第二十五歩 強襲、教習、また強襲
次の日、俺は定時であがれたのであがることにした。翔が手伝ってと叫んでいるが断る!先日の仕返しじゃよ・・・おっと。
しっかし昨日は飲んだ食ったし過ぎた、ゲーム内でだけど。かなり人が集まってしまい宴会となった昨日、全て記憶に残っている。お酌してたな、確かに見た目はそれだけどさ・・・俺だって現実で美人にお酌してもらいたいよ。ゆったりとして酒と肴を味わいたいよ、はぁ。
とにかくやることだけは確りと片付け、飯だな。取り敢えず豚バラととろけるチーズと紫蘇を巻いてパン粉を着けて揚げたものでさっくりと頂いた、美味。
さて、ログインしてマイルームへ直行。朧ちゃんが持っていた武器はアイアンソードという店売り品だったので自前の品質5のアイアンソードを強化する。
刀身を熱してたたき直す。少し細目に、だけど「斬る」という行為で壊れないように。焼き入れ、焼き戻しを行い、余分な部分を取り除くと同時に刃をつけていく為に研磨する。粗めから細かめまで。あらゆる砥石を使い丁寧に、一回一回研ぐ。
そして出来たのがこれ。
アイアンソード・ライト 品質7
鋭さが増し、軽くなったアイアンソード。扱いやすくなり、攻撃力が上がっている。頑丈さも後処理により維持が出来ている。
まぁ、派生のような物だがこんなところだろう。アイロ洞穴以外にこの辺りには鉱石が取れるところは分からないのだから。ならば素材以外で弄れば良い。自分で使うなら兎も角、誰かに使ってもらうのであれば手を入れられる所はいれた方が良いだろう。なんやかやで自分も職人モドキだからね、やれることはやるよ。防具は流石に見た目も大事だからちゃんと相談しないとね。鞘もはめて完成だな。
ついでにツリーも弄る。すっかり忘れてて今レベル10になってるのでポイントを使ってしまおう。
弓のアーツ強化→トライアローLv1を習得
刀のアーツ強化→円舞斬Lv1を習得
大戦斧の技能強化→ガードがタックルガードに変化
火術のアーツ強化→延焼Lv1を習得
呪術のアーツ強化→魔力霧散Lv1を習得
トライアロー:素早く三連射。
円舞斬:その場で体を回して三回転切りを行う。
タックルガード:ガード中にガードしながら短距離タックル。タックル中は更にダメージ減、中型以下の敵ににヒットすると確定よろけ。代わりにガードゲージを更に消費。
延焼:呪符を中心として継続する炎属性のダメージ源を設置する。設置可能数は1。
魔力霧散:設置範囲に侵入、直貼りした相手のアーツ火力低下、使用間隔の延長の効果を付与する。
そうだ。アーツといえば前の戦いで十字閃が十字雷閃に変わっていた。ツリーを確認してみてもそんなアーツは確認出来ない。ショーとの戦いでは十字閃使ってなかったし。となると原因は「始雷」に有るかもしれない。武器専用アーツもあるし武器の属性で変化したとか、あり得る。
と、そろそろ時間だ・・・南門へ向かおう。確かソウも来るはずだ。良いものを教えてくれるとか。
「・・・遅かったな」
「何かあったんですか?」
「おーやっと来たかー少女よー」
はい、既に二人ともおりました・・・一人多くねぇ?なに、あの、スレンダーで緑っぽい青の短髪の美人さんは。装備としてはかなり薄手、店売り軽装備レザーシリーズっぽいがどうみてもデザイン同じなだけで強いモンスターの皮が使われているのは一目瞭然。あとその人の腕と足に異様な鉄塊が付いてるんですけど・・・。
「はろー!あたしはミョルニル!気軽にニルって呼んでね!」
その人は明るい性格そうだった。だったのだが・・・なんで、なんで歩く度に足音がガシャンガシャンいってるんですかね。貴女絶対隠密とか無理じゃろ。
「あー、これ?あたし拳闘士だから手甲と脚甲装備なの。名前は「破壊王:弐型」。どう?この無骨さ、素晴らしいでしょ?」
「うむ、ロマンに溢れとる。まぁそれは置いといてなぜ此処に?」
「・・・昨日の一件、こいつはトップ勢筆頭脳筋、後はわかるな」
「私が来るまえからずっといました。勿論事情聴取されました」
もしかしてヤバイことしたのだろうか、もしかして粛清か?勘弁してください。
「単に興味持っただけよ。ま、事の顛末は二人から聞けたし?そっちも旅立つ訳だから、どんな姿なのかなーって思って待ってたのよ。うん、可愛い!これで合法とか犯罪じゃない?そっちの朧ちゃんとそこまで変わんないように見えるけど二十歳越えとか・・・ホントに二十歳?」
おっと?少し舐められてるか?だが言葉でなら兎も角、実際戦いたくない。あの無骨過ぎる手甲と脚甲の一撃は絶対喰らいたくないよ・・・。
「ふふ、そうじゃよ。まぁ見た目なら説得力皆無じゃが、このゲームは年齢確認が徹底しておる。何があっても適切に処理できるように。酒屋でも未成年には酒は売ってくれんからの、その事は二人が証人じゃよ」
「へぇ・・・言うじゃない。じゃあ次は手合わせを」
「「「ヤメテ」」」
「・・・ケチ・・・仕方ないかそっちの時間を奪うわけにもいかないもんね」
なんとかなった、いや、マジで。さっきソウがトップ勢で脳筋言ってたから嫌な予感してたけど見事に戦闘好きだなぁ。今は本当に戦いたくないわぁ・・・もっと強くなってからじゃないとな。おっと忘れるところだった。
「そうじゃ朧、ほれ!」
「え?キャッ!」
ぶっきらぼうに先ほど改造したアイアンソード・ライトをほうり投げる。うむ、無事にキャッチしたようじゃな。
「餞別じゃ。初期装備のアイアンソードより少しマシにしたものじゃ。とっとけ」
「え?良いんですか?」
「ウォクエリスに付いてきてくれるんじゃろ?このくらいは軽いわ。流石に防具には手が出せんかったがな」
「いえ!十分過ぎます!ありがとうございます!」
「う、うむ」
朧は早速鞘から抜いてまじまじとそれを見つめていた。ソウとニルもそれを見ていた。んー、欠陥は無いはずなんだが。
「・・・良い剣だな」
「ほんとほんと!かなり丁寧に仕上げられてるし、ただのアイアンソードよりも・・・何て言うか・・・綺麗!」
あら、好評価。なんだ、アイアンソードかって言われるかと思ったわ。そしてニルさんはフィーリングで伝えるタイプなのだろうか。
「・・・っと、そろそろ行くぞ。また行けませんでした、じゃ世話無いからな」
「・・・そうじゃな」
すまん、俺、前科持ちだからね本当は昨日だったからねいやマジて付き合ってくれて申し訳ない。
「ここだ」
俺たちがやって来たのは南門付近、というか門前にある小さめの牧場だった。様子を見ると淡い緑色で翼が大きめのダチョウらしきものが目に入った
看板には「ウィンドランナー貸出店 涼風 南区支店」とあった。そういえば昨日食った料理にもウィンドランナーっていたな。
「・・・着いたぞ。ここはウィンドランナーの貸出をしている兎に角、町から町への移動には此処に頼ると良い」
「えー、あの子達足遅いじゃん」
「・・・お前が化け物なだけなんだよなぁ・・・」
「いいえ、あたしはバーサーカーです。化け物違う」
「なお質が悪い・・・」
ほうほう、このウィンドランナーに乗っていけばいいと。だけど、思ったことがある。
「マギトレインは使えんのか?」
「あれは俗に言うファストトラベルみたいなものだ。一回自力で行かないと使えない」
「うん、キャッチフレーズにも旅ってあるしね。最初から楽に何処でも行けたら面白くないでしょ?」
それもそうだ。このゲームの醍醐味を潰しちゃ意味無いからな。じゃあこれは?となるけど現実、日本を旅するのに全部徒歩でいきます。なんてあり得ない。これはレンタカーみたいなものなのだ。
「・・・じゃあ俺達はここまでだな。後は中で話を聞くと良い」
「え?一緒に来てくれるのでは?」
「これでも忙しいんだ、ニルもな。さっさと前線に戻れ」
「むぐぅ、しょうがないなぁ」
「うむ、世話になった。またの!」
「ありがとうございました!」
「ああ」
「いってらっしゃーい」
こうして俺らはトップ勢と別れた。
早速店の中に入ることにした。
無事に借りることができた。二人のりの大きいタイプだけど。こっちの方が安上がりだしね。そんなわけで二人のりの鞍が付いた大きめのウィンドランナーに乗っている。
説明を聞いてみたらメタいことになるけどフィールドの関係上、風の平原とウォクエリス周辺のフィールド「積命の砂浜」の間には境界がある。ここでその役目をしているのは何度か名前が出てきた「メラルド大森林」だ。ウィンドランナーの貸し出しはその前にある野営地までとなる。ただし、森の向こうにも野営地が存在していて、しかも野営地にも貸出店があるので正確には境界上のダンジョンにはウィンドランナーは入れないということになる。
ここでウィンドランナーについて。ウィンドランナーは長い長い距離を群れで移動する。スタミナもかなりのものであり、スピードも非常に速い。しかも羽も飾りでは無く、飛ぶことは出来ないが滑空は出来るようで、山や高台から一気に距離を稼ぐことが出来る。勿論今のっているこいつも出来る。
座りかたは朧ちゃんが前で俺が後ろで手綱を持ってる。手綱を持ってるとウィンドランナーは思った通りに歩いてくれた。まぁゲーム故に致し方なし。では早速出発だ。徐々に速度を上げてならしてから走り出した。
それで現在、出発して十五分はたった。マップを見てみると丁度中間に差し掛かっている。これが徒歩だとあらゆる出来事を無視していたとしてもここまで一時間近くかかる。風切って走ったり跳んだりしてきたが、かなり爽快感がある。ぶっちゃけ楽しすぎ。朧ちゃんは目を回しているが十分楽しんでいるようでなによりだった。
が、
「いぃやあぁぁぁあああああ!」
「まだ追って来てます!!」
「のぉぉおうぅ!!」
最悪だ。途中まで順調だったのにいきなり緑色の翼竜五匹に追いかけ回されている。さらに相手のデータもかなり不味い。
ウィングレギオン Lv50
風の平原で出現する翼竜。知能が高く、低ランクの風魔法も使うことが出来る。基本的に三匹から五匹の群れを作り、狩りを行っている。群れの中で役割が決まっており、その狡猾さはまさに軍隊の如く。
はい!レベル差約40です。無理無理、無理に決まってる。実際さっきから「エアショット」の雨と体当たりを辛うじて避けてはいるが、流石に辛くなってきた。
「何か、手は、無いんか!?」
「では私が!」
「良いぞやれ!」
「了解です!」
朧はポーチか白っぽい小さい玉をいくつも取り出し、それを前方にばら蒔いた。瞬間、玉が割れて大量の白い煙が吹き出した。やがて俺らはその中に突っ込んだ。
煙玉かこれで少しは撹乱できるか?
と思ったら大量のエアショットが飛んできて全てかきけされた。
「だ、ダメでした〜!」
「ほ、他には?」
「では次はこれで!」
そう言って取り出したのは缶と同じ大きさのよく分からない何かだった。なにそれ、グレネード?
「出来るだけ引き寄せてください!」
「合点!危険じゃが任せる!」
すこし減速し、攻撃を受けないように差を詰めていく。ウィンドランナーがこっち見て「マジで?」みたいな目をしているがマジだ。俺らもここまで来てファスティアに死に戻りたくないので必死です。貴方も奴さんたちに食われないように必死です。
「安心せい、ちゃんと返してやる。信じろ」
ウィンドランナーも覚悟を決めたかはわからないが、再び前を向いた。そしてこっちの思うように動いてくれている。すまん、後でなんかいいもん食わしてあげるから、絶対返してあげるからな。
「まだかの!?わっち、こいつの命も預かってもうた!」
「いきます!こっち見ないでください!それぇ!」
その言葉で咄嗟に目をそらすと後ろから強い光が発せられた。そうかフラッシュバンか!某狩りゲーを思い出す!光が止んで後ろを見ると上手く五匹共、地に落ちようとしていた。
・・・って!一匹こっちに落ちてきている!
「朧!・・・」
「きゃあああ!目が!目があああ!」
「・・・兎に角移動を・・・って!ウィンドランナー!お前もかっ!!」
どうやら運悪く後ろを向いてしまったようだ。咄嗟に弓矢を構える。矢じりに「炎爆Lv1」の呪符を張り付けて落下してくるウィングレギオンに向ける。
「スクリューアローッ!!」
今の俺の矢ではあいつの強靭な皮は貫くことは出来ないが、衝撃を与えることは出来る。辛うじて突き刺さった矢の衝撃と、呪符による爆発の衝撃で少しでも落下コースを反らす。
爆発の煙から出てきたウィングレギオンは目の前に落ちてきた。その衝撃でウィンドランナーは正気に戻ったようだ。
「いまじゃ!全速前進じゃ!」
不意にかけた言葉に少し戸惑ったウィンドランナーだが状況を思いだし、直ぐに思った通りに駆け出した。勿論落ちないように朧ちゃんをしっかり支えて。あのフラッシュバン自分も喰らうのね・・・それでも今回はこの子のお陰で九死に一生を得た。ウィンドランナーとも約束したし何かご馳走しようかな。
それから十分。遠くの方に森と手前に多くのテントが立っているのが見えた。あそこが休憩地兼境界線だろう。朧ちゃんもなんとか復活した。本人いわく「説明はちゃんと読むべきでした」とのこと。だが朧ちゃんのお陰で全滅しなくてすんだので褒めた。
「そ、それほどでもありません!」
「謙虚じゃのう。取り敢えず野営地に着いたら空腹ゲージも空だし、何かご馳走するかのう」
「本当ですか?」
「本当じゃよ、苦手なものは?」
「特にありませんよ」
じゃあ現実で作ろうとすると大変なあれにしよう。野営地にも食料店があるらしいしめぼしいものをかき集めよう。
「野営地に到着じゃ!」
さて、喜んでくれるといいけどな。
頭の中では既に料理の段取りを練っていた。




