友達以上恋人未満
目が覚めて光が気づいたこと。それは
「全身痛ぇ・・・」
それもそのはず、床で布団もなしで寝ていたら普通は痛い。なぜ、布団のある場所で寝ないと言うと
「スゥスゥ」
この部屋唯一の布団のあるベッドはアリスが独占状態。と言うかむしろここはアリスの部屋だから当然である。
「今度デウス以外に相談するとしよう・・・」
光は部屋を見回す。衣装箪笥と本棚と机が置いてあるだけの広いだけの部屋だ。それ以外にあるとすれば、洗面所とトイレくらいだ。
「無駄に広い部屋だな・・・」
本棚にある一冊の本を手に取る。タイトルは『魔学のススメ』
「パチモンくさい本だな」
『魔法とは体内の魔力を使って神秘を起こす方法なり。魔力とはすなわち自然界の生命力なり。魔力を保存する量は個人差があり、個人によって魔力の性質や特性も変わる』
「中身はパチモンじゃないのか。いまいち意味がわからんが」
一通り内容を読んだときだ、奇怪な目覚ましがなり始める。そして、その数秒後に「んっ」と言う声ともぞもぞ動く気配がする。
「おはよう」
振り向けばアリスがおきていた。黒い髪はぼさぼさで不機嫌です、と顔に表れている。
「おはよう・・・、頭痛い・・・」
どうやら二日酔いらしい。
「少し待ってろ」
光は洗面所に向かい適当にコップを取って水を入れて、それをアリスに渡す。
「ほら。少しすっきりするぞ」
アリスは震える手でコップを受け取り一気に飲み干して空のコップを光に返す。
「うぅ、あまりマシにならない」
「そもそも飲みすぎだ。自分の許容量を把握しておけよ」
光の指摘にムスッとするアリス。
「えらそうに。誰のせいなのよ・・・、うっ」
文句を言おうとしたが、口を押さえる。
「おい、ここで吐くな。耐えろ。むしろ飲み込め。あぁ、仕方ない」
アリスの手を強引に引っ張り、トイレに連れ込む。
「も、もう無理」
「しゃべるな。いろいろ口から出るぞ」
トイレにアリスを放り込む。
―――――自主規制―――――
「ふぅ、すっきりした・・・」
さっぱりした顔でトイレから出てくる。さっきまでの蒼白顔はどこへやら。アリスは洗面所で2~3回口をすすぐ。
「マシになったか?」
「おかげさまで。ありがとうヒカル。やっぱり私の婿ね」
「そのことで話がある」
「?」
「はっきり言わせてもらう」
「うん」
「婿にはならない」
「そうこなくっちゃ・・・・、えっ今不穏な言葉が聞こえたような・・・」
アリスは目をぱちくりさせて聞きなおす。
「だから、婿にはならない」
「・・・、なにゅ~!!」
そう叫ぶや否や目がうつろになり、頭から湯気が立ち上る。
「おい、しっかりしろ。話を最後まで聞け」
ゆすってみても、叩いてみても反応はない。うつろな表情でうわごとを繰り返すだけだ。
「婿に、あはは。ならない・・・。私は、私は・・・」
ドアを開く音がする。
「おっはよー。アリス、起きてる?」
ドアの向こうから出てきたのはルーシーだ。光はルーシーを部屋に引き込む。
「ちょっ、ちょっと。ヒカルどうしたの」
「いいから、これを見てくれ」
光はルーシーに変わり果てたアリスを見せる。アリスはと言うとベッドの上で座ってうつむいている。さながら某ボクサーが燃え尽きたポーズだ。
「あ~、何かしたでしょ。まさか、大人の階段を上ったから?」
「違う。実は、かくかくしかじか」
「うまうま、なのね」
「「・・・」」
お互いに沈黙してしまう。光としてはこの冗談が通じるとは考えてなかった。ルーシーも同じでまさか、『かくかくしかじか』を実際に使うとは思わず、条件反射で返答してしまった。
「え~、オホン。実はな・・・」
光は改めて事の顛末を話す。ルーシーも最初こそ話をまじめに聞いていたが、面倒になったのだろう途中で相槌だけに変わっていた。
「と言うわけなんだ。どうすればいい」
「知らない。アリスが悪いわけでなさそうだし。ヒカルが考えればいいと思う。じゃあ、私先に朝ごはん食べるから。ちゃんとアリスを起こしてあげてね」
「お、オイ!」
ルーシーは話を適当に切り上げて部屋から出て行く。光はというと何もない空間に腕を突き出すだけだ。その腕はすごく哀れに見える。
「カム・・・バック」
「さて、どうするか・・・」
目の前にはうわごとをしゃべり続けるお姫様。
「ヒカルは、ヒカルは・・・。あはは、婿に・・・なってくれな~い」
「だめだこりゃ」
しゃべり方まで暴走をし始めている。
「あぁ、姫さんよ。最後まで聞いてくれ」
「私は・・・私と・・・はぐれるわけに・・・は・・」
「もう面倒だからこのまま話すぞ」
「婿は・・・誰とキスをする・・・」
壊れ方が半端ないアリス。
「お互いにいろいろ知らないことがあるだろう。そういうことも含めてだな、まずは友達からで付き合っていきたいんだ」
光は一気に話す。呆けていたアリスの目に徐々に生気が戻ってくる。
「私のこと嫌い?」
「嫌いではない」
「私とあなたは友達?恋人?」
「友達だ」
「恋人」
「友達だ!」
「恋人」
言い争ううちにお互いの顔が近くに行く。
「あぁ、面倒だな。友達以上恋人未満で納得してくれ」
光の妥協案にしばし頭を考える。
「・・・わかった。それより」
「なんだ?」
アリスは白い頬をほんのりと赤く染める。
「顔・・・近い」
「あっ・・・」
光もつられて顔を赤くする。
「う、うるさい!友達以上で恋人未満な関係なんだからいいだろ!!」
「顔赤いよ。照れちゃって、可愛い」
挑発するアリス。
(うわっ、マジでうざっ)
だが、ここで本音をぶちまけてしまえば、説得の効果がなくなるだろう。ぐっとこらえて光も反撃に出る。
「そっちこそ、顔赤いぞ。姫さん」
むっとした顔をして突き飛ばしてきた。わずかな力だったのに体勢が悪かったのが原因でそのまま後ろに倒れる。そして後頭部を強打。
「痛っ」
「その『姫さん』やめてもらえる?」
どうやら、光が『婿殿』と呼ばれるのと同じでアリスも『姫さん』と呼ばれるのは嫌らしい。
「俺がこの世界に来る前の世界では、相手をあだ名で呼んでたけどな。友情の証として」
もちろん嘘だ。だが、ここで言いくるめないと後々大変なことになると光は判断した。
「そう・・・。それじゃあ、仕方ないわね」
「ああ、仕方ないよな。ところで、俺に個室はないのか?」
いくら友達以上恋人未満の関係とはいえ、女の子と同衾と言うのは体裁が悪い。と言うより光の精神衛生上悪いとしかいえない。
「全室満室となっております」
にっこりと微笑みながら拒否をしてきた。
「いくら何でも姫さんと同室って言うのはまずくないか?」
「こっちの世界では仲の良い友人は男だろうと女だろうと一緒の部屋で寝泊りするのよ」驚きを隠せない。まぁ、異性と見なければいいことだろうけど・・・。
「そんなもんかね・・・」
「そんなもんなのよ。友人に男も女もないものなのよ。さて、朝食に行きましょう」
納得のいかない説明ではあったが、光の説明もアリスにとって納得がいかないであろうからお互い様ではある。しかし、理不尽だと思う光であった。
アリスの台詞の中にとある歌詞をいれています。気づいた人はいるかな




