十二 【言霊の代償の代償】
ガイアに妖精種の身体を依代とする際に訳も分からず使わされた能力をジハードは使えと言う。
「あの能力はこの世でもっとも強力な能力です。もちろん魔法よりも」
「そうなのか?魔法よりも先に使わされて忘れてたぜ……"死"のワードを入れたフレーズで発動するんだっけ?っつーか、死んだ奴の魂をぽんぽん使うのはどうかと思うけど、何でもできるなら今この能力で輪廻や子孫をどうにかできるんじゃねぇの?」
クロウの言う通り言霊は蘇生以外は万能の能力。
しかしながら、そうはいかないとジハードは言う。
クロウはジハードからあの時のガイアの説明を思い出しながら能力の説明を聞く。
ガイアから聞いた通りの能力だったが、"魂の代償"について驚くべきことを知ることに。
「え……待てよ!魂の代償ってガイアの中にストックされてるものだけじゃねぇのか!?」
「誓いを立てた者の魂が能力発動に必要なのは事実ですが、それは"発動"に必要という代償。言霊は強力な能力ゆえに、世界の何処かで発動に使った魂と同じ数の代償が行われます。悪く言えば犠牲ですね……ご存知なかったのですか?」
自分のために捧げられた魂を使い、万能に近い能力を使う事ができるが、言霊を使ってしまうと周りの者や見ず知らずの者が犠牲となると言う。
どのような形で代償がくるかは分からないようだが、過去にガイアが使った時には、その世界でかつてないほどの天変地異が起きてしまったようだ。
すると、クロウの顔が真っ青となり始め、小刻みに震えながら小さな声でジハードに質問をした。
「俺……ガイアに言われて言霊使っちまったんだぞ?代償は何だったんだ?」
「……分かりません。依代に魂を入れるという事がどれほどの代償を払うのか」
クロウはそのことをガイアから説明をされていない。
そのような能力を使わされた怒りが込み上げ、ガイアの生命力を探知し始めた。
「ちょ、ちょっと待ちなさい!魔王様には依代が必要だったのです!ですが、貴方にこのことを話して拒むことを分かっていたから話さなかったのだと思います!」
「じゃあ何も知らねぇからって周りの人間が犠牲になっても良いってのかぁ!あぁ!?必要なことなら俺が言霊を使って恵華やレイチェルが死んだらどうすんだよ!!」
ジハードは何も言葉を返せなかった。
強い力には犠牲は付きもの、そして神が成す力は神の気まぐれであり、誰であろうと逆らえない。
しかし、今のジハードにはそれをクロウに言うことはできなかった。
すると、
「黒龍よ、良く喋るようになったな」
「!!」
突然後ろからの声に振り向くと、ガイアが転移して来ていた。
「ガイア……てめぇ!!」
[キンッ!]
クロウはガイアの顔を殴りにかかったが、一瞬でジハードがガイアの前に移動し、クロウの拳を紫色に光を放つ手の平で受け止めた。
「落ち着きなさい」
「何にも話さねぇこいつが悪ぃだろ!
どけよコラァ!!」
片手で拳を受け止められたことに気にもとめずに、クロウは怒り狂いジハードの言うことも聞けない状態に。
するとジハードは受け止めたクロウの拳を握り始め、途端に紫色の光がクロウの全身を包み込んだ。
「魔王様の敵意は私への敵意と見なします。冷静に話しができないのなら一度寝ましょうね……」
「あぁ!?訳わかんねぇこと――」
包み込んだ光は形状を変えだし、クロウの体からたくさんの人の腕が現れた。
「な……何だこれ!」
すると、体から現れた腕は拳を握り、クロウの腹や背中を乱打し始めた。
[ドドドドドドドドドド!!]
「カハッ……」
回避もできない状況に紫色の拳を意識が飛ぶまで浴びたクロウは、攻撃が止むと同時に倒れ気絶してしまった。
「気性の荒い子ですね、嫌いではないですが。申し訳ありません魔王様……聞いていらしたんですか?」
「全てではないがな。まぁ良い、いずれ話さねばならなかったことだ。此奴を起こしてくれ」
どこからか分からないが、話しは途中からガイアに筒抜けだったようだ。
ジハードはクロウの体に触れ、再度紫色の光がクロウを包み込むと、息を吹き返したように目覚めた。
「っ痛〜……何すんだてめぇ!今の気持ち悪ぃ腕はジハードの能力なのか?」
「能力って程のものではないですが、私の聖神気法の一つです。とりあえず落ち着きましょうね」
落ち着きましょうって……めっちゃボコボコにされたんだけど?
聖神気法で気絶するまで全身を強打し、目覚めた後も痛みが残る程だったが、不思議と骨が折れるなどということはなかった。
ここで暴れてもまた同じことをされて痛い目をみるだけだと思い、クロウは煙草に火をつけ落ち着くことにした。
「どうだ?少しは俺のことが分かったのか?」
「……分かったところでって感じだな。っつーか答えろ、あの時使った言霊の代償は何だ?神の使いなら分かんだろ?」
「……」
すぐに答えないガイアの反応を見ると、確かに何かの代償は発生していたようだ。
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