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第37話 商店街へ

ちゅーるを食べた猫たちに導かれるように美久は商店街に入った。


いや、導かれるというより、押し出されるように。


後ろの猫たちが、じりじりと距離を詰めてくる。


でも、2メートル以内には入らない。


前の猫たちは、美久が進む方向に合わせて道を開ける。


まるで、見えない力で操られているかのように。


古い商店街。


昭和で時が止まったような佇まい。


アーケードはあるが、屋根は穴だらけ。


雨漏りの跡が、地面に染みを作っている。


看板がまだ残っている。


木製の看板、ブリキの看板、ホーロー看板。


文字は色褪せているが、まだ読める。


「猫田薬局」

「三毛屋食堂」

「虎斑書店」

「白猫美容院」

「黒猫写真館」

「茶トラ時計店」

「サビ猫金物店」

「ハチワレ洋品店」


「全部猫の名前!可愛い〜!」


美久の興奮は最高潮。


でも、心の中では違うことを考えていた。


(これ、本当に昔からの名前?それとも...)


後から変えられた?


住人が変わってから?


人間じゃない住人に...


考えかけて、やめた。


考えたくない。


考えたら、怖くなるから。


(でも、調査で見た情報では『猫関連の店名ばかり』って書いてあった。やっぱり本当だった)


商店街を歩いていると、突然、空気が重くなった場所があった。


「うっ...」


まるで、見えない壁にぶつかったような感覚。恐怖と絶望が、この場所に澱のように溜まっている。


猫たちも、この場所を避けているようだった。少し距離を置いて、警戒するように。


「ここで何かあったのかな...」


(掲示板で見た『トラウマのある場所』の報告...)


美久は、鈴を取り出し、軽く振る。


チリン...


澄んだ音が響くと、重い空気が少し晴れたような気がした。


「大丈夫。みんな一緒だから、怖くないよ」


独り言のように呟いて、先を急ぐ。振り返ると、そこは薬局の前だった。

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