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僕には友達がいなかった。高校にあがって一人暮らしをしてからは、一人も友達がいなかった。
なにが原因なのかは分からない。小学生のとき男子とばかり遊んでいたせいで身についた「僕」が、高校生になっても未だに抜けないからなのかもしれない。中学まで田舎に住んでいたから、都会では考えられないような失態をいつの間にか犯していたのかもしれない。入学式の前日に手首を怪我してしまって、それを自傷行為と勘違いされてしまったからなのかもしれない。とにかく原因は分からない。僕には友達がいなかった。
友達のいない沈黙は、ただ僕を苦しめるだけだった。僕から空気を奪っていくだけだった。
眠れない日々が続いた。睡眠薬に頼る夜が続いた。
僕はとうとう、呼吸の仕方を忘れてしまっていた。そんな僕を気にする人なんて、一人もいなかった。
そして僕は自殺した。大量の錠剤にまみれて、息をする必要のない体になった。
幽霊になっても、誰も気にかけてはくれなかった。それどころか、ちゃんと登校しているのに、無断欠席扱いにされた。
浴槽に浸かる僕の死体を、僕はそっと撫でてみた。ぬめぬめしていて、気持ち悪い。
ぼさぼさ髪の男は、外から持ってきた鈍器で僕を殴って、吹雪の中へ逃げていってしまった。最後まで僕が生きた人間でないことに気付かずに。
僕はその男の人を知らない。たぶん二〇二号室に盗みに入ったら、偶然僕が死んでいたりしたんだろうな。そうしたら誰かが二〇二号室にやってきて、咄嗟に自分の家に仕立て上げたんだろうな。迷惑かけちゃったな。
吹雪はやんだのだろうか。もしかしたら雪に押されて、階段から転げ落ちてしまってはいないだろうか。そう思ってしまって、申し訳なさがどうしてもなくならない。
幽霊になっても案外、触れたりできるものなんだよ。そうもう一人の僕に囁きかける。
まるで双子のようだ。僕のお姉ちゃんは、冷たい水に浸かって目を閉じている。それはまるで、糸の切れたマリオネット。もう動けないマリオネット。
浴槽は冷たいだろうから、外に出してタオルで拭いてあげたいけど、とても重たくて出せそうにない。僕ってこんなに重かったんだ。そう思ってしまう。
六畳間に行って、くずかごに零れた錠剤を入れる。一錠残らずくずかごに入れてから、それを持って僕はお風呂場へ戻った。
動けるってことは、まだ糸が切れてないってことなんでしょ。そう思ってしまう。
幽霊になってもまた自殺しようとするなんて、おかしな話。おかしな子。
僕に友達がいないのは、原因とかそういうことじゃなくて、僕がこんなおかしな子だからなだけなのかもしれない。
どれくらい飲んだら死ねるんだっけ。僕は今朝、何錠飲んで死んだのだっけ。
覚えてないから、全部飲む。
たちまちまわりはねずみ色。どんより動かぬねずみ色。
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死んだ体が重たく感じるのは、体を支えていた糸が、死ぬときに切れてしまったから。
動かない体よりも動く体のほうが軽く感じるのは、動く体には無数の糸が繋がっているから。
それはまるでマリオネットのよう。
糸が切れるまで人は、誰かに操られているんだ。
死ぬということは、糸から開放されることなんだ。
僕は、僕たちは――そう思ってしまったんだ。




