表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
掃除屋の恋  作者: takerou73
2/63

2 掃除屋の話2

すべてが終わった後の部屋は独特な匂いがする。


入室前に準備が必要だ。ツナギから小瓶を取り出す。メントールの香りの、普段は喉に塗るための軟膏を、鼻腔の周りにたっぷりと塗りつける。

それでも入った瞬間、細かな匂いの粒子が飛び込んできた。

広々とした部屋、隅に段ボールが少しだけ積んである。床の真ん中に、大柄なの小柄の二人の男が重なるように横たわっていた。

遠目で彼らの状態を確認する。色々と赤い。

「満開だ」

「何か言ったか」

いえ、と答える私を不審そうに先輩が見る。


私には、一面満開の真っ赤な花が見える。

これは比喩ではない。

人の顔が覚えられない人は、人の顔を何かに変換するのだという。そうやって記憶を補っているのだと。それとは少し違うかもしれないが、私は死体の赤い部分が全て、植物、おおむね赤い花に変換される。

大柄な男の右頭頂部に「大輪の深紅のバラ」が咲き、唇の端には黒い花弁が散っている。シャツの腹部はダリアがいっぱい乗せられ、開いた隙間から覗く今にも弾けそうなイチジク。あ、潰れた。鼻をツンと刺激臭が突く。

小柄な男はこめかみにだけ花が咲いていた。小さな丸いボケの花。それ以外は何もなかった。美しい死に顔だった。死んでいるのか疑いたくなるように、薄く目が開いていて、流れた涙の跡が残っていた。

「とっとと始めるぞ」

先輩に促され、収納袋に手早く二人を入れ、特注の台車に乗せる。床一面の彼岸花を特殊なアルコールで拭きとっていく。一輪も残さないように丁寧に作業を続け、夜明け前に仕事は終わった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ