29.闇夜のカラス
閑散とした夜の住宅街。
仕事帰りの女性が歩いている。
「アー!」
カラスのような鳴き声。
「アー! アー!」
恐怖を覚えた女性は逃げ出そうと小走りになる。
「アー!」
カラスのようにも見える人型の何者かが女性に襲いかかった。
「きゃああああ!」
女性は悲鳴を上げるもむなしく、誰にも気づかれることなくカラス型の怪人に全身を啄ばまれて命を落とした。
その明朝、ニュースで遺体が発見されたと発表があった。
被害者は幸田 真智子。
小さな会社で事務を担当している二十代後半の女性だ。
その話をACR基地で隊長の鈴間がしている。
「姿は見なかったが、何人かのものが声を聞いたことがあるという」
「声?」
「そうだ。カラスのような鳴き声だったと」
「ですが、カラスが人を殺すでしょうか?」
「その通りだ。……とすれば、クロウズ星人に間違いない」
「クロウズ星人?」
「カラスのような姿をした怪人だ」
隊員たちはクロウズ星人の姿を想像する。
「それで、付近のパトロールを高木隊員と烏丸隊員の両名で行ってもらいたい」
「なんで私なんですか?」
と、女性隊員の烏丸 美代子が訊ねる。
なるほど、おおかた苗字が烏丸だからであろう。
選抜された二名はその夜、街のパトロールに向かった。
「アー!」
カラスの鳴き声。
「今のどっち?」
二人は辺りを見渡す。
「あれじゃないですかね」
恭子が電柱の上に止まるカラスのようなものを指差した。
烏丸が電柱の上を見上げる。
それは二本足で直立したカラスのような人型モンスターだった。
「なんだ、カラ……」
烏丸の顔から血の気が引く。
「ぎゃああああ!」
驚いて悲鳴を上げる烏丸。
「アー!」
クロウズ星人が烏丸に飛びかかった。
「きゃあ!」
咄嗟に攻撃をかわす烏丸。
クロウズ星人が翼を羽ばたいて烏丸を攻撃しようとするが、恭子がそれを捕まえて張り倒した。
「アー!」
クロウズ星人はむくりと起き上がり、空へと舞い上がる。
恭子は懐から拳銃を取り出し、クロウズ星人の足を狙うが。
(暗くて狙えない)
クロウズ星人が恭子に接近する。
「恭子さん!」
烏丸の叫び。
恭子は咄嗟にかわし、クロウズ星人に肉弾戦を仕掛ける。
「アー!」
恭子とクロウズ星人の殴り合いの末、星人は夜空に舞い上がって逃げていった。
東京の上空にヘリコプターのローター音が鳴り響く。
地上では巨大化したクロウズ星人が街を破壊していた。
通報を受けたACRが戦闘機で現地へ飛ぶ。
「アー!」
鳴き声を上げながら翼を羽ばたいて巻き起こる風で戦闘機のバランスを奪う。
「うわああああ!」
パイロットは操縦不能に陥り、緊急脱出を行う。
パラシュートでふわふわと降下していくパイロット。
恭子は地上で避難誘導に当たっている。
「一機やられたか」
恭子は拳銃をクロウズ星人に放った。
クロウズ星人の体から火花が散る。
「アー!」
クロウズ星人が翼を羽ばたいて強風を起こした。
「うわあ!」
強風でバランスを崩して倒れる恭子。
「いった!……もう!」
恭子は立ち上がろうとするが、風が強すぎてまともに立ち上がることもできなかった。
懐に手を差し込んでスティックを取り出す。
「もう怒った!」
恭子はスティックのスイッチを押す。
次の瞬間、恭子はアストライアの姿に変わり巨大化していた。
「アー?」
クロウズ星人は首を傾げる。
アストライアはクロウズ星人の懐に潜り乱打した。
「アー! アー!」
困惑した表情のクロウズ星人。
どうやら、やめてくれ、とでも言いたそうだ。
「は!」
アストライアはクロウズ星人の足を払って転ばせ、馬乗りになってその顔面を殴打する。
「アー! アー!」
クロウズ星人は半泣きになりながら何かを訴えている。
アストライアはクロウズ星人から降りるとその体を持ち上げて遠くへ投げ飛ばした。
そして、トドメのヴァルシアブラストをクロウズ星人にお見舞いした。
「ああああ!」
クロウズ星人は悲鳴を上げながら大爆発を起こして跡形もなく消え去った。
アストライアは空を見上げると地面を蹴り飛翔して空の彼方へ消えていった。
その様子を離れたところから観察している何者か。
「なるほど。やはり彼奴がアストライアだったか」
得体の知れないその人物は踵を返して歩き出した。




