1.始まりの夢
以前から私の作品を読んでくださってる皆様、いつもありがとうございます。
始めましてな皆様ようこそ。
新作投稿開始です!!
投稿ペースは週2~3、1話2000~3000文字
シリアスとか残酷描写、ざまぁはありません。
災害救助がテーマなので緊迫したシーンはあるかも、くらい。
ご都合主義と主人公の年齢不相応なところはご容赦ください。
『緊急地震速報。三陸沖でマグニチュード8.5超の地震を観測。大規模な津波の危険あり。
総員緊急出動準備。繰り返す。総員緊急出動準備』
天井に備え付けられたスピーカーの放送を聞いて一瞬で全員が手を止めてすぐさま動き出す。
その動きには一切の迷いがない。
僅か3分で出動準備が整い後は司令部からの出動命令を待つばかり。
『……ええい、命令はまだか! 司令部は寝てるんじゃないだろうな!』
『この10分の遅れで何人犠牲者が増えると思ってるんだ』
『中隊長の山本だ。責任は私が取る。車両部隊は全車出動する!』
『『了解!』』
本来なら命令を受けずに動くことは厳罰に値する。
しかしこれにより数千人の命が救われたことが後日調査で明らかになる。
代わりと言ってはあれだが、司令部の初動の遅さの方が注目を浴び批判の的になるのだった。
『中隊長。救助活動ならびに第一次支援活動滞りなく完了しました!
それと、隊長が最後に助けた少女も無事です』
『そうか……それは良かった。では、後を頼んだぞ』
『『はっ!』』
瓦礫の下敷きになっていた少女を救助している最中に起きた余震により崩れた瓦礫で瀕死の重傷を負った俺は、自慢の部下たちに見送られながら静かに息を引き取った。
――――――
目覚めれば広いベッドの上。
(今のは、夢?)
さっきまで見ていた夢の中とはまるで違う天井を見上げながらぼんやりと考える。
ここは、そして僕は……
「ラート様! あぁお目覚めになられたのですね。良かった!」
突然僕の視界を埋めながら驚きの声を上げる成人前くらいの綺麗な赤毛の女性。
彼女の名前はセージュ。僕付きのメイドの一人だ。
目に涙を溜めて抱き着きたいのをぐっと我慢しているようだ。
普段冷静な彼女がここまで慌てている理由は何だろう。
あ、あれかな。
窓辺に置いてあるミント草の植木鉢が記憶にあるものよりちょっと成長している。
「セージュ。僕もしかして長い事寝てた?」
「3日です。ラート様は熱を出して倒れたと思ったら3日も寝込んでおられたのですよ。
私もう目覚めないんじゃないかと心配で心配で」
「そっか。ありがとう、心配してくれて」
「そんなお礼なんて」
わたわたと両手を振って謙遜する姿はちょっと幼く見える。多分素が出てるんだな。
このまま彼女とお話しするのも楽しそうだけどそうも言っていられないだろう。
3日も寝てたという事はそれなりに大事になっている筈。
「セージュ。僕が起きたことを報せて主治医の先生を呼んできて」
「はい、直ちに」
僕の指示を受けてセージュが寝室から出ていく。
さて、先生が来るまで多少時間があるだろうし、今のうちに着替えを済ませておこう。
そう思ってベッドからよいしょと降りた僕は、しかし自分の行動に首を捻った。
(なにか変だ)
何が変なのかいまいち明確にならないけど変だ。
こういう時は立ち止まって状況を整理して考えるべき。
僕は誰か。
ラート・ディザスティ3歳。
ここディザスティ王国の第5王子だ。
ディザスティ王国は東側を海に突き出たD字型の国土を持つ中堅国家で北を魔族領、西に帝国、南側は複数の小規模国家と隣接している。
帝国との国境にもなっている山脈とそこから流れる川のお陰で豊かな水源と肥沃な土壌を有しており農業は盛ん。東側の海洋資源もあるので食料自給率は高い。
なので本来なら海を持たない帝国から狙われそうなところだけどそうでもない。
その理由は我が国が災害大国だからだ。
地震、津波、台風、干ばつ、山火事に土砂崩れ、果ては魔獣の大量発生まで。
なにがしかの災害が毎年のように起きる為に、呪われた大地と呼ばれる程で誰も欲しがらないのが現状だ。
そんな国の5番目の王子がこの僕だ。
(あれ僕……3歳、だよね)
3歳ってこんなあれこれ論理的に思考して自立して行動するものだっけ。
あ、もしかしてさっきまで見ていた夢。あれのせいかも。
夢の中では僕は今よりずっと大人、それこそお父様よりも年配の姿をしていた。
その記憶というか経験に引っ張られたのか。
それが違和感の元らしい。
う~ん、でもまぁいっか。
別に今日までの記憶が無くなった訳ではないし。
皆にはちょっと驚かれるかもしれないけど。
そうこうしてると扉がノックされお母様とセージュ、あと年配の男性(多分お医者様)が入って来て、皆一様に驚いた顔をしていた。
「ラート。起きていて大丈夫なの!?」
なるほど、僕がベッドから降りて自分の足で立っていたから驚かれたらしい。
「はい。ご心配をお掛けしました。今はこの通り元気です」
くるりと横に一回転してみせて元気をアピール。
お母様はそれでほっと安心してくれたんだけど、念のためにと診察を受けることになった。
「ふむ。確かに健康そのものですな。ただ」
「ただ?」
「先日よりも魔力が増えているように感じます。
恐らく死の淵から生還した者に時々見られるあれでしょう」
「まぁ!」
魔力ってなんだろう?
夢の中では出てこなかったけど、珍しいものなんだろうか。
お母様も驚いているところを見るに、いやお母様は増えたことに驚いてるのか。
じっとお母様を見つめるとその体から白い靄のようなものが立ち昇って目に集まっているのが視えた。
これが恐らく魔力というものなんだろう。
お母様は自分の目に集めた魔力で僕の事を確認したのか頷きながらにっこりと笑った。
「この子は将来大魔導士になるかもしれないわね」
そうなのだろうか。
まだ魔力がどういうものか分かっていない僕には答えようもない。
でもそれでも1つ分かっていること、いや決めたことはある。
夢の中の自分や周囲の仲間たち。
過酷な環境に恐れず飛び込むその勇敢な姿。
助けることが出来た人達の笑顔。
そして、助けられなかった人の無念。
……
僕が将来なるのは多くの人を助ける最高の災害救助者だ!




