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2016/6/30 改稿
驚く四人だが、当の光り輝く金色スライムはポヨポヨと跳ねながら巣へと向かっている。
が、それを許さない一人の男が居た。
「ああああああああああああああああああああああああああああのクソスライムウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッッッ!!金ぴかになってようが間違いねぇ!俺の急所を潰そうとしやがったクソスライムだぁ!!ブチ殺おおおおおおおおおおおおおおおす!!!」
叫び声を上げながらレオはガイゴラから跳ぶと、勢いそのままバスターソードをスライムへと突き立てる。
落下の勢いを全て乗せたまさに会心の一撃であったが、
ミス スライムに 0のダメージ ▽
ポヨンと効果音が出そうな感じにあっさりと弾かれ、レオは思わず驚愕に目を見開く。
対して攻撃を受けたスライムの方は先程『星の記憶』を捕食して満足しているのか、攻撃を仕掛けてきたレオに興味を持つことなくポヨポヨと跳ねていく。
「はああああああああああああああああああああああああああああっ!?どうなってやがる!?」
「レオ、少し離れて下さい。ちょっと確認してみましょう」
ヒデムは意識をスライムに集中すると目に魔力を集める。
ヒデムが就いている職業、僧侶には相手のステータスを読み取るスキャンの魔法がある。
大昔に強力なモンスターが人に化けて紛れ込む等という事もあったため、僧侶が信託によって人かモンスターかを見分ける魔法を得たとかと曖昧な感じに伝わっている必須魔法。
「………………これは、ちょっと予想外が過ぎますね」
「どういう事よヒデム?」
「スライムは雑食なので『星の記憶』を食べた可能性は準備しながら話しましたね?このスライムはその可能性の通り、『星の記憶』を食べたようです」
「スキャンってのは食ったものまで分かるもんなのか?だがまぁ、あのクソスライムは光ってんのはやっぱ中に『星の記憶』があるからだな!」
「……いえ、多分あのスライムを倒しても中からは『星の記憶』はでてこないでしょう」
「…………どういうこと?」
「スキャンで読み取った内容としては、あのスライムは『スライム・オリジン』。起源開放を行った、モンスターとあります……」
「「「………………………………」」」
二つの絶叫が草原に響いた。
「…………それで、他に何か読み取れた?」
二人の仲間が絶叫のし過ぎでむせ返っている中、アーリーはヒデムに尋ねる。
「そうですね。レベルは1、レオを倒してレベルは上がっていたでしょうが、進化でリセットされたみたいですね。ステータスはHPしか読み取れませんでしたが、数値にして105。レベル1のスライムとしては間違いなく異常値。ステータスも先程のレオの攻撃を受けてダメージを受けた様子が無かったですし、防御はかなり高いかと。何かしらのスキルも保持している可能性もありますね」
「いや待てヒデム!起源開放ってのは神とか魔王とかの特殊種族だけしか出来ないもんだろ!?なんでスライム如きが起源開放とか出来んだよ!?」
「スライムは神と魔王を除く、無形、不死、獣、鳥、魚、ドラゴン、機械、天使、魔族のどれにも進化する事が可能な、謂わばモンスターの原点とも言えるモンスターです。故に学会では神や魔王を含め全てのモンスターはスライムから始まったという学説すらあります。そして『星の記憶』は固有種ともいえる神や魔王の力をこの世界の記憶から引き出しモンスターに与えるアイテムです。これらを考えれば、世界の記憶からモンスターの祖、『スライム・オリジン』の記憶が引き出され適用されたのではないでしょう」
「そんな事ってあるの!?」
「学会の説で証明実験で似た提案がされた事はあります。ただ、無駄に消費する可能性の前にスライムに使う者が皆無だったというだけで」
一生一度手に入るかどうかのアイテムをスライムに使う。
それは常識に生きる正気の人間であればまずやらないことだろう。
神や魔王に進化を促すアイテムは『星の記憶』以外にも幾つかある。
だがそれらは『星の記憶』と同じくSSSランクのレアアイテムであり、その採取・ドロップする場所は全て特別管理ダンジョンに限られてるため、欲しいからとすぐさまチャレンジできるものでもない。
そんなのをスライムに使おうと考えるテイマーは今まで皆無であり、当然一般市場に流れるようなモノでもなく。
不運にも初の使用者となってしまった彼等も、ドロップしてしまった『星の記憶』がスライムに食べられなければ生涯気付く事はなかったのは間違いない。
「進化してるってことはもう『星の記憶』はもう戻らないのよね……。使ったモンスターを倒したらその進化アイテムがドロップするなんて聞いたことも無いし」
「ええ。ディアラの言う通り、『星の記憶』は戻らないでしょう。今回の探索はほぼ失敗ということです」
ヒデムの言葉に重い沈黙が落ちる。
彼等の沈黙を余所にをポヨポヨと先に進んでいくスライム。
「あっ!アーリー!?」
それを見ていたアーリーがガイゴラから降り、スライムの方へと近づいていく。
スライムもアーリーに何かを感じたのか、プルプルと体を震わせ戦闘体勢を取るが、
「――――――」
構わずアーリーはテイムの魔法をスライムに展開され魔法陣がスライムを縛る。
スライムは戦闘態勢とは違う意味でプルプルと体を震わせ、それに合わせてテイムの魔法陣も上下左右に揺れまくる。
本来スライムはテイムの練習台となるぐらいにテイムし易いモンスターだが、オリジンとなっているこのスライムはLV57のアーリーのテイム魔法に抵抗するだけの抵抗力を持っている様で、尚もプルプルと揺れまくっている。
三人はアーリーとスライムの静かな?攻防を見守るしかない。
テイムの魔法陣は重ね掛け出来るモノではなく、互いに反発しあって崩壊するのだ。
アーリー以上の魔力を持つのはいないし、下手に動けばアーリーの集中力を乱す事にもなる。
レオの攻撃を全く受け付けなかったあのスライムは起源開放だけあって規格外、魔法陣が外れたらどの様な反撃にでるかも定かではない。
プルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプル…………
十数分続いたアーリーとスライムの静かな攻防は、魔法陣がスライムの中に収束された事で終着した。
スライムはポヨンと跳ねてアーリーの頭の上に着地し、ポムポムと戯れ?始める。
「……成功しましたか。にしても弱らせてなかったとはいえ、アーリーのテイムにあそこまで抵抗できるとは、やはり普通のスライムとは比べ物にならないステータスの様ですね。もしかしたら、本流の神や魔王はこのオリジンから進化していった特殊個体だったのかもしれません」
「んな事はどうでもいいだがよぉ、結局『星の記憶』の代わりに手に入ったのは珍しいクソスライムだけってか。ハッ!贅沢もここに極まりって感じだな!」
「しょうがないじゃない。それに何も無いよりはマシよ。それでアーリー、そのスライムには何か名前でも付ける?」
「…………アリア」
「アリア?」
こくんとアーリーは頷く。
スライムは名前を付けて貰ったのが嬉しいのかポヨンポヨンとアーリーの頭の上で跳ねている。
「アリアねぇ。クソスライムの名前にしては上等すぎるんじぇねぇゴファッ!?」
アリアと名付けられたスライムはアーリーの頭から飛び跳ねレオの顔面に体当たりをかまし、その反動を上手く使って再びアーリーの頭の上に着地する。
「なああああああああああああああにしやがるクソスライムウウウウウウウウウウウウウッッッ!!!」
レオの方もダメージは無いようですぐさまアーリーの頭の上でポヨンポヨンと跳ねるアリアを捕まえようとするが、それは両手でアリアを守るアーリーに妨げられる。
「…………アリアを苛めちゃ、ダメ」
「さっき一撃を入れられたのは俺なんだがなぁ!?」
「諦めなさいよ。アーリーだって嫌がってるでしょ」
「ッッッッッ!!ああクソッ!このイラつきは何に発散すりゃあいいんだかな!!」
「適当にモンスターでも狩ってレベルを上げればいいんじゃない?まあここらのじゃあ体力の無駄だろうけど」
「ハハハハハッ、では一先ずホームに戻ってアリアをどの様に育成していくかを決めましょう。スライムは他のモンスター以上に育て方で進化先が大きく左右されますからね」
そうして彼等はホームへと帰還した。
エクストラダンジョン『星の揺り籠』リザルト
評価ランク:D
最終到達地点:地下第21階層
報酬アイテム:無し
報酬金:無し
獲得アイテム:『星の記憶』(ロスト)『蠢く闇石』『金蠍の毒針』『黒騎士の黒剣』『星柳の髪飾り』『雷水晶』『スタールビー』他
テイムモンスター:『ダークネス・ユニコーン』『死霊伯爵』『ユリガンダル』『スライム・オリジン』




