9.騎士?たちがやってきた
閑話にしようか迷いましたが本編の進みが遅いのでスキップ。
そして精神的に疲れているせいか話の内容が思ったよりダークサイドに落ちて行く……
1週間後。
陛下が用意した騎士たち20名が屋敷へとやって来た。
「コーキング以下20名。今日より殿下の指揮下に入ります」
「ディザスティ王国第5王子のラートです。
これからよろしくお願いします」
右手を胸に当てる騎士団式の挨拶を行う。
ざっと彼らを見渡したところ、先ほど名乗ったコーキングが20歳半ばで残りの19名はセージュとそう変わらない20歳手前だろうか。全体的に若い。
近年は戦争も起きていないし大きな災害も起きていない。
戦いと言えば街の近くに発生した魔物の討伐くらいだろう。
そのせいもあってか彼らは『鍛え抜かれた肉体と精神』とはかけ離れた見た目をしていた。
コーキングはまだマシ、という感じだ。
(城の訓練場にいた騎士達はもうちょっと立派だったんだけど)
もしかして新兵ばかりを選んで送って来たのかな。
理由は多分僕に指導経験を積ませる為だ。
でも突然僕が頭ごなしにあれやれこれやれって言うのも良くないよね。
「まとめ役、部隊長はコーキングに任せても良いのかな?」
「はい、問題ありません」
「よし。現時点では任務は特にないんだ。
けど、いつ出動命令を下しても良いように日々の鍛錬は怠らない様にね」
「畏まりました」
「ゼス。彼らを宿舎に案内してあげて」
「はい。では皆様こちらへ」
執事のゼスに続いて歩いていく騎士たち。
チラチラと僕を見る目には嘲笑に近い光が宿っていた。
どうせ5歳の子供のお守りと考えているのだろう。
さてどうしようかな。
お母様からはしっかり手綱を握れと言われたけど。
それから3週間。
僕は時々騎士たちの様子を眺めに行くだけで特に口を挟む事はしなかった。
ちなみに彼らが真面目に訓練している姿はほとんど見ていない。
じゃあ何をしているのかと言えば騎士宿舎の1階にある食堂で雑談していたりカードゲームをしていたり。
随分と余裕そうだ。
その結果なのか深夜。
僕は警鐘で起こされることになった。
ビーッ、ビーッ、ビーッ!
「!」
ばっと飛び退くようにベッドから転がり落ちた僕は膝立ちの状態で室内を確認した。
室内は寝る前と変化なし。どうやら暗殺者が忍び込んだとか屋敷が火で包まれているとかいうことはなさそう。
じゃあこの今も頭の中に鳴っている警鐘の理由はなにか。
前回は聖女の女の子に危機が迫っていたのを知らせてくれたみたいだし、今回も何か事件が起きているのだろう。
じっと音に意識を向けてみると距離と方角がぼんやりと伝わってきた。
(距離は100mくらい。ということは敷地内か)
方角は使用人棟の方。
僕は窓を開けてそちらを確認した。
すると1階に明かりと複数の人影。
見回りではない。ということは賊か。
この警鐘は間違いなくあれを伝えてくれていたようだ。
(階段に回っていては見失う。ならば)
僕は魔力をロープ状に伸ばして窓から垂らし、それを伝って地上に飛び降りた。
賊はまだ最初に見た位置にいる。というか誰かと対峙、いや襲われている人が居るのか!
全力で使用人棟に向かって走り、賊が開けたと思われる窓から中に飛び込む。
素早く状況確認。
賊は背格好からして男が2人。襲われているのはメイドのリンナか。
咄嗟に飛び出してきたから僕の手に武器の類は無い。
これで大人2人をどうやって制圧するか。
(この世界に魔力と言うものがあって良かった)
再びロープ状に伸ばした魔力で賊Aの左手と賊Bの右足を結び、同様に賊Aの右足と賊Bの左手を結んだ。
魔力に感触はほぼ無いので結ばれた事に気付いていないだろう。
そこでようやく奴らは僕の飛び込んで来た音に反応してこちらを振り返る。
「な、誰だおわっ」
「ちょ引っ張るな!」
振り返った拍子にお互いの手足を引っ張り合って倒れ込む賊AB。
僕はその隙を逃さず奴らにニードロップをお見舞いした。
これなら子供の体重でも急所を狙えば十分なダメージを与えられる。
「ぐえっ」
「ごふっ」
無事に賊の意識を刈り取ることに成功したところでリンナに声を掛ける。
「リンナ無事?」
「はい。って、王子!? なぜこのようなところに?」
「部屋の窓から明かりが漏れてるのが見えたんだ。
それより無事ならこの賊を縛るのを手伝って」
「賊? いえその2人は……」
「深夜に使用人棟にいる使用人以外の人物は賊でしょ?」
「そ、そうですね! 王子の言う通りです!」
リンナはどこかおろおろしてたけど賊に襲われた直後なのでそれも仕方ないか。
ちゃんと僕の指示に従って動けているので十分に精神的に強いと見るべきだろう。
縛った賊は窓から外にポイ捨てだ。
明日になったらゼスに侵入の目的などを聞き出してもらおう。
「ところでリンナはこんな夜中にどうしたの?」
「ちょっと嫌な夢を見て目が覚めてしまいまして、お水を1杯頂こうと思って食堂に向かった帰りです」
そこで運悪く侵入してきた賊と鉢合わせてしまったと。
悪い事って立て続けに起きるよね。
今回は未然に防げて良かったけど。
ちなみに警鐘も止まったのでこれで一件落着だろう。
と思ったのだけどリンナが申し訳なさそうに申し出てきた。
「王子。言うべきか悩んだのですが、先ほどの2人には見覚えがあります」
「そうなの?」
「恐らくというか間違いなく騎士団の人です。洗い物を取りに行った時に何度か声を掛けられましたから」
そうなのか。最近訓練に身が入ってないなと思っていたけどまさか犯罪行為にまで手を染めていたなんて。
でも騎士が罪を犯したとなると体裁が悪いだろうな。
「まさか騎士の中にスパイが紛れ込んでいたとは世の中スパイだらけで物騒だね」
「スパイ?いえ、え?」
「だよね?」
「は、はい。そうですね!」
僕の詰問にリンナはコクコクと頷いた。
よし、これで騎士が罪を犯したのではなくスパイが騎士のフリをしてしていただけになった。
後はあのスパイ達を適当に処分すれば終わりだろう。
騎士は最初10名の予定でしたが、倍の20名に増強。




