5 掃除屋の話5
茶髪の男が顔を抱えてうずくまる。それで十分だった。
肩を押さえた力がわずかにゆるんだ。私は腰を少し上げた。
背後の男は、目の前の状況に驚きながらも、私の肩を再度強く握った。その時に捕まえたな、と私は思った。肩にしっかり握る力を感じながら腰を更に上げる。背後の男の体が腰の動きに併せて持ち上がったのを感じる。
「お」という驚いたような声が聞こえた。片足が上がったのだろう。重心が崩れたのがわかる。そのまま、腰を右側に切ると、肩をしっかり握った背後の男が片足のまま前に重心が動いたのを感じた。前に少し体を沈めると、背後の男がベンチを超えて、前に移動してきた。その動きを生かして、茶髪の男の方に誘導した。ベンチを超え、私の背中を超えて、男は飛んで行った。その先にいた茶髪の男をめがけて、鈍い音がして、目の前に二人の男がからまっていた。
ここが逃げ時。私はベンチの上に立ち上がり、飛び越えて逃げた。男たちが何かを言っていたが無視する。視界の向こうに巡回から戻ってきた警官が見えた。
いずれ彼らも警官に気が付くだろうから、逆方向に逃げることにした。逃走先は人が通らない、判りにくい出口を目指して走った。
出口にたどり着き、周囲を見回し彼らがいないのを確認したあと、何事もなかったように歩き始めた。数分もしない距離に、先ほどの金髪の女性が待ち構えていた。




