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2016/6/30 改稿
「クソッ……、エクストラダンジョンとはいえまさか全滅しかかるとかねぇわ……」
ずーり、ずーり、という音を出しながら三つの棺桶を引きずりながら草原を進む満身創痍の男が一人。
彼とその仲間は一定時期に限られた人数だけが立ち入りを許可される特別管理ダンジョン、通称エクストラダンジョンの一つ【星の揺り籠】に挑み、魔力や持ち込んだアイテムを全てつぎ込み全滅ギリギリでなんとか目的を達した。
しかしダンジョンをエスケープで生き残った男は戦士職で魔法は使えず、移動アイテムもダンジョン内での戦闘で破損、逃走時にドロップしてしまうなどしていた為に、無理を押して街へ向かっている途中だった。
とはいえ、【星の揺り籠】がある場所は通常ならば危険度も低く安全で、テイマーと呼ばれる彼等が初めの特訓に使う様な場所なので、満身創痍とはいえLv54である男ならよっぽどの不運が団体で来ない限り問題は起きないと断言できるが所以の無茶だが。
「にしても重ぇな……。さっさとこいつ等を生き返らせて酒の一杯二杯でも奢ってもらわないと割に合わねぇ……」
ぐちぐちと愚痴を垂れ流しながら萎えそうになる気力を振り絞って仲間の棺桶を引きずる。
もし仲間の棺桶を故意に放置した場合、最悪の場合には【最終監獄】と呼ばれる特別管理ダンジョン内に造られた脱獄不能とされる監獄に、一切合財の魔力やスキル等を封じられて投獄される。
その為に男は愚痴を吐き出しながらも三人分の棺桶を引き摺り続ける。
そんな中で、
タラララーン スライムが 現れた ▽
この辺りに生息する最下級の魔物であるスライムが一体現れた。
スライムは巣でも作っていたのか拳大の尖った石を咥えているが、プルプルと躰を震わしながら戦闘態勢をとっている。
スライムは数少ないレベル差が大きくても逃げたり避けたりせずに戦闘を行う種族であるため、レベル差が50以上もある男にも構わず襲い掛かってくるのだ。
「チッ!スライムかよ。相手をしてる手間も面倒だが、ほっといて仲間でも呼ばれたらより面倒だからな。潰しとくか」
男は棺桶を引きずる綱を手放すと愛用のバスターソードを引き抜く。
仲間の魔法使いが生きていればテイムしているモンスターを召喚して戦闘を任せたり問題である棺桶を引きずらせたりできるが、男は召喚魔法が使えないためこうして自分で戦闘を行わなければならない。
「さっさと、死にっ…………!?」
男が見た目によらず洗練された最小限の動きでバスターソードをスライム目掛けて叩きつけようとした時、【星の揺り籠】内で受けた状態異常:麻痺が発生して男の動きが不自然な形で止まる。
麻痺は一定確率で数秒間動きが止まってしまう恐ろしい状態異常だが、回復アイテムは使い切ってしまった為に放置して進んできたツケが回ってきた形になった。
その隙にスライムが勢い良く男に体当たりをかます。
本来ならばスライム如きの一撃で満身創痍であっても男が一撃死することはおろか、ダメージすらもまともに受けはしない。
だが、男にとって不運だったのはスライムが加えていた石が鋭く尖がっていた事。
そして尖がった部分が丁度外側に向いていて、スライムが体当たりしたのが股の中心部分だったという事だった。
痛恨の一撃 レオに 100のダメージ ▽
レオは 死んでしまった ▽
スライムは 戦闘に 勝利した ▽
スライムに 3021の 経験値 ▽
スライムの レベルが 上がった ▽
スライムの レベルが 上がった ▽
スライムの レベル(ry
スライムのレベルが上がる中、白目を向いて倒れる男は、仲間の棺桶と共に光の泡に包まれて消えた。
これは『聖王教会』の祝福によってパーティが全滅したら登録した街に戻れるという奇跡によっての帰還だが、その際に一部の所持品がドロップしてしまう時がある。
今回の死に戻りもその一つで、男が居た場所に一つのアイテムが転がっていた。
そのアイテムはまるで小さな太陽が転がってるかの様な強い光を放つ結晶で、テイマー達が『星の記憶』と呼ぶSSSランクの超超超希少レアアイテム。
これを普通のモンスターには使っても効果が無いが、『神』や『魔王』と分類される最上級モンスターに与える事で真価を発揮する。
使用したモンスターに『起源開放』と呼ばれる強化が行え、起源開放したモンスターは元となった、かつて存在した本物の神や魔王の力に限りなく近づく事が出来ると言われている。
実際にテイマーランクのトップ勢は起源開放した神や魔王を引き連れる事で、中堅勢を寄せ付けない強さでランキング上位に君臨しているのだ。
だが、この『星の記憶』を採取できる特別管理ダンジョンは滅多に開放される事は無い上に、解放されても生息しているモンスターがふざけてるぐらいに強く、『星の記憶』が見つかるのは砂漠にて何処に落としたか分からない一本の針を見つけるのと同じぐらいに難しいとされている。
故にその為に使わないにしても、売るだけで一生困らないだけの金額が得られるのが確実なアイテム。
そんなレアアイテムがスライムの目の前に転がっている。
その価値は知らなくとも興味を持ったのかスライムは血まみれの石を捨て、『星の記憶』に近づく。
スライムはフヨフヨと『星の記憶』の上に乗ったりポヨポヨと跳ねたりしたいたが、突如何を思ったか『星の記憶』をパクッと呑み込んだ。
スライムは雑食性で、無機物であろうが何であろうが消化できるモンスター。
そのため、こうして危険が無いと分かれば捕食したりさっきの石の様に巣の材料にして非常食としたりするのだ。
『星の記憶』を丸呑みしたスライムだが、そのまま石を加えなおして巣に戻ろうとしたところで動きが止まる。
……おや!? スライムの 様子が……!
「クソがああああああああ!!!!」
「レオうるさい!少しは黙ってなさいよ!」
「ハッハッハッ。いやぁですがディアラ、まさか麻痺にスライムのクリティカルのコンボで『星の記憶』を失くしてしまえば叫びたくもなりますよ。それに我々が彼より先に脱落しなければこうはならなかったのですし」
「…………座標確認。転移を開始するよ」
スライムに殺られた男、レオは仲間共々生き返った後、持っていたはずの『星の記憶』が無い事に気付き叫び声をあげた。
消費アイテムを軒並み使い果たした後だったとはいえ、【星の揺り籠】で手にいれた素材アイテムや進化アイテム、他にも装備品や金とかドロップするものは他にもあったのに狙い澄ました様にドロップしてしまったのが『星の記憶』だった。
『星の記憶』が無ければ今回の探索は無駄足も同然。
他のアイテムを売っぱらえば収支は黒字にはなるだろうが、それは他のダンジョンでも出来る事。
『星の記憶』を失った事を知った彼等は慌てて準備を整え、仲間の魔法使いが男の記憶から死に戻りした座標を特定して長距離転移を行った。
位置的に滅多に人が通らない場所なので、運が良ければドロップしたアイテムはその場で転がったままという可能性に賭けたのだが、『星の記憶』はどこにも無い。
「ありませんねぇ。『星の記憶』は光輝いてますからモンスターの興味も引きやすい上、ここも人が全く来ないとかいう訳でもありませんし、仕方ないと言えばそうなりますか」
「ヒデム!そんな呑気な事を言ってる暇なんて無いでしょ!アーリー、『星の記憶』の場所とか特定できない?」
「…………一応、マーキングはしといたから、頑張れば出来るかもだけど…………五分五分ぐらい……」
「構わねぇからやってくれや!お前で探知出来なきゃそん時はスライムの巣という巣を探し回ってみるだけだ!」
「…………それは嫌。………………………………………………………………」
アーリーは目を閉じて意識を集中してマーキングした魔力の波動を探す。
三分程した後、アーリーは目を開いた。
「…………あっち側に、かなり弱まってたけどマーキングの波動があった」
「南側ですか。あっちは何も無い草原でしたね」
「うっし!とにかく『星の記憶』を回収だ!!アーリー、ガイゴラを喚んでくれ!」
「…………人使いが荒い……」
ガイゴラとは三つ首をした馬型モンスターで、大型バンぐらいの大きさをした獣モンスター。
大きさの割にランクも低く作り易いしテイムし易いため、テイマー達の足として重宝されるモンスターである。
四人はアーリーの喚び出したガイゴラの背に乗って反応の有った地点へと急行する。
地響きを立てながら進むガイゴラは駿馬の如く早く走り、数分で目的の所にたどり着く。
そしてたどり着いた場所には、彼らが予想していなかったモノが居た。
「…………ねぇヒデム、貴方はあんなスライムを知ってる?」
「いいえ。初めて見ましたし、文献でも見かけたことはありませんねぇ。いやはや、光り輝く金色のスライムなんて初めてですよ」
そう、彼らが目にしたのは血まみれの石を咥えた金ぴかに光輝くスライムだった。
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