表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
改訂 【 塀の上、綱渡りのハッカーズ 】  作者: 風風風


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
91/93

改訂【塀の上、綱渡りのハッカーズ】 本編 36  証券スキーム

 久保は、太田黒が去った後の空席に深く腰を下ろした。眼前に広がる太田黒スキームは、この令和という時代を支配する「力」そのものだった。

 太田黒が残したノートには、システムの精緻な設計図と、それを維持するための冷酷な論理が記されていた。久保は、師が葛藤の果に残したスキームを背負うことを決意した。

 久保の命題は、システムの回転効率を極限まで高めつつ、その膨大な利益の中から「救済」という名の社会的なコストを捻出することにあった。

 久保は、256人のトレーダーたちを招集した。彼らは太田黒の下で、ただ言われた通りの数値を入力する「人形」と化していた。久保は、かつて自分が教わった「法の武器化」を逆に利用した。彼は、自らが作り上げた膨大な取引データを、法的に適格な「社会的救済基金」へと直結させた。合法的に資金を還流させる回路を作ったのだ。

「師匠、あなたはスキームを完璧にすることで救済を成し遂げた。だが、私はシステムそのものを呼吸させることで、犠牲を減らす」

 久保は、深夜の執務室で独りごちた。

 久保は、256人のトレーダーに一斉に命令を下した。

 久保は、深い溜息をついた。額には脂汗が滲んでいる。執務室の窓の外では、東京の夜景が、何も知らないかのように美しく輝いている。

 彼が救済し続けた人々が、明日もパンを食べ、暖かな場所で眠れるなら、この塔が地獄と呼ばれようとも構わない。久保はそう決意した。

 久保は再び、次のラウンドの準備を始めた。

 令和の夜空を背景に、塔は静かに、しかし力強く鼓動している。久保の挑戦は、まだ始まったばかりだ。そして、引き出しの中で眠る封筒は、彼がさらなる飛躍を遂げたとき、あるいは、さらなる深淵に堕ちたとき、その封印を解かれるのを待っている。

 久保は椅子に深くもたれかかり、遠くの星を見つめた。彼は確信していた。救済とは、どこか遠い場所にある理想ではない。この冷酷な数字の羅列の中にこそ、唯一存在する希望なのだと。それがたとえ、自分を滅ぼす呪いであることを知っていたとしても。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
次の話が楽しみです
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ