第8章 エピローグ2 ミリスのワガママ
お手洗いから帰ってきたミリス様は……なんというか、消耗していた。
う~ん、誰かキャラの濃い子にエンカウントしちゃったかな? 今うちにいる子だとマリーとか、ウィルドとか、愛理とか……。やだ私のお嫁さんたち、キャラ濃すぎ?
「ミリス様、どうかしましたか?」
「……いえ、先ほど廊下でウィルド様にお会いしまして。その、ポーションに関する事実を教えていただいたもので」
「あ~…………」
あれは魔法魔法している世界観をぶっ壊されるよね。まったくとんでもないものを教えてくれたものだよ璃々愛は(責任転嫁)
「まぁ深く気にすることも無いと思いますよ? 普通に使うだけなら便利な回復薬ってだけですから」
悪用すると天罰の雷が落ちるかもしれないけどね! まったく璃々愛は(以下略)
「回復薬……そうですよね。あまりにも衝撃的な展開過ぎて失念していましたが、セバスさんが助かったのは事実なんですし……」
なにやら悩むミリス様。鍛え上げられた対女性スキルが嫌な予感を発しているのは気のせいかな?
こういうときは逃げるに限る。リリア学んだ。
さーてそろそろお茶会もお開きにするかーと椅子から立ち上がると、ほぼ同時にミリス様も立ち上がり、私の両手を掴んできた。
「リリア様。遅ればせながら、お礼を言わせてください。リリア様の用意してくださったポーションのおかげで、家族同然であるセバスさんを救うことができました。本当に、ありがとうございました」
「お、おぉぅ……」
やらかしまくった私としては真正面から感謝されると罪悪感で心が押しつぶされそうに……。ど、どうしてこうなった?
「い、いえいえお気になさらず。困ったときはお互い様ですから」
嫌な予感が収まらない私は手を引こうとしたけれど――離れない。ミリス様にガッシリと掴まれた手が、離れない。もちろん鍛えてる私が本気を出せば振り払えるけど、そんなわけにもいかないし。
「あ、あの、ミリス様?」
「……ハティに叱られました。私は子供なんだからワガママを言っていいんだって。神話時代に生まれたハティからしてみれば転生者の私も子供みたいでして。――私も、子供らしいワガママを言ってみたいと思います」
「わ、ワガママとは?」
まさか『結婚してください!』なぁんて展開じゃないですよね? マリーならあり得るけど、ミリス様は違いますよね? 常識人ですよね?
「リリア様。――私の、友達になっていただけませんか? そして、許されるなら、これからはお互いに名前を呼び捨てにしませんか? もちろん公式な場ではそういうわけにもいきませんけれど……」
セーフ! セーフです! なんだか分からないけどセーフでした! いやぁちょっと自意識過剰だったかなぁアハハハハ、みんながみんな言い寄ってくるわけないよねぇ恥ずかしいなぁもう!
「もちろんですよ。これから友達としてよろしくお願いしますね、ミリス様――いえ、ミリス」
私の返事を受けてミリスは嬉しそうに頬を緩めた。さすがは悪役令嬢でヒロインにもなれる御方、笑顔がすっごい破壊力だ。思わず胸がドーキドキバクバクしてしまうほどに。
そう、これはミリスの美少女っぷりに胸が高まっているだけであり。未だに消え去らない嫌な予感で胸がドキドキしているわけではない。ないのだ。
ない、はずなのに――
「――はい。これから末永くよろしくお願いしますね。リリア」
ミリス?
末永くって言葉の使いどきを間違ってはいないかな? そういうのって普通は結婚の挨拶の時とかに使うものじゃないのかな? あ、あははー言葉遣いを間違えるなんてしょうがないなぁミリスはー…………言葉で斬り合う貴族令嬢が言葉遣いを間違えるわけないじゃん! どうしてこうなった!?
よく考えたらこのエピソードは9章1話じゃなくて8章エピローグの方がいいので、エピローグとして投稿します。
次回から9章剣劇少女編です。
次回、10月13日更新予定です。




