士で席も隣同士の俺たちの距離間は。
それぞれ遠いところにあって
彼女に近づこうと触れようと
手を伸ばし足掻けば
彼女との距離は
縮まるどころか広がるばかりで
そんな彼女を見ていると
俺たちは未来永劫、交わることは無いのだと
痛感してしまう。
俺は、黒板に視線をやる徠梦の横顔をぼんやり見詰めた。