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七十五 【魔人化 Ⅱ】

 

 人外と話すルシファーの会話と砂の人外が放った能力で、過去の出来事を思い出したと思われるクロウ。

 そうなると大変面倒な事が起きると思ったルシファーは、咄嗟に依代をその場に捨て去り思念体となってクロウの身体へ入っていった。


「「お前、何やってんだ?」」


「「ぬっ!?貴様!!」」


 ルシファーは強制的に融合をしようと入っいたのだが、SL(エスエル)列車から勢いよく吹き出る蒸気のように背中から追い出されてしまった。


 これは誤算だった。


 依代を手に入れ思念体も安定するようになったルシファーは、いつかクロウが魔人となって暴走した場合、融合して制御すれば良いと安易に考えていた。

 過去にもそうしてクロウを止めたこともあり可能だと思っていたのだが、それは甘い考えだった。


 ルシファーは依代に戻り、完全なる魔人化を遂げたクロウは自分では止められないと思い参りながら、ふとクロウを見ると、


「チッ、やはり黒龍をここへ……ん?」


 クロウの頭上から立ち上る茜色の光にルシファーは気が付いた。


 明らかにクロウから流れ出ている光は、クロウが魔法を使い気絶する前に目にしたと言っていた光と同じ色をしていた。

 それをルシファーは魔法を使った際に出る魔力光の欠片だと思っていたのだが、それは魔力とは全く異なる光であった。

 体から出るその光は細長く、次々に出てきてはプツプツと糸のように切れて離れていくように見える。


 あれか、あやつが言っていた光。

 体から糸を引いているようにも見えるが……もしや!()()()のリリハと同様のものなのか!?


 ルシファーは光の形状に見覚えがあり、クロウに魔人化を解くよう忠告をした。


「クロウ!今すぐに魔人化を解け!!」


 体から出ていく光は段々と数を増していっている。


「ぐあぁーー!!」


 しかし、クロウはルシファーの言うことに耳を貸すことなく砂の人外を蹴り上げたり魔法で手の指を吹き飛ばしたりと甚振(いたぶ)り遊んでいた。


 そもそもクロウは記憶が蘇ったのか。

 他の倒れている者には目もくれずに至る屈辱を与えながらクロウは笑い、砂の人外が悲鳴をあげている中で何処からかの攻撃にクロウは反応した。


[――バシュンッ]


「あ?」


 突然、クロウの体に小さな何かが衝突して弾け飛んだ。


「チッ、遊んでて気づかなかった。

 もうあんな近くに来ていやがったのか」


 魔人となったクロウには、常に体の表面上に魔力が行き渡り防御魔法が張られている状態であった。

 如何なる攻撃も効かないようだが、その攻撃は遠くからこちらに向かってきていた人外の群れから放たれたものだった。

 すぐそこまで来ていることに気付くと、クロウは砂の人外から手を離して魔法陣を展開し魔力を腕に集中し始めた。


 肩から腕にかけて赤と黒のプラズマが走り赤い魔力光が手の中に眩しい程に輝きだすと、それを強く握り締め粒状になった魔力弾を人外の群れに振り撒くように薙ぎ払った。


 すると、魔力弾を放った直後に一つの小さな生命力にクロウは気が付いた。


「あそこ……人間がいるじゃねぇか」


 レイチェルが言っていたもう一人の人間なのか、人外の群れの中から人間の生命力を感じ取ったクロウは、薙ぎ払った魔力弾とは別の魔法を繰り出し、その地球の人間と思われる者元に遠隔魔法で地面の土で構成した足枷を生成して足止めした。


 ――!?


 突然地面に足を取られた人間はその場で倒れ込んだ。


 そしてその者の周囲に防御魔法を張り巡らせ、クロウの魔法攻撃が通らないように仕掛けた。


 散りばめられた魔力弾は夜空に輝く星々のように綺麗な赤色の光で、ゆっくりと放物線を描くように向かっていった。

 しかし、その見た目とは裏腹に人外の群れに着弾した瞬間、とてつもなく大きな大爆発が起こった。

 まるでそれは数発の核ミサイルを一斉に撃ち落としたような威力で、目の前には視界を遮る程の砂埃と爆炎の壁が広がっている。

 そのバカでかい魔力放出を見てルシファーはクロウに激怒した。


「貴様!魔人化を解けと言っている今、なぜそのような魔法を!!」


 広範囲に広がる爆炎の熱波がこちらまで巻き込む程に迫ると、このまま死なすのはまだ早いということでクロウは砂の人外と倒れている者達を熱波から遠ざけるように全員を遠くへ蹴り飛ばし、魔力の残り少ないルシファーに防御魔法をかけた。


「ルシファー、お前はあいつらを拘束しとけ。

 魔力が残り少ねぇのにここに居られると邪魔なんだよ」


「なんだと!貴様、次は何をするつもりなのだ!?」


 クロウは再度、両腕に魔力を集中し始めた。

 足元に大きな魔法陣を展開し、背面にも魔法陣がいくつも展開された。

 魔力を練り込み、先程の魔力弾よりも魔力光が強く輝きを放っている。

 目で確認できた人外の群れは一掃したのにも関わらず、クロウはまたどれ程の魔法を繰り出そうとしているのか。


 すると、クロウから出ていく茜色の光が魔人化を遂げた時にも増して多くなっていた。


「チッ!おい!何をしようとしているのか言わぬか!!」


「うるせぇな。

 向こうに人外が集まってる気配がするから消し飛ばすだけだ。

 いいからさっさと行けよ」


 ルシファーはこの場所に向かっている他の人外の生命力を探してみたが、今しがたクロウが骨すら残らない攻撃魔法で全滅している。

 向こうに集まっていると言うのは大陸外の関係のない人外を指しているようだ。

 魔人化を遂げたことで遠く離れた場所の生命力に敏感になっているようだが、わざわざ大陸外の者まで殺す必要はない。


 自在に魔法を使えるようになっているようだが、普段の魔法さえ魔力放出量が異常な今、このままでは魔力切れの心配もある。

 今のクロウを止めることは自分では不可能と思ったルシファーは、ジハードに念話を送った。


「「聞こえるか黒龍よ!ここへ来てクロウを抑え潰せ!こやつはどこか正気ではない!

 この場所から感じられる人外の気配を全て消そうとしている!」」


 一時の記憶を取り戻したと思われるクロウは全く言うことを聞かない。

 魔人化したクロウの暴走を止められるのはこの世界にジハードしかいない。


 そうしている間にも、クロウは上体を低くし腰の横でボールを囲むように両手を合わせ始めた。

 これはいつかジハードに放とうとした"魔力波"の構えになっている。


「かーめーはーめー……」


 クロウの魔力核は更に膨れ上がり、放とうとしている両手の中の魔力の塊もクロウを直視できない程に輝きを増している。

 放出しようとしている魔力量にルシファーは焦り、ジハードを念話で呼びかけつつクロウに止めるように必死で説得をした。


 しかし、


「……波!!」


[ズドーーーーーーン!!]


 その魔力波はとてつもなく大きく、一つの大陸を飲み込むだけでは済まない魔力放出だった。

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