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2016/6/30 改稿
「オウ、帰ったぞ!」
ホームのドアを乱暴に開けて入って来たレオはすぐにソファーに腰を下ろして息を吐いた。
「ったく、ゴルゴンのレベル上げついでっつたのにカウレアス火山まで行かすか?フツーよぉ」
「なに?フレイムダイルにでも追いかけられたの?」
「んな可愛いらしぃモンだったら良かったんだけどなぁ」
コーヒーをレオの前に置きながらディアラが尋ねるとレオは不機嫌そうにそのコーヒーを一気飲みした。
「よくホットコーヒーを冷まさずに一気飲み出来るわね」
「ハッ!こんなモン大した熱さじゃねぇよ。それよかカウレアス火山、ありゃあ暫くは近づかねぇ方がいいぜ」
「何で?あそこのモンスターは気性は荒いけど、結構な値段の素材とかアイテム落としてくれるじゃない」
「金なんざ命あっての物種だろうが。今あっちにはエンシェント・ドラゴンが巣に戻ってきてやがる」
「はぁ!?エンシェント・ドラゴンって、まだ生き残ってたの!?」
『エンシェント・ドラゴン』
文字通り本物の神や魔王が存在した神話時代の生き残りで、その強さは当時でも中級程度の神や魔王を捕食できる程。
基本的に年月を経る毎に強くなっていくドラゴンが現在まで過ごしてきた年月を考えればどれ程の強さをもつかなど考えるまでもない。
それこそ伝説で謳われる勇者達でもない限りは戦いどころかただ生き残るのも奇跡と呼べるレベルになる。
カウレアス火山には炎竜のエンシェント・ドラゴンが巣を作っているのだが、ここ数十年はその姿を見かける事も無くなっていた。
その為にもエンシャント・ドラゴンの脅威からS級ダンジョンに登録されているにも関わらず、最近では多くのテイマーや冒険者がモンスターや素材を求めてそのダンジョンに足を踏み入れていた。
「ちょっとレオ!あんたは大丈夫だったの!?」
「ああ、上をバカデカいのが飛んでくのを確認してすぐさま帰還石を使ったからな。値段なんざ考えてる暇すら無かったぜ」
「それはそうでしょ。アーリーもヒデムもそんな事で責めたりしないわよ」
「ただでさえ金欠だってのによぉ、クソがっ。まぁあんのクソドラゴンが居座ってる間はカウレアス火山でしか手に入らねぇ素材とかは高騰するだろうからな。そん後に捌けば幾らか足しにゃなるだろうが、気に入らねぇ」
帰還石はどこでも予め記録していた地点へ瞬間転移させてくれる店買い出来る唯一のAランクアイテムで、値段も安くて一つ10万はする高級アイテム。
レオの機嫌が悪いのも、高難易度のカウレアス火山に行かされた事やエンシェント・ドラゴンと遭遇しかけた事でもなく、このアイテムを使う破目になったというのが大半を占めている。
「アンタも言ってたけど、命あっての物種よ。エンシェント・ドラゴンの炎に焼かれてたら焼き尽くされて蘇生も出来ないって話だし」
「チッ。そういやぁ、アーリーとヒデムはどうしたよ。姿が丸っきり見かけねぇんだが?」
「あの二人なら【麗しの都ヒルディアンデ】に行ってるわよ」
「【ヒルディアンデ】だぁ?あんな時代錯誤に貴族趣味満載なトコに何の……ああ、あの限定ダンジョンかぁ」
西大陸ノールティ【麗しの都ヒルディアンデ】
昔から音楽と芸術の聖地として西大陸だけでなく他の大陸からも数々その腕を磨きに音楽家や芸術家が訪れで、またその中から眼鏡に合う者を見繕う貴族が数多く来訪する都。
今でこそ貴族が衰退しているが、それでもこの街に残る音楽と芸術の聖地というソレに衰えは無く、多くの大家と芸術品を輩出している。
そんな【麗しの都ヒルディアンデ】だが、この都が膨大な金を落としていった貴族達が少なくなった後も機能不全にならずに済んでいるのには一つの理由があった。
それこそがテイマーや冒険者が待ち望む『限定ダンジョン』と呼ばれる、特別管理ダンジョンとはまた異なったエクストラダンジョンである。
この限定ダンジョンは一定期間のみ入口が現れる特殊なダンジョンであり、ダンジョンによっては入る事が出来る人数や人物に制限を課してくるものすらある。
これは大昔の遺失魔法による封印が関係しているんじゃないかという意見が主流であるが、はっきりとした理由は分かっていない。
だがテイマーや冒険者にとって重要なのは、“そのダンジョンの先に何があるか”。
結論から言うとAAAランク進化アイテム『優美の虹』
このアイテムは優れた音楽・芸術等が溢れる場所にのみ生成されると言われているモノ。
AAAランクにしてはそれなりに取れるアイテムだが、昨今において【麗しの都ヒルディアンデ】以外では発見されていないのと、その生成条件を考慮すると下手すれば『星の記憶』にも匹敵する貴重さになる可能性も高いため、『優美の虹』が発生する条件を維持するために【麗しの都ヒルディアンデ】は今も尚、音楽と芸術の聖地として存在しているのだ。
そして【麗しの都ヒルディアンデ】のダンジョンは『魔法職限定』という制限があるため、自然とアーリーとヒデムの二人がこの限定ダンジョンへと向かう事になる。
こういう場合は他のパーティと協力してダンジョンの探索を行うのが通例で、その取り分の規定等を予め決めておく必要がある為に早めの現地入りをするのが基本となる。
そのために予定が大幅に狂って帰還したレオとは入れ違いになったのだ。
「もうんな季節か。毎度毎度面倒をかけさせやがるダンジョンだよなぁ」
「どのダンジョンも少なからず面倒なのは同じでしょ。取りあえず二人が帰って来るまで休暇として休んでたらいいわよ」
「そうさせて貰うぜぇ。ヒデムがいねぇと次のチャートの予定が分からねぇからな。て言ってもカウレアス火山が封鎖同然ってなりゃあ、またチャートの直しが必要ってんで待たされるんだろうがな」
「仕方ないわよ。エンシェント・ドラゴンなんて自然災害みたいなものだし、居なくなったって情報が来るまでは行かないに濾した事は無いわ」
「まるで留守を狙ったコソ泥だなぁ、オイ。まぁ、モンスターにとって俺等は通り魔みたいなモンかもしれねぇけどよぉ」
「テイムしてない野生モンスターと意思疎通がとれたら別なんでしょうけど、互いに見かけたら襲い掛かる関係上仕方ないわよ」
「ま、そこらを考えるのは俺等が安全を確保した街でこれまた俺等が市場に回してる物資を食い潰しながら御高説してくれる自称善人共に任せるがなぁ。アイツ等、『モンスターも人と同じく生きているんだから殺してはいけません』なんて恥かしげも無くよく素面で言えるモンだと、正直俺は感心を通り越して尊敬までしてんだが、アレにゃあ何かコツでもあんのか?」
「知らないわよそんな事。自分が言ってる事は一欠けらの間違いなく正しい事だって思ってるんでしょきっと」
「んなモンかね。てと、んじゃシャワーでも浴びて一先ず寝るわ」
「ええ、いってらっしゃい」
ダンジョン『カウレアス火山』リザルト
評価ランク:B
最終到達地点:火山中腹
報酬アイテム:無し
報酬金:無し
獲得アイテム:『火山石』『火精の晶石』『サラマンダーの炎尾』『鋭い牙』『熱石』『フレイムダイルの鱗』『レッサードラゴンの鱗(炎)』『スカーレット・スター』他
テイムモンスター:テイマー不在




