魔族のルーツと銃(ガンド)
「なぁ、アリス」
「何かしら?」
「これは必要なことなのか?」
「そりゃそうよ」
「俺としては、逃げ出したいんだが・・・」
「だ~め。あきらめて」
事の始まりは朝のゴタゴタの後の食後にさかのぼる。
「ヒカル、そのままそこの席で待っててね」
「いいけど、何でだ?」
「いいからいいから」
そう言うと、アリスは大広間から出て行く。しばらくしてアリスはキャスター付きホワイトボードとその他いろいろなものを持ってきた。
「さて、授業を開始します」
「な、なんだと!!」
そして、今に戻る。光も暴れて抵抗を試みた。しかし、すぐにメイドに抑えられていすに縛られてしまった。
「こ、殺せ~。座学なんてごめんだ!」
「オーバーね。まぁいいわ。とりあえず歴史にしましょうか」
アリスは一冊の本を取り出して読み始める。
「え~っと、とりあえず『魔族』についてね」
『元は『魔族』も『人間族』なのよ。ただ、数百年前に『人間族』の中から一時期魔力を持った人間が誕生したのよ。それが今の『魔族』の祖先。原因はわからないけど、当時はかなり迫害されていたそうよ。それで、数十人の迫害を受けた祖先たちは北の大地を目指したの。北の大地には『竜族』や『人狼族』、『吸血族』などの種族がいたわ。彼らは、『人間族』よりも知能が高かった。そして、迫害された祖先たちを北の大地に住まわせて自分たちも『ヒト』の姿に変えて共に生活して、今に至るわ。今では、その種族の純血はほんの一握りしかいないわ』
「これが『魔族』のルーツよ。聞いてる、ヒカル?」
アリスが一区切りして光を見やる。腕と胴をいすに縛られているものの、その体勢で眠っていた。
「・・・」
アリスの攻撃。投擲攻撃。教科書?が光めがけて飛んでいく。光にヒット。頭に100のダメージ。光は目を覚ました。
「い、痛ぇ。お前、何てことするんだ」
「人の話を聞いてなかった光が悪いわよ。さて、次は30年前までの話よ」
「だから、俺の意見も聞いてくれ~!!」
光の悲痛な叫びを無視して話始める。
『祖先たちは北の大地に根付いたはいいものの、その厳しい環境での生活は困難だった。祖先たちは、先住種族の彼らに魔力の制御と錬金術を身に付けて何とか生活が出来るようになった。そして、30年前に事件がおきた。『人間族』は神を崇め始め私たち『魔族』を異端とみなして宣戦を布告してきたの』
「まだ、私は生まれてなかったけど、すごい戦争だったそうよ・・・」
「そうなのか・・・。先生、質問!」
「はい、ヒカル君」
「この城はかなり無防備に見えるけどどうなのですか?」
「大丈夫よ。結界を張ってあるし、定期的に点検もしてるわ。昨日はレヴィとデウスが担当だったはず・・・」
光は昨日の会話を思い出す。確かに、あの時デウスは結界がどうのとか言っていた。
「じゃあ、町のほうは?」
「国の境界線に門番を配置してるから大丈夫。今は私たちが攻めていかない限り戦争は起こることはないわ」
「そりゃどうしてだ?」
「そうね・・・、例えばあなたはこれを持っている」
そういって拳銃を机の上に置く。
「子供が十人目の前にいて、十人が木の棒を持っている。あなたはその子供にけんか売る?」
人数は圧倒的に向こうが多いけど武器が武器だ。明らかに勝敗がわかる。
「売らないだろ、普通」
「そういうことよ」
「なるほどね・・・」
つまりは、圧倒的な武力の差があれば、人数は問題ではないと言うことだろう。今のところは。
「さて、ちょうど銃が出てきたことだし、こっちの話もしましょうか」
光は縛られているが、姿勢を正す。
「あら、さっきよりも乗り気ね」
「当たり前だろ。こういうもんに惹かれてしまうのは男の性だからな」
「あっそ・・・」
『そもそも、銃が登場したのは戦争が始まる20年位前。その頃に『人間族』の国『クライスト』に産業革命が起こり、資源の奪い合いが始まったのよ。そこで、武器が必要になった。そして、それが商人の手によって『アーケロン』に流れたのが起源ってこと。そして、流れた拳銃を魔力で弾を撃ち出すように改造したのが銃。その当時は使用者の魔力を吸収してたけど、10年位前に開発された自動魔力供給機構がマガジンに備えられたわ。ちなみに、旧型は撃てる回数は使用者の魔力量に左右されていたけど、新型はあらかじめ決められた弾数だけど使用者の魔力量に関係なく撃てるのが利点ね』
説明して一息つくアリス。光は椅子を左右に揺らしてがたがた鳴らす。
「先生、質問!」
「はい、どうぞ」
「じゃあ、魔力量が多ければ多いほど旧型の方が使いやすくて、少なければ少ないほど新型の方が使いやすいって事だな」
「そういうことね。だから、今でも旧型を使ってる人が多いわ」
「な、る、ほ、ど・・・ぐわ」
あまりにも左右に揺らしたために横に倒れてしまった。
「でもさ、それだと武器を作る資源の多い、えっと・・・『クライスト』だっけか。人間側の方が戦争では有利でないか?」
倒れながらでも、聞いていく。もっとも、光自身で起き上がることは出来ないが。
「そうね。向こうが魔力を軽視してなかったら、私たち魔族はこうやって生活はしていなかったかもね。何せ、銃の威力は鉄の機動兵器の装甲を撃ち抜く威力だったそうよ」
「すごいな・・・」
「今はどうか知らないけどね・・・。さて、軍事関係はわかったかしら」
「おう。これは俺の好きな分野だからな」
アリスはその返事を聞くとうれしそうに微笑む。
「そう。それはよかった。さてと、それじゃ今度は魔力についての説明にします。現役の研究主任に聞いた方がいいと思うから移動しましょ。あと、ついでだから魔力の測定もしてもらおうか」
アリスはキャスター付きホワイトボードを押して大広間を出て行く。結局あのホワイトボード意味あったのだろうか・・・。
「って、俺は動けないんだよ。だ、誰か紐を解いてくれ。誰か~~!!」
大広間に光の叫び声がこだまするのであった。
ちなみに、ホワイトボードですけど、作者が最後の最後まで存在を忘れていたために使用はされなかっただけです。
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