35.帰ってきた恭子
世界各地で地震が多発していた。
恭子が自宅でニュースを見ている。
「本日未明から、日本、北米、ヨーロッパなど世界各地で地震が相次いでいます。現時点で、それぞれの地震に関連性は確認されていません」
と、ニュースキャスターが言う。
(確かに最近、地震が多いわね)
「また、妙なことに震源の深さが測定できず——」
(測定ができない? どういうこと?)
その時、恭子は地震のような揺れを感じた。
「地震?」
小刻みな揺れ。
やがて揺れは大きくなり、空間そのものを歪める。
建物の輪郭が二重になり、周囲の景色が引き伸ばされる。
「なに……これ?」
暗転。
目を覚ました恭子の前には、見覚えがあるようで全く違う都市。
「……どこ?」
恭子は辺りを見渡すが、皆目見当がつかない。
遠くで爆発音が聞こえる。
恭子は音のする方へ目を向け、視覚情報を拡大する。
航空機が地面に向かって爆弾を投下していた。
恭子は騒ぎの元へ駆けつけた。
流れ弾に襲われ、頬の皮膚がえぐれた。
内側の機械が露出する。
「……?」
恭子の体は鋼鉄でできているが、被弾により怪我を負うということは、威力の高い攻撃のようだ。
陸軍同士が目の前でライフルを撃ち合っている。
「おい、こっちへ来い」
聞き覚えのある声の主が恭子に手招きをしている。
恭子は声の主の方へ歩く。
声の主は等身大のデビルマスターだった。
「デビルマスターじゃん。何してんの?」
「俺を知っているのか?」
「え? 前に会ったでしょ」
「いや、俺は君に会うのは今日が初めてだが」
「ていうか、ここはどこよ?」
「ヴァルシアという星らしい。聞いた話では、この星は他国同士で戦争をしているみたいでな。俺はその戦争を止めたいと思っている。協力してくれないか?」
(うーん……どこかで聞いたことあるんだよなあ……)
「ガイアって知ってる?」
「ガイア? ああ、土器で有名なあの星か」
「え……!?」
恭子は驚愕した。
土器といえば、5000年前の日本で盛んだったものだ。
(まさか……私は5000年前のヴァルシアにいるってこと? ちょっと待って)
恭子は懐から転移装置を取り出そうとするが。
「あ……」
自宅のテーブルの上だった。
「君、名はなんと言う?」
「恭子でいいわ」
「では、恭子。俺は今、この星の戦争を止めるべく、戦闘兵器を作ったんだが、搭乗者を見つけていなくてな。それで、君にその戦闘兵器の搭乗者になってもらいたい」
「それってもしかして、アストライアって名前にしようとしてる?」
「どうしてわかった?」
「いや、なんとなくそう思った」
そう言い終えた恭子は思った。
(なるほど。私は選ばれるべくして選ばれたのか)
「ついてきてくれ」
恭子はデビルマスターの案内で彼の研究施設へ移動した。
施設内の格納庫にアストライアともう一機の超機械生命体が鎮座している。
「あれは?」
「そっちはポリシアに献上するものだ。アストライアのついでに作った」
デビルマスターは転移装置を取り出した。
「恭子、これでアストライアと意識を同期させることができる。同期後は君以外にはアストライアを動かすことができなくなる」
「けど、こんな巨大な兵器で戦争を止めなくても」
「いや、実は戦争の中で北側が巨大なロボットを使っていてな。これは南側の対抗策なのだよ」
「対抗策ね……」
恭子が転移装置のボタンを押すと、その体はアストライアに格納され、精神同期が始まった。
格納庫から出ると、戦地で巨大ロボットが暴れているのが見えた。
アストライアは駆けた。
巨大ロボットに飛び蹴りを放った。
崩れる巨大ロボット。
巨大ロボットが起き上がり。
「何者だ!?」
と、訊ねる。
その声は巨大ロボットのコックピットからの声だった。
「私は戦争を止めるものよ!」
アストライアは光線を出す構えを取る。
必殺のヴァルシアブラストが巨大ロボットを襲う。
巨大ロボットは木っ端微塵に吹っ飛び、搭乗者が爆風で吹っ飛んでいった。
「……あれ?」
アストライアはいつものように恭子に戻ろうとしたが。
そこへデビルマスターがやってくる。
「ねえ、どうやって戻るの?」
「すまない。あの転移装置は一方通行でな。その体からは出すことができないんだ」
「え……、じゃあ私このまま?」
「そういうことになるな」
「どうしてくれんのよ!?」
「すまんのう」
「すまんのうじゃないよ!」
と、昔を思い出していたアストライアは、自身の体を小さくして恭子の家へと向かう。
テーブルの上に転移装置が置いてある。
「長かった……」
と、アストライアは転移装置を手に取った。
ボタンを押すと、恭子の姿に戻る。




