勇者と危機
矢武裕一郎という存在はごく普通の平凡な人間だった。
異世界への転移によって『Knights of Legend』の世界に勇者として召喚されるまでは。
そう、矢岳裕一郎は、MMORPG『Knights Of Legend』のゲーム世界の中に召喚されてしまったのだ。
「なんてこった・・・」
いや、薄々気がついてはいたけどね?
第三王女がリリアーナだったり、聖女がエスペトだったり。
色々『Knights Of Legend』の世界観と同じ所があったりしたんだけど、異世界転移とか非現実的過ぎでしょ・・・。
「異世界転移・・・勇者・・・魔王・・・実感わかないな・・・」
さっき国王陛下に会ってきて少しこの国の現状を説明してもらったんだけどどうやら
魔王軍がミッドガルド大聖国の領地への侵攻を活発化しているらしい。
ミッドガルドの兵士や冒険者がその侵攻を遅らせていたらしいんだけど、二年前から小隊長クラスの魔物がでてきたらしい。
その小隊長クラスの魔物っていうのは、文字通り他の魔物を指揮して統率する魔物らしく、他の魔物より強力で、国から軍隊を出して討伐するくらい強いということを聞いた。
それを召喚された勇者(僕)が討伐して欲しいという。
・・・・・・・・・・・・無理じゃね?とその時思ってしまったのはしょうがないと思う・・・。
今まで平凡な人間だったのに軍隊の戦力で倒すくらいの存在を倒せと思うのとか無理な話だよね。
いやまあ最終的には魔王倒すようなんだけどさ・・・。
いきなり小隊長クラスって・・・。
それで王様に聞いてみました
Q.そんな魔物を僕が倒せるとは到底思えないんですけど
A.やればできるって
という有難い言葉を頂きました(血涙)。
大体、勇者として召喚されたっていうのに身体から力がみなぎってくる感じもしないし、身体に流れる魔力的なものも感じられないし。
・・・・・・本当に勇者としてやっていけるのかなあ・・・。
と思ったわけで。
せめて武芸者な人から戦い方を教えてもらえないかと国王陛下に頼んだら、城の近衛騎士隊長の人に戦ってもらえることになりました。
はい。戦ってもらうことになりました(大事なことなので二回いいました)。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・無理無理!絶対無理!!死んじゃうって!!いきなりミッドガルドで一番強い人(多分)と戦うとか何考えてんの国王陛下は!
いやもうね・・・拝謁の時にそれっぽい人がちらっと視界の端に居たのが見えた(見えちゃった)時に見た顔!
めっちゃイイ笑顔でした。どちらかというと好敵手を見つけたような獰猛な笑みをしてました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・終わった・・・完全にロックオンされてるじゃん・・・。
あの白髪オールバックでダンディ感満載の中年男性からただよう闘士のオーラの「逃がさねえぜ」って雰囲気はヤバかった・・・。
そんなこんなで国王陛下は、「勇者は突然の事ばかりで疲れただろう。とりあえず十分な休息をとるが良い」と言って拝謁を終えてくれた。
近衛騎士隊長との戦いは後で場を設けるとの事。
見世物なんですか?ねえ、見世物なの?え?公開処刑とかじゃないよね?
「いろんなことがあり過ぎて疲れた・・・」
国王陛下と会う前、メイさんに案内された自室のベッドで横になって今日のことを振りかえってしばらくすると眠くなってきたようだ。
「しかし本当に異世界なんだなー・・・」
この城を歩いてまわっているときに見かけた調度品の数々は日本では見たこともないようなものばかりだった。
この部屋もそうだ。五人くらい余裕をもって寝れそうな天蓋つきのベッドに金糸で刺繍されている豪華絢爛なカーペットとその他。
部屋自体はシミ一つない純白の石材で出来ていて、壁には何かのエンブレムのようなものが彫刻されている。
どれも目に映るもの全てが美しく、意匠が作ったものだと一目で理解出来た。
「少し落ち着かないけど・・・」
そろそろ眠気が限界に達してきたので、まぶたを閉じてベッドに身体を沈めた。
「とりあえず・・・おやすみなさい・・・」




