01. 悪役令嬢(中身は四十五歳、独身)に会いにいこう!
『朝憲紊乱』
意:国が乱れることや、組織の在り方が変わること。
────魔法、スキル、チート、ハーレム、魔王討伐、スローライフ、経営、ダンジョン攻略etc ……
2046年……極東の国では、望めばどんな世界でも手に入る夢のようなアプリが存在していた。
このアプリの入手方法は誰も知らない。なぜなら、生きることに疲れてしまった人、絶望してしまった人のパソコンやスマホに、いつの間にかインストールされているから。
そして、使用してしまうと、その時の記憶とアプリは消えてしまう。
噂では何者かが、国の人口を減らして国力を削ぐためにこのアプリを広めているのだとか……
それを阻止するための政府公認の非公表組織、
それが……
内閣府裏デジタル庁異世界転生救済課!
※◆……一人称視点
◇……三人称視点
◆千代草◆
異世界の青空は、現実と同じで白い雲たちがふわふわと浮かんでいる。ポカポカした陽射しが心地よい。
のんびりとしたこの感じ……
私は今まで色んな異世界を見てきた。だから、なんとなく分かる。
この異世界を創造した転生者はきっと、心の優しい人なのだろうと。
「今回は平和な世界だなぁ……」
思わず口にしていた。隣にいるバディの芙蓉が、栗毛色の毛先を指でくるくると絡めながらうなずく。
「うんうん、分かるよ千代姉ぇ〜、と言いたいところだけど……前回も最初はすご〜く平和だったのに、途中でウチら、古代遺跡に迷い込んだ挙げ句、なぜか恐竜に追い回されてトロッコに乗って逃げたよね〜」
そう言われて、先週の、まるでパニック映画のようだった任務を思い出した。
「そんでさ、その一つ前の任務は賑やかな室町時代かと思いきや、炎に包まれた本能寺の中で、織田信長になりすました転生者を助けたよね」
歴史改変を夢見た転生者を思い出し、私はぷっと吹き出してしまう。
「あったあった。焼け死にそうなのに、扇子持って一人で踊ってたオジサン。人間五十年〜♪ とか歌いはじめてチョーウケたよね。早く逃げなきゃ焼け死ぬっつーの!」
芙蓉は口に手を当て、ケタケタと笑う。
「あはは、あの人かなり自分に酔ってマジヤバだったよね」
私と芙蓉は、任務の最中に思い出話に花を咲かせてしまった。
「さて今回は、四十五歳なのに、若い悪役令嬢に転生した欲張りさんを連れて帰るよ。がんばろっか」
中世の南欧風を思わせる港町には、たくさんの帆船が停泊していて市場も賑やかだ。その景色を全部見渡せる丘の上に、大きくて立派なお屋敷がそびえ立っている。
屋敷のガラス窓の向こうには、数人のメイドたちが慌ただしく行き交う姿が見えた。
私と芙蓉は、その様子を庭園の茂みの中からこっそり観察している。
「ねぇ、千代姉ぇ。やっぱり今回の転生者も『ネペンテス』ってアプリを使ってるの?」
「当然その線は強いわね。……自分好みの見た目、自分と関わる人物。それに世界観を入力するだけで、簡単にその世界へ転生できちゃうアプリ。一体誰がこんな物を作ったのやら」
「アプリをばら撒いてる奴って、ぜんぜん見つかんないよねー。諜報部はちゃんと仕事してんのかなぁ?」
芙蓉は大きな瞳をキョロキョロさせ、救出対象者の姿を探っている。
「人手が足りてないからねぇ……ネペンテスの情報も少ない。私たちは地道に異世界転生した人を連れ戻すだけだよ」
「あ……ねぇねぇ千代姉ぇ」
隣の芙蓉が屋敷を指差した。
「あの人が救出対象者じゃないかな? 見た目が若いけど、他の誰よりも派手で若いよ」
芙蓉が示した女性に目をやる。若くて美しい女性が、深い緑色の煌びやかなドレスに身を包み、数人のメイドを引き連れて優雅に廊下を歩いていた。
彼女は外見こそ16歳でも、中身は45歳の女性のはず。
すっごい髪型してる……。編み込んだ長い金髪を頭にぐるりと巻いて結ってある。あ、手に持った扇子で口元を隠した……イメージしてた令嬢っぽい。
目的の女性は一人で部屋に入った。お付きのメイドたちはお腹の前で手を組み、頭を下げてドアを閉じると、部屋の前から姿を消した。
一人になった今がチャンスだ。屋敷の人に見つからないように行動しよう。私たちの服装はこの世界ではかなり浮いて見える。
私は上下黒のスーツの上に浅葱色のフード付きカーディガン。芙蓉は制服姿。
見つかっちゃうと面倒なことになる。
「さ、行こっか芙蓉ちゃん。悪役令嬢救出作戦、実行」
「オッケー、千代姉ぇ」
辺りから人の気配が無くなるのを確認すると、私たちは軽くハイタッチを交わした。茂みから抜け出すと、そろりそろりと女性の部屋へと足を運ぶ。
──このあと、私たちは彼女の口から、思いもよらない言葉を聞かされるのです。
こんにちは、ねずただひまです。
この作品と出会っていただき、誠にありがとうございます♪
『異世界転生救済課─「お前をこの異世界から排除する……」』の続編を投稿致しました。
前作を読まれていなくても楽しんでいただけると思います。
でもできるなら前作も読んでほしー!(*≧∀≦*)
読者さんの心に残るような作品にしたいので、これからも頑張って参ります。
☆を★にしてくれたらめっちゃ嬉しいです!
ブクマでもリアクションでも励みになります!(・∀・)
*次回、『キャラクターの運命』




