9 掃除屋の話9
最初の現場のことはよく覚えていない。
先輩に促されて入った部屋で、私は立ち尽くしていた。先輩は言葉少なく指示をした。私はそれに従い、無我夢中で三人の死体を袋に入れて、バンに運び込んだ。
帰りのバンの中で、先輩は
「これが俺たちの仕事だ」とだけ言い、そのあとは何も話さなかった。
「お前のやるべき代償としての仕事だ」と私には聞こえた。
受け入れるかどうかは自分で決めろ、といわれているようだった。
夜明け前の街を走るバンの窓から、まだ見えない日の光を探しながら、私は考え続けた。それほど時間はかからなかった。
これが、私の仕事だと、受け入れた。
次からは、先輩の指示も増えた。段取りや、改造無音ポリッシャーの使い方を不愛想に教えてくれた。
やがて、この仕事が、ある性質の現場にだけに限定されたものであることを先輩は教えてくれた。つまり、社会の埒外同士が衝突した結果、残念ながら被害者が生じた場合に、私たちに仕事が依頼される。
「それ以外に関わっちゃならない」
その線引きは絶対であり、警察関係者はその約束を守る限り、黙認してくれる。
私にはそんなルールは半信半疑だったが、何度も現場を経験するうちに、本当だと思うようになった。どの現場も、あまりにも静かで、まるで事前に立ち入り禁止になってるようだった。
「俺たちは見えない存在になっている」と先輩は言った。
街を綺麗にするために存在を許される不可視の存在。




