◆◆◆ 第9話:無限の距離? 毎日のウォーキング感覚で踏破しちゃえ! ◆◆◆
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「いっち、にっ、さーん、しっ! ほらみんな、しっかり腕を振って歩く!」
新大陸の砂浜を出発したシーラ一行は、光の帝国の中心部『帝都』に向かって快調に進んでいた。先頭を歩くシーラは、巨大剣『ナイトメア・ブレイカー』をリュックのように背負い、ピクニックの引率者のように元気いっぱいだ。
だがその時、周囲の景色が突如としてグニャリと歪み、果てしなく続く真っ白な一本道へと放り出されてしまった。
空から、帝国空間防衛隊長を名乗るエリート騎士の高慢な声が響き渡る。
『フハハハ! 闇の野蛮人ども、よくぞ我が帝国の最終防衛ライン【無限拡張の回廊】に入り込んだ! ここは空間そのものが絶えず引き伸ばされ、帝都までの距離が文字通り「無限大」となっている! 貴様らがどれほど足掻こうと、計算上、永遠に辿り着くことはないのだ!』
その言葉を聞いて、闇の兵士たちはその場にへたり込んでしまった。
「隊長、ヤバいっす! 無限ってことは、一生歩いても着かないってことですよ!」
「俺たち、ここで餓死する運命なんすね……!」
絶望のどん底に沈む兵士たち。
しかし、シーラは全く動じることなく、笑顔でアキレス腱を伸ばす準備運動を始めた。
「もう、みんな大げさだなぁ。要するに、ただ真っ直ぐ歩けばいいんでしょ?」
『フン、強がりを。無限の距離を歩けるものなら——』
「あのねえ、ウォーキングは、健康の基本なんだよ!」
『……はい?』
シーラは腰に手を当て、空に向かってビシッと指を突きつけた。
「無限だか何だか知らないけど、毎日コツコツ歩いてればそのうち着くでしょ! 景色を楽しみながら歩けば、あっという間なんだから!」
「いや隊長、景色ずっと真っ白っすけど!?」
部下のツッコミも意に介さず、シーラは大きく深呼吸をした。
「いくよーっ! 気合と根性のォォ……『超絶・健康ウォーキング』ぃぃぃっ!!」
シーラが凄まじい気合と共に第一歩を踏み出した瞬間。
ズドォォォォン!!*と、空間そのものが悲鳴を上げた。
「いっち! にっ! いっち! にっ!」
シーラが大きく腕を振り、ズンズンとリズム良く歩くたびに、周囲の空間がアコーディオンのように「ギュムギュムギュムッ!」と物理的に圧縮されていくではないか。
『なっ!? ば、馬鹿な!? 彼女が一歩を踏み出すたびに、無限に拡張されるはずの空間が、力任せに縮んでいく!? 空間の相対性理論が……ただの歩幅と気合に負けているだと!?』
エリート騎士のパニックをよそに、シーラは爽やかな汗を流しながら、さらにペースを上げる。
「ほらみんな、遅れないで! 良い汗かこう! ウォーキングの後はご飯が美味しいよ!」
「うおおおおっ! 隊長が歩いた後ろだけ、普通の道になってるぞ! ついていけぇぇっ!」
無限大の距離を誇った絶対防衛ラインは、シーラの「健康的なウォーキングを完遂する」という理不尽な気合によって、ものの10分足らずで圧縮されてしまった。
そして。
「ふぅーっ、いい運動になったね!」
軽く汗を拭いながらシーラが顔を上げると、目の前には荘厳な光を放つ帝都の正門がそびえ立っていた。
『えっ……ウソでしょ……無限、なのに……』
エリート騎士の掠れた声が空に響き、そのままショックで気絶したのか、通信がプツンと途絶えた。
「さあ、適度に体もほぐれたし、いよいよ帝都を真っ暗にしちゃおう! みんな、突撃ー!」
どんなに高度な空間理論も、無限の数式も、シーラの「毎日のウォーキング感覚」の前では、ただの心地よい散歩道に過ぎなかった。
適度な疲労感と圧倒的な気合を胸に、闇のヒロインはいよいよ光の帝国の心臓部へと乗り込んでいくのである。
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