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魔王に婿入り!?  作者: 虚幌須
二章 異世界へようこそ
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風呂とホモ疑惑

夕食時。魔王はアリスの言ったとおり復活していた。昼食時とは違って覇気がある。

「いや~、すまないね。私は落ち込むといつもああなってしまってね・・・。悪い癖だよ」

朝食時とはテンションが違ってる魔王。それもそのはず、ワインのグラスとボトルがテーブルの上に乗っかってるのだから。周りを見てみると、ワインを飲んでいないのはルーシーと光くらいだ。一番飲んでるのはベールと呼ばれていた女の子だ。ボトル3本をあけて追加をメイドに頼んでいる。隣にいる藍色の髪をしたボーイッシュな女の子はすでに飲むのをやめている。隣を見るとアリスも少しずつだが、飲んでいる。

「なぁ、アリス。ほかにお酒ってないのか?」

「ん、お酒ってワインのこと?ワインの種類はいっぱいあるけど?」

「いや、そうじゃなくてだ・・・」

どう説明すればいいか悩む光。光も多少はお酒類は飲めるが、ワインは苦手である。

(米を蒸留したお酒って言えば良いのか。いや、そもそも米類がこの世界にあるのだろうか?)

通りかかった給仕長のメフィスを呼び止めることにした。

「あ、メフィスさん。変な話だけどさ、この世界のお酒ってワインだけしかないのか?」

口元に指を運んで考えるメフィス。

「伝え聞く話だけどね、お米を蒸留したお酒はあるそうよ」

「あるんだ。申し訳ないけど持ってきてもらえる?」

「それは無理ね。この城には置いていないし、作ってるのはクライストだからね。交易してるわけじゃないから手に入らないかもね」

「そうですか。ありがとうございます」

光はメフィスに頭を下げると、メフィスはにっこりと隣を見るように進める。

「別に良いわよ。私は。でも、隣のお姫様は不満みたいよ」

光が隣を見てみると、グラスを傾けるピッチを上げてるアリスがいた。

「そんなに、そんなに私と話すのが嫌?メフィスさんと話すのがそんなに楽しい?」

グラスではまどろっこしいと言う勢いでボトルを一気にあおるアリス。お姫さんなんだからそんな飲み方やめろと思う光。この時点ですでに4本を空けて5本目に入っている。

「あ~、姫さんそのくらいでやめたほうが・・・」

「何よ。他人行儀に『姫さん』なんて。私は魔王の一人娘で次期魔王候補のベアトリスよ。城のみんなからはアリスって呼ばれてるのよ。それなのに、私の婿殿は・・・。ほかの人は名前で呼んでるのに、私だけ仲間はずれ?私だけ特別扱い?どうなのよ!!」

一気にまくし立てるアリスに驚く光。周りからは「あちゃ~」や「アリスの悪い癖だ」なんか聞こえてくる。

「いや、魔王さんにだって名前で呼「お父様はどうでもいいの!!」はい!」

魔王の方をチラッと見るがどうやら気づいていないのか気にしていないのかベルゼーと呼ばれていた男とワインを楽しそうに飲んでいる。

「聞いてるの!私は私はね・・・・」

そこまで言ってアリスは机に突っ伏してしまった。

「あ~あ。アリスがここまで飲んだのっていつ以来だ?」

「確か、元彼がとんでもないくらい女たらしだったと知ったときだっけ。あの時も相当だったよね」

藍色の髪をしたボーイッシュな女の子とサターヌが話す。そして、二人は光を見据える。

「ちょっと、婿殿。愛しの姫様が酔いつぶれてるんだから介抱して上げなよ」

「そうですよ。あなたが原因なんですから」

二人に責められて思わずたじろぐ。

「いや、だから俺は婿になるって・・・」

おまけに、にらみつけられてしまった。ため息ひとつついて、光はアリスを背中に背負う。

「ちっが~~~う。こういうときはお姫様抱っこって決まってるでしょ!!」

またもや怒られてしまった。光は仕方なく持ち直す。首元とひざ下に腕を置いて持ち上げる。心地よい重みが腕に乗る。

「さぁ、部屋へGO。部屋までの道わかる?」

「ああ、だいたいは」








無事に部屋にたどり着くことができた。アリスをベッドの上に寝かせる。

「スゥスゥ」

心地よさそうに寝ているアリスを見て光は「可愛い」と思ってしまった。しかし、思い直す。

「待て待て。相手は一国の姫様だぞ。それに、顔は可愛いが性格は癖が強い。おまけに、人間じゃない。落ち着け・・・俺」

頭を抱えてうなる。ハッと頭を上げてひらめく。

「風呂に行こう」

どうやら、悩むことをやめてしまったみたいだ。

大浴場までの道のりを思い出しながら歩を進める。階段を下りるところで声をかけられる。

「お、婿殿じゃないか。風呂に行くのか。一緒に行かないか?」

振り向くとそこにいたのは金髪の男だ。確か、朝食のときと夕食の時に居た。

「・・・」

「あ、自己紹介まだだな。俺はデウス。よろしくな、婿殿」

「ああ、よろしく。金髪」

皮肉を込めて特徴だけで呼ぶ。

「その調子だと、『婿殿』と呼ばれるのは嫌いみたいだな。まぁいいや。よろしくな『ヒカル』」

光の皮肉をさらりと受け流して、名前で呼ぶデウス。

「改めてよろしく、デウス。そして、すまなかった」

自分の愚かさ加減にカァッと頬が熱くなる。

「いいさ。元を正せば俺が原因だしな。そんなことより、風呂に行くぞ」

二人して大浴場に向かう。そして、大浴場の男湯のほうに入る。衣装かごからタオルを取り、着ていたジャージを衣装かごに入れて、全裸になる。

「遅いぞ、一番風呂は俺がいただく」

前も隠さず風呂に突入するデウス。

「げっ、ベルゼーの旦那」

どうやら先客がいたようだ。確か、緑色のジャージを着た筋肉質の男の名前が『ベルゼー』だったと思い返す光。

「げっとは心外だな。私としては、お前がここにいることが不思議で仕方ない。問題児」

浴場には細身と筋肉質の男二人が話をしていた。

「ちょっ、そういう言い方やめてくれよ。俺だって風呂くらい入るさ」

「お、そこにいるのは『婿殿』だな。いや、失礼。紹介しよう、私はベルゼーだ。よろしくな。出来れば、本名を聞かせてくれ。『婿殿』と呼ぶのは失礼な気がする」

「門音光。光でいいよ。よろしく、ベルゼーさん」

光は前を隠したまま、頭を下げる。

「おいおい、前を隠すな。男なら皆ついてるだろう。恥ずかしがるなよ」

堂々と自分の筋肉とアレを誇示するベルゼー。近くに居たデウスが光に耳打ちをする。

「ベルゼーの旦那は『ホモ』だから気をつけロブェラ」

桶がデウスの後頭部にヒット。音がいい感じに浴場内で響く。光は前を隠して壁まで後ずさりする。

「誰がホモだ。私はホモではない。それと、何引いてるんだ」

「み、身の危険を感じて」

「デウスの嘘に騙されるな。それに、結婚だってしてるし、子供もいる」

どうやら、ホモでないと必死にアピールしているようだ。光はその言葉をとりあえず信じることにする。

「それより、冷えるぞ。湯船につからないか」

「そうだな」

ベルゼーはデウスの足をつかむとズルズル引きずり湯船に放り投げる。頭から湯船に落ちる。その後にベルゼーと光が湯船に入る。

「・・・」

沈黙が続く。何か話そうかと光が口を開こうとしたら、ベルゼーが先に口を開いた。

「あまりお嬢さんを悪く思わないでくれ」

何のことかさっぱりと言った顔で光はベルゼーを見据える。その瞳は娘を思う父親の顔つきにそっくりだった。

「まぁ、見ていて面白い女の子と思うけどな・・・。いかんせんあの性格は癖が強いと言うかなんと言うか・・・。悪い子ではないと思う」

「はははっ、あれは父親譲りだからな。仕方ない。そうか、私の杞憂のようだったな」

ふっと笑い安心したような顔をする。

「ぷはぁ、死、死ぬかと思った」

いきなり顔を上げたのはデウスだった。トレードマークのピンピンの金髪はお湯のおかげで頭にへばりついている。

「び、びっくりさせるなよ」

「ベルゼーの旦那、何てことしやがる。危うく死ぬとこだったぞ」

たくましい筋肉を持つベルゼーと見た目もやしっ子なデウスが正面からにらみ合う。

「あのまま、放って置いたら風邪をひくとこだったぞ?」

「ぐっ」

デウスが憤りを沈める。

「け、けどよ。アレは無いと思・・・、わかった、わかった」

にらみつけられてデウスが引くことで決着がついた。

「はぁ、かなわねぇよ、旦那には」

そういってデウスは前髪をかき上げてオールバックみたいにする。どうやら邪魔だったみたいだ。






風呂から上がり、服を着替えるときに気づいた。光は今着ているジャージしかもっていない。いや、それはまだどうにかなるだろう。もうひとつの問題があった。

「なぁ、デウス」

「どうした、ヒカル」

袖を通そうとするデウス。

「一緒に寝ないか?」

光の発言に困惑するデウス。袖を一気に通して服を着る。

「ホ、ホモキャラは旦那だけで十分だ・・・」

「すまん、はしょりすぎた。だから逃げるな。とりあえず待て。話を聞いてくれ」

逃げようとするデウスを急いでとめる光。そして、光はデウスに事の次第を話す。

「なるほどね。要するに寝場所がないからどこで寝ればいいかわからないってことか」

そう、光は気づいたらアリスの部屋で寝ていた。まさか、アリスと相部屋ってわけにもいかないだろう。

「あいにく俺の部屋は一人用だしな。いいんじゃないか、アリスと相部屋で」

「いや、それはいろいろ問題あるだろう」

「むしろ、アリスとしては問題があるほうがうれしいんじゃないのか。あいつの態度を見る限りお前にゾッコンだぜ?」

「かと言ってな・・・」

「どうにかなるだろう、それじゃ俺はもう寝るわ」

無責任に言うだけ言ってデウスは大浴場から出る。

「はぁ、俺これからどうなるのだろう・・・」

誰に言うでもなく呟く光。光の異世界での生活は始まったばかりだ。

この小説で時折『女の子』と表現したり『女性』と表現したりしてますけど、作者の中では『女の子』の基準は20代半ばくらいまでです。それ以上は女性です。ややこしいかもしれませんが、ご了承ください。

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