3 掃除屋の話3
仕事の後、いつもの場所までバンを走らせてもらい、そこで別れた。
「また、連絡する」と先輩は別れ際に不愛想に言い、バンは人気のない裏通りを走り去っていた。
アパートに帰る途中に公園がある。繁華街の谷間にぽつんとある公園で、すぐ脇には交番が建っているが、今は巡回中なのか無人だった。入口付近の自販機でホットコーヒーを買って、ベンチに腰かけた。
目を閉じて、さっきの美しい死体のことを考える。詮索など余計なことと判っている。出来事の結果の後始末。それだけだ。でも忘れがたい死に顔だった。
いつの間にか眠っていた。長くはない。数分くらいだろう。目を開くと、茶髪の男が笑顔で私を見つめていた。
「ねぇ、何してるの」
ベンチに座った私を見下ろすようにして男は話しかけてくる。
眠気は消えた。相手と自分の距離が近すぎるなと思いながら、
「休憩してました」と答えた。
「ははっ」という笑い声が真後ろから聞こえた。私はびっくりして少し体を浮かしたが、その体を押さえるように背後から両肩に手が乗せられた。
「こんな朝早くに、こんなところで」茶髪の男は、ポケットの中に手を入れたまま、距離を詰めてきた。ああ、やだなぁ、カツアゲかなと私はうんざりした。
早朝のベンチに、ツナギを着たくたびれた男を見つけ、ちょっとした狩りの気分なのだろうか。どうやってこの場をしのぐか疲れた頭で考え続けた。
彼らには見たままの掃除のおじさん、いや、自分なんかを本職の人たちと見間違うのは、彼らに失礼じゃないかとも思う。
ちょうどその時、茶髪の男の後ろを、女性が横切って行った